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桜の樹下の想い

期末試験を前に慌ただしさが増す学園。しかし主人公の胸中では、夜の儀式とあの人の熱に浮かされた姿が深く刻まれ続けている。

誰もいない夕暮れの校庭に佇む白い桜は、まるで不気味な象徴のように冬空に花びらを散らし、神社の名残という祠には破れた札が無数に貼り付けられている。

血のような液体をにじませる桜、そして「あの人」の呟く「足りない」「心臓」という言葉——それらは現実離れした狂気を感じさせながらも、不思議な確信を伴って主人公を導いていく。

夜の儀式が失敗に終わったかのように見えた今、それでも「契り」はまだ終わっていない。むしろ本当の答えが、ここで主人公を待ち受けているように思えるのだ。

 翌日。学校では期末試験が近く、周囲は勉強ムードに入っていた。私も表向きは試験に向けて準備しているが、頭の中はあの人と儀式のことでいっぱいだ。契りは完成していない。あの人はまだ熱に浮かされ、苦しんでいる。


 放課後、私は校庭の桜の木へ向かった。誰もいない夕暮れの校庭。その桜だけは白い花びらをちらつかせ、雪のように舞っている。まるで冬と春が混在しているかのような異様な光景だ。


 桜の根元には小さな祠があり、かつて神社だった名残だという話を聞いたことがある。そこには破れた札が何枚も貼り付けられていた。おそらく、封印や結界の類だろうか。私は手を伸ばして札を一枚はがす。すると、桜の幹からじわりと赤い液体がにじんでいるのが見えた。まるで血のようだ。


 息が詰まる。私の頭に、あの人の言葉がよぎる。「足りない……心臓……」。もし桜の木が血を求めているとしたら? そんな馬鹿げた思考が離れない。けれど背筋を凍らせる嫌な確信のようなものがある。


 そこへ、ふいに足音が近づいた。振り返ると、あの人が立っている。相変わらず顔色は悪く、動きもおぼつかない。しかし、その瞳には強い意思が宿っていた。


 「ここが最後の場所。……桜が、すべてを見届けるんだ」


 その言葉を合図にしたかのように、冷たい風が吹き荒れ、桜の花びらが舞い散る。私は思わず目を細めながら、あの人の横顔を見つめた。背徳の契りは、まだ終わっていない。むしろ、ここからが本番なのかもしれない。

冬と春が同居するかのように花を散らす桜の木。そこにはかつて祀られていた神社の痕跡と、封印の札の名残がありました。

あの人が最後の場所と称するこの木は、血の気配までも孕む異形の存在へと姿を変えつつあります。

「桜が、すべてを見届ける」というあの人の言葉は、愛と呪いが交錯する儀式の最終段階を予感させ、主人公を決定的な局面へと追い込むことでしょう。

夜へ向かうほどに増す不安と背徳感。それを押してでも、主人公はあの人と“契り”を完遂させる覚悟があるのか。

これから始まる夜の帳の下、雪のように舞い散る花びらが、二人の運命をさらに深く結びつけていくのかもしれません。

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