あれ、ここ異世界!!!?
夢をみていた。
子供の頃の夢だ。
夏の日差し、友達とかけっこ、
ドブ川も、未知の冒険の香りがした。
頬をなでるような、涼しい風を感じて目覚めると、どこか懐かしい匂いがした。
下水、団地の匂いだ。
昔は貧しかった。
「ずいぶんと俺もがんばったものだ。」
そうして目を開けば、立派な部屋が見えるはずだった、、、。
真っ暗闇、悪臭、ぬめりとした床、
思考が追い付かない。
「おお勇者様、やっとお目覚めになりましたか?」
背後から声がしたと思うと、ロウソクに灯りがともった。
「あんたは、何者だ?」と言うか、躊躇してる間に、男は歩き出した。
汗と垢で染めたような服をまとうこの男からは、すえた匂いが、むすような熱気と供にただよう。
「もう、少しですぞ勇者様。王はこの先でお待ちです。」
王?誰だそれは? そう思いながら、歩くと鉄格子の扉が見えた。
門番が「春の蝶」と言うと、
前を歩く男は「風に舞う」と答えた。合言葉なのだろうか?
通された場所にある、6本のロウソクがまぶしい、今まで暗かったせいだろうか。
3人が見えた。椅子に座った男とその両側にたつ男だ。
いや、男っぽく見える者達だ、全身を白い布で覆っている。
「勇者よ、汝には、魔王を倒してもらう。これは密命である。期待しておるぞ!」
こちらがその言葉に従う事が前提のような言い方だった。そもそも王って今の時代にいないだろ、そう思いながら、どう反論しようと悩んでいる内に、目隠しをされ、手足を縛られると、あの臭い男に担がれた感覚があった。
そうして運ばれた俺は、やっと目隠しを外され、自由の身になると、「信じていますよ。」と言われた後、夜の街に取り残された。
松明の炎で照らされた街並みは、中世のヨーロッパそのものだった。
やっと自分が置かれた状況がおかしい事に気が付いたのだった。