螺旋の契り
深夜の旧校舎、円卓の中央で行われる背徳の儀式。その周囲を囲む部員たちは、固唾をのんで二人の行方を見つめる。
お互いの血を捧げ合うという言葉が示すのは、単なる愛の誓いではなく、歪んだ呪縛のような契約。
主人公が躊躇しながらも「受け入れる」と告げるその瞬間から、後戻りのできない扉が開く。
果たして、円卓の螺旋模様が光を帯びるとき、彼らが手にするのは永遠の絆か、それとも破滅の始まりなのか。
高まる鼓動と痛みの中、儀式が深い闇へと主人公を誘い込んでいく。
あの人の合図で、周囲のメンバーが円卓の外へ下がり、私とあの人だけが中央に残る。ロウソクの灯火が弱まったのか、部屋はほとんど暗闇に近い状態だ。空気がぴりついた緊張に満ちる。
円卓には小さなナイフが置かれている。刃先は鈍いが、十分に人を傷つけられる代物だ。あの人はナイフを手に取り、私の手をそっと握った。
「もし本当に契りを結ぶなら、お互いの血を捧げあう。そうすれば、永遠に離れられなくなる。でも……無事に済む保証はないよ?」
くすりと微笑むあの人。その笑みはどこか狂気を孕んでいるようにも見える。私は唇を噛んだ。ここで引き返せば、普通の学園生活に戻れるかもしれない。でも、あの人を失うことになるなら……。
「いいよ、受け入れる」
そう呟くと、あの人は私の手のひらをそっと切りつけた。微かな痛みとともに、赤い液体が滲む。それを見たあの人は自分の指先にもナイフを当て、同じように血をにじませる。
「ここに混ぜ合わせて……」
円卓の螺旋模様の中央に、私たちの血がぽたりと落ちる。すると不思議なことに、螺旋が明るく浮かび上がったように見えた。周囲の空気が歪み、視界がちらつく。まるで夢を見ているかのような感覚に陥る。
「さあ、契りはこれで完成……なの?」
自問したその瞬間、あの人が胸を押さえ苦しげにうめき声をあげた。周囲の部員たちがざわつく。私があの人の肩に触れると、熱が異常に高い。まるで炎に焼かれているかのようだ。
「大丈夫!?」
声をかけるが、あの人は声にならない声で何かを呟いている。正確には聞き取れないが、「足りない……心臓……」といった単語が混じる。何を言っているのか、私には理解できない。が、嫌な予感が背筋を駆け抜けた。
いよいよ互いの血を混ぜ合わせ、“契り”の儀式が成就すると思われた瞬間、あの人の体に異変が起こる。
声にならないうめき、熱にうなされるような苦痛の表情、そして「心臓」という不穏な言葉。
これまで抱いていた恋や憧れが、一転して恐怖へと変わりつつあるのを感じ取る主人公。
しかし、その恐怖でさえ、あの人と離れるよりはましだという思いが、なおも胸をかき立てる。
この儀式にはいったい、どれほど大きな代償が求められるのか。夜の深みへと沈んでいく二人の運命は、もう止まることを許されない。