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第九話 『信じる力』

『登場人物』


「朝霧 悠」

 この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。

「ウルグ・ハース」

 悠の相棒。常に冷静で、表情筋を使ったことないのではないか、という噂がたったことがある。

「ココロ・シンリー」

 皆にはココと呼ばれている。異世界警察では珍しい女性の警察官。基本的にピストルを使用して戦う。

「END」

 世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。

 ホテルは光に包まれ、悠の『波動ウェーブ』の魔法によってチャンは消滅した。

 

「はぁ……疲れましたね……」

「……待て!!警戒を怠るな!!」


 悠は何かに気がついたのか、突然そう叫んだ。ココは驚きつつも、立ち上がって拳銃を取り出した。上司の命令は基本聞けと、『異世界警察教習所』で何度も習っていたのだ。


「このホテルは恐らくチャンの能力で作り上げられた幻。なのにホテルが消えていないってことは……」


 瞬間、ココは「危ない!!」と反発的に叫んだ。話している最中の悠の背後からチャンが迫ってきていたのだ。だが、ココは叫ぶと同時にピストルを撃ったことで、悠に攻撃は当たらず済んだ。


「ありがとう。腕の止血は出来たんだがまだ痛むな……ところでルミーゼさんはどこへ?」

「あれ!?そういえば……」


 そう思いココはルミーゼを探しに、トイレを探し、タンスを探し、最後には風呂場を探しに行った。風呂場は悠からはちょうど見えない角度だった。それが誤算だったのかもしれない。

 ココは風呂場に探しに行ったきり、戻ってこなかった。助けに行きたいが、悠にはもう動く体力が無かった。そんな時、天井からチャンがニョキッと生えてきた。


「ハハハ……!よく僕が生きていることに気がついたね!褒めてあげよう!」

「よく上から物が言えるな。寝言か?もう朝だぞ。」


 そう言うとチャンは額に筋を浮きだたせてブチ切れていた。そして、文字通り、目と鼻の先まで悠に近づいた。


「まだ暇だから喋ってやってるだけで、お前なんていつでも殺せるんだぞ……!!」

「じゃあやってみなよ。ガキには度胸がないかな?」


 チャンは怒りを堪えるあまり、最早白目になっていた。


「お前、まだ俺を殺せない理由があるんだろ。でもお前がそこまで考えられるタイプにも思えないしな……」


 すると、悠はニヤリと笑みを浮かべ、チャンの目を見て言った。


背後バックに誰か居るな?」


 そう言うと、一瞬チャンの動きはフリーズした後、痩せ我慢をするようにチャンは「ハッハッハッ」と笑い始めた。


「勝手に妄想しておきな!!お前は死ぬだけだからさ!」

「本当かな?」

「……?」


 チャンはいかにも不思議そうな顔をして悠を見つめた。何が言いたいのだ?


「このホテル、爆破させたり、ココが銃弾撃ったりしても傷一つ付かないみたいだし、相当魔力を使ってるんだろうね。でもさ、内部をこれだけ固めれば外部からの攻撃には耐えられないんじゃない?」

「……!?そんなことは……」


 チャンは実際、そんな事を試したことが無かった。何人もの人間を殺してきたものの、外部から助けにくるものなどいなかった。

 実際のところ、どうなのかと言えば、実はこの悠の発言は全て“ハッタリ”である。証拠の欠片もない説。だが、こんな事を言ったのには理由があった。


 魔法とは、『信じる力』が非常に大きく関係している。例えば、『炎』の魔法を操る術者がいるとして、その術者が何らかの神を信仰するかの如く、「その炎は消えない炎である」と信じていれば、あらゆる科学的な理論を通さない、「消えない炎」が出来上がるのだ。

 つまり、ここでの悠のハッタリにチャンが騙されれば、このホテルは外部からの攻撃に脆くなってしまうのだ。(ちなみに、能力に制限があったりする場合には、術者の自信が足りないということになる。)


「そ……そんなことない!今までも外部の攻撃から耐えてきた!」

「本当に?」


 内心悠はめちゃくちゃ焦っていた。「え、ハッタリが通用しないの?やばい!!」と焦っていたので、「本当に?」というセリフは心の底からの言葉なのである。

 だが、その心の底からの言葉を逆にチャンは深読みしてしまい、本当は外部からの攻撃を受けたことがないのがバレていると思っていたのだ!!


 つまり要約すると、両方めちゃくちゃ焦っているのである!!!


「ま……魔法なんだから、外部と内部、どっちも超頑丈な建物なんて作れるわけが無いだろ!!!」

「っ……く!!!」


 マズイ、チャンはそう自覚していた。完全に相手のペースだった。とはいえ悠もめちゃくちゃ焦っている訳だが。


「それに……俺たちがホテルに来た時にはこのホテルは傷ついている場所もあった!!これが証拠だ!!」


 瞬間、ホテルの天井は「ピシピシ……」と音を立ててひび割れた。だが、割れたのはホテルの天井ではない。このホテルという幻にヒビが入っていたのだ。

 『パァーッン!!!』というガラスが割れるような音と共に、天井からウルグが降りてきた。


「魔力を感じると思ったら……やはりここにいたのか。」

「貴様……誰だ!!」


 チャンは戸惑いつつも、怒りで興奮状態になっていた。


「ウルグ寝てたと思ったんだけど、こんなに早く来てくれたんだ。」

「あれは狸寝入りだ。そもそもあの程度の酒で潰れる訳が無いだろう。敵を騙すには味方から。名探偵コ〇ンとハ〇ターハ〇ターで言ってた。」

「ぅおぉい!!ベテラン作品の名前ばっか出すな!!」


 そう、悠は何らかの方法でウルグに対し「ヘルプ」の伝言を送り、外部からの攻撃に弱くし、助けてもらったのだ。


「てか、屋上から突き破って来たってこと?」

「あぁ。その方が早いと思ってな。」


 そんな登っていたら不審がられるだろう。ここは10階である。


「なんか格好つかんけど……バッチリ倒すぞ!!」

「あぁ。」


第九話 終

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