生きるために
「ああああああああああ!! 腕が!!」
陽真が膝から崩れて叫ぶ。
「ばかな……ナナ! 二人とも殺せ!!」
王様が叫ぶ。やはり腕輪で操っていたんだな。
「氷弾」
「よかった。元に戻って。ファイアバレット」
ナナが放つ氷弾を相殺しながら陽真の腕を拾い、陽真に近づく。ナナだけなら余裕がある。
「はあはあ。星火、何がどうなってる?」
痛みに耐えながら陽真が聞いてくる。
「とりあえず、先に腕を治すか。ヒール! ついでに俺の足も。ヒール」
陽真の腕を断面に押し付けながらヒールをかけて腕をくっつける。そして焼けただれた俺の足もヒールをかけて治す。
「くっついた! なんだこの魔法!?」
「それは後で話すとして、陽真はさっきまで操られてたんだ。解放するためには腕輪を外さなきゃいけなくて、余裕がなかったから腕を切り落として外したんだ」
「それで! もしかしてナナも操られてるのか?」
「多分。陽真と同じ腕輪がついてるし」
「わかった。あの腕輪を外せばいいんだな」
陽真がくっついた腕を動かして確認しながら立ち上がった。
「その通り。行くぞ! ファイアランス!」
「身体強化! 風弾!」
相殺していた氷弾をファイアランスで一気に破壊してナナまでの道を作る。そこをを陽真が走り、風弾をぶつけて動きを止める。
「おりゃ!」
陽真は足を払い、ナナを転ばせて馬乗りになる。
「凍結」
ナナは陽真を凍らせる。
「エンチャントファイア! 早く壊せ!!」
陽真に炎をまとわせて凍るのを防ぐ。
「焼き切れろ!! 炎風刃!!」
陽真の放った炎風刃で腕輪は焼き切れた。これでナナも元に戻るはず!
「……ん? きゃあああ!」
「ふべ!」
元に戻ったナナによって陽真が突き飛ばされる。気づいたら自分の上に陽真が乗っている状況だしな。仕方ない。
「大丈夫か?」
笑いを堪えながら二人に近づく。
「星火! 何がどうなってるの?」
「おい! 俺は無視か!」
「ナナも操られてたんだ。元に戻ってよかったよ」
「そうなんだ。助けてくれてありがとう!」
「おーい!」
陽真は完全に無視されている。
「くそ!! お前ら許さんぞ!」
王様が叫び、杖を掲げる。完全に存在を忘れていた。
「あの杖は……まずい! クリエイトウォール!」
俺は急いで巨大な壁を生成する。耐えられるか!?
「消え去れ!! ノヴァフレイム!!」
王様の杖から太陽のような巨大な炎の塊が放たれる。だめだ!! もたない!!
「氷壁!! はああああ!」
「風壁!! くっ!」
二人も食い止めてくれる。
「二人とも! 耐えろーー!!」
魔力をさらに込めて壁を強化する。
「はあはあ。耐えきった!!」
なんとかノヴァフレイムを防ぐことに成功する。ギリギリだった。
「なんだよあの杖は!」
陽真が叫ぶ。
「あれは国宝、炎杖グロリア。数百年前の勇者が作ったとされる伝説の武器。威力はさっき見た通り、一瞬で国を壊滅させることができるくらい強力だ」
「どうすればいいの? まだ死にたくないよ!」
「……一分、いや、三十秒時間を稼いでくれ。それで無理なら諦めるしかない」
俺は覚悟を決めて二人に頼む。この魔法は発動までに時間がかかる。間に合わなければ死ぬ。やるしかない!
「「わかった!」」
「頼んだ! クリエイトバレット!」
俺は一歩下がり、巨大な弾丸を作成する。そして魔法の構築を始める。
「作戦会議は終わったか? 全て無駄だ!! お前らはここで死ぬのだからな フレイムバースト!」
「氷塊! 氷槍!」
「身体強化! はああああ!」
ナナが相殺し、陽真が王様に近づいて斬りかかる。
「くっ! 邪魔だ!! ヘルフレイム!」
「風砲! くは!」
陽真はとっさに自分の魔法で後ろに吹き飛ぶことで、魔法をかわすことに成功するが、壁に打ち付けられる。
「ダイアモンド槍生成! 真空砲!」
陽真に気を取られた一瞬の隙をついてナナが槍を放つ。
「マグマウォール! 何!?」
ダイアモンドの槍はマグマウォールを通り抜け王様の足を切り飛ばす。
「ぎゃああああ!!」
王様はバランスを崩して転倒する。
「二人とも離れろ! 死ね!! レールガン!!」
ちょうど魔法の構築が終わった俺は、この機会を逃すまいと電気で作り出した磁場により限界まで加速させた弾丸を放つ。
「フレイ……」
王様が魔法を放つより早く、弾丸は王様を跡形もなく吹き飛ばし、そのまま壁も破壊して飛んでいく。陽真もナナも唖然としていた。
「勝った……おええええ!」
……人を殺した。自分が生き残るために、二人を守るために。人を殺した罪悪感と生き残った安心感で心の中はグチャグチャだった。
「大丈夫?」
近くにいたナナが背中をさすってくれる。陽真も傷を庇いながら歩き、近くに来てくれる。
「……大丈夫。それより早くここから逃げよう。王様を殺したんだ、ここにいたら捕まってしまう」
もうここにはいられない。俺達は犯罪者だから。
俺はナナと陽真に支えられながら立ち上がって出口に向かう。
「その必要はない!!」
突然扉が開き、鎧を着た兵士が数十人入ってきた。