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第十話 盗品

『登場人物』


「朝霧 悠」

 この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。

「ウルグ・ハース」

 悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。

「ココロ・シンリー」

 皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。

「END」

 世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。

「1人だったのが2人に戻っただけじゃないか!」

「ん、そういえばココはどこへ行ったんだ。」

「確か……」


 先程ココの姿が消えた風呂場に向かって歩き出した瞬間、地面が粘土のようにぐにゃりと曲がった。否、ホテル自体が変形しているのだ。途端にチャンは悶え苦しむように倒れて、地面に這いつくばっていた。


「ぐ……」

「気をつけろ悠!!!ホテルの形を維持できなくなっている!!」

「そりゃ“意地”でどうにかなる。維持だけに!!!」


 そう言い、悠は叢雲を鞘から抜いた。

 宝刀『叢雲』。常人が持てば制御が出来ず、魔力を吸われ続け、最終的には死に至ると言われている。

 叢雲が認めた相手のみの言うことを聞き、その相手なら叢雲を思うままに操ることが出来る。叢雲の要求する魔力を与える事で、普通の刀では考えもつかないようなことでさえ出来てしまう。

 だが、魔力が枯渇状態の今の悠ではせいぜい『切れ味の良い刀』である。そのため、落ちてくる瓦礫などを防ぎつつ、ビルから落下していった。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

「悠、なるべく魔力を使わないように『拡張』を地面に使え!」


 「地面……!?」と呟きつつも、悠は発動した。『波動ウェーブ』を使用してから魔力も体力もある程度回復していたので、ギリギリ可能だった。

 『拡張』を発動したところ、地面はグングン膨張していき、落下した時にはトランポリンのように跳ねて助かった。


「危ない危ない……」


 チャンも同時に膨張した地面に落下してきてきても、まだ倒れている状態だった。


「ココは……!?」

「あなたの求めてる女はこいつ?」


 声のする方を探して周りを見ても、どこにも誰もいない。そんな時、ウルグは「上だ!」と叫んでいた。そう、その女はココを抱えて空を飛んでいた。


「な……ルミーゼさん!?」


 そう、ルミーゼは背中から禍々しい翼が生え、前の雰囲気は無くなってしまっていた。何が起こっているのか、悠は寸前で理解できないような気分だった。

 だが、ウルグはいち早く理解したのか、先程の影響で膨らんでいる地面から跳ねて攻撃しに行った。


「ココを……返せ!!!」


 ウルグは自身の魔法『廃品回収』を発動した。

 『廃品回収』。黒く薄い物に包んだ物を全て極小サイズに縮め、いつでも出し入れすることが出来る。

 ウルグはポケットからゴミ程度の丸くなった黒い袋を出して、結ばれている部分を解いた。瞬間、中身は大爆発するように何かが溢れ出した。


「水っ……!?」


 ウルグが事前に貯めておいた水を放出したのだ。そして、ココを新しい袋で包み込むと、そのまま落下していった。


「悠!!」


 そう叫んでウルグはココの入った黒い袋を悠に投げた。袋に包まれて、解除されるまでの間は、中身は完全に守られるので、傷つく心配がない。

 キャッチした悠は袋から倒れているココをそっと取り出した。


「首を絞められて気絶ってところか……」


 意識のないココの身体を起こして座らせ、悠も魔力がないので遠くからウルグの様子を見ていた。


「二対一よ。誰だか知らないけど、あんたに勝ち目はないわ。……ところで死ぬ前にアンタに聞いておきたいことがあるの。あいつ、どうやってあんたに連絡なんかしたの?」


 そうルミーゼが聞くと、遠くから悠が話した。


「『拡張』をこの世界自体に使ったんだ。元々、世界っていうのは規則正しく球体型の世界が何個も並んでいるようなものだから、世界が大きくなれば、どこか数センチだけでも世界と世界が交わる点が出来る。この世界に来るためのエレベーターなんかはそれを利用したものだよ。」

「なるほど……それで腕を送ったのね……!!」

「爆破で誤魔化してる間にね。」


 そう言うと、クックッと不敵な笑みをルミーゼは浮かべ出した。


「早く立つのよ、チャン!!!兄様を生き返らせたいんじゃないの!?」

「待てよ。お前の質問に答えてやったんだ。こちらの質問にも一つ答えるのが道理だろう。」

「……良いわよ。」


 ルミーゼは少し不服そうにして、ウルグを見下しながら答えた。するとほとんど食い気味にウルグは質問をした。


「そこのチャン・チーという男、貴様操っているのか?どういうことだ?」

「ふっ……そんなこと。良いわよ、教えてやるわ。」


 そもそも、チャンは兄とは全く仲など良くなく、寧ろ口も聞かないほど仲が悪かった。そんな中、兄の死亡。チャンは喜んだと言っても過言ではなかった。

 だがルミーゼは黙っていなかった。ルミーゼはチャンの師匠でありながら、兄の世話になっていた。どうにかして、兄を助けたい。だが、()()()()()()()()()()()。そんな身勝手な要望の中、発見したのが『黒魔術の本』だった。

 『人魂操作(ソウルオペレーション)』。その時のルミーゼにはあまりに魅力的に見える魔法だった。だからルミーゼは寿命を捧げ、チャンを操ったのだ。


「くっくっく……あんた達はまんまと私の手のひらの上で踊ってた訳よ!!ざまぁないわね!!」

「ほう、なるほど。つまり死者蘇生が上書きなら……」

「?」

「とんだ()()だな。」


 何が地雷だったのかは分からないが、怒りで顔を真っ赤にしたルミーゼは、翼をもう一度広げ直し、ウルグに突っ込んで行った。その後ろをフラフラのチャンがほとんど着陸しながら、低空飛行で飛んできた。


「闘牛ほど操りやすい物はない。」


 ウルグはそういい、突っ込んでくるルミーゼを、大きい黒い布でルミーゼを捕らえた。


「こんなの逃げ出せば……」


 そう言っていた瞬間、ルミーゼの背後からはフラフラのチャンがルミーゼを押すように突っ込んできた。


「ぐぁあぁっ……!!!」

「捕獲完了。」


 そう言うと、ウルグはサササッと布に包んで、ポケットにしまい込んだ。


「ふう。ようやく終わりだ。」


ワンク 『3』

理の異常 『重力(ちょい強い)』

ビースト 【ルミーゼ(チャン・チー)】

 市民の保護完了。ビースト討伐完了。


第十話 終

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