深まる闇
一度は行われた“契り”の儀式。しかしうまくいかず、集会はあっけなく解散へ。
あの人の身に起こる謎の症状は、異様な熱と焦点の定まらない瞳という不穏さを物語る。
周囲のメンバーが従順に散っていくなか、主人公だけがその苦しみを間近で目撃し、支えようと必死になる。
だが当のあの人は「もっと強い契りを」と呟き、足りない何かを求めている様子。
そんな中で浮かび上がる冬の夜に揺れる桜——それが導く真実とは。
儀式と血に染まった歪な絆の果てに、さらなる“何か”が待ち受けているのかもしれない。
契りの儀式がうまくいかなかったのか、その夜のうちに集会は解散した。メンバーたちは動揺しているようにも見えたが、あの人が「続きはまた夜に」と言うと従順に従って去っていく。まるで洗脳されているかのようだ。
あの人は私の前でよろめき、倒れそうになる。慌てて支えようとするが、体温が異様に高く、触れるたびに自分まで火照ってしまう感覚に陥る。視線を合わせようにも、その瞳は焦点が定まっていない。
「無理しないで……保健室に行こう?」
そう提案しても、「ここにいちゃダメだ……」という答えが返ってくるばかり。どうやらこの場所以外のどこかへ行かなければならないらしい。だが、具体的にどこなのか、あの人自身もわかっていない様子だ。
見かねた私は、ひとまずあの人を外の空気に触れさせようと旧校舎の外へ連れ出した。夜風が吹き、少しは落ち着くかと思ったが、あの人の震えは止まらない。
「……足りないんだ。もっと、強い契りを……」
そんな意味深な言葉を呟いたまま、あの人は膝をつき、ぼんやりと校庭を見つめる。その視線の先には例の桜の木があった。冬のはずなのに白い花びらを揺らしている、異形の桜。
私の胸に妙な引力が働く。あの桜の木が、すべての鍵を握っている気がした。あるいは、さらなる“儀式”が桜の木の下で行われるのかもしれない。まだ確たる根拠はないが、そう感じずにはいられなかった。
儀式の失敗が暗示するのは、まだ道半ばであるという事実。
校庭にそびえる季節外れの桜を見つめるあの人の姿からは、単なる人間の欲望とは違う、底知れぬ力の引力を感じます。
一度は血を交わし合った二人。それでもなお足りないと吐露する言葉が、主人公をさらに深みへと誘う。
この先、儀式の本当の完成とは何を意味するのか。桜の下で行われるかもしれない次なる契りが、
二人の運命をいっそう絡み合わせ、逃げ出せない迷路へと導いていくのかもしれません。