初めての討伐依頼
最近やっと書く時間ができました。
「……ん? もう朝か」
窓から差し込む朝日で目が覚めた。あくびをしながら宿を出ると、何やら騒がしい。
「勇者が召喚されたんだって!」
「みたいだね! でも、賢者様は亡くなってしまったって!」
「うそ!? ……」
至る所からそんな会話が聞こえる。勇者に対する希望とグルシャ・バルトルスがいない不安……そういった声がほとんどだった。
そもそも勇者を召喚したのは、この世界に突然現れた魔王とその仲間……いわゆる魔王軍と戦うためだった。しかし、今まで最前線で戦っていたグルジャ・バルトルスが亡くなってしまったため、不安が入り混じっている。
「面倒なことにならないといいけど……勇者に期待かな」
最悪逃げればいい。俺は自分の身が守れればいい。
俺は切り替えて、依頼を受けるためにギルドに向かった。
「どれにしようかな? 討伐依頼を受けてみたいし、これにするか」
依頼書を壁から取り、昨日もいた猫耳受付嬢に渡す。昨日は気が付かなかったが、名札があり、ミサと書かれている。
「ミサさん。お願いします」
「お預かりします。ホーンウルフの討伐ですね。お気をつけて」
ミサさんと仲良くなりたい。仲良くなれば、猫耳を触らせてくれるかも……そんなことを考えながら、ホーンウルフの出現場所である草原に向かった。
門をくぐり、道を外れて少し行くと草原に着いた。草原にはターゲットのホーンウルフだけでなく、甲羅を持ったイノシシや羽が生えたウサギなど様々な種類の生物がいた。
「さて、やりますか。ファイアロード!」
ホーンウルフまでの炎の道を作る。これでホーンウルフは逃げれないし、他の生物にも邪魔されない。
ゆっくりとホーンウルフに近づく。ホーンウルフは炎に驚いていたが、俺に気づくとツノを向けて突進してきた。
「うおっ! 身体強化!」
咄嗟に身体能力を上げてホーンウルフを飛び越え、突進を避ける。
「この野郎! ウィンドバレット!」
着地して振り向き、ウィンドバレット……風の弾丸をホーンウルフの頭に打ち込む。
「キャン!」
ホーンウルフは悲鳴をあげ、絶命した。
「よし、討伐成功」
俺はファイアロードを解除し、死体のもとに向かう。
「これを運ぶのは結構大変だな。こんなとき異次元収納の魔法があれば……」
目を閉じ、集中する。別次元に自分だけの空間を、その中に入れたものは腐らないし、重さも感じない……そんな魔法をイメージする。
「アイテムボックス!」
突然、目の前に黒い穴が出現した。ホーンウルフを入れると、難なく入り、手を入れてホーンウルフを引っ張れば簡単に取り出せる。魔法って便利!
改めて、ホーンウルフをアイテムボックスに入れ、ギルドに戻る。
「ミサさん。ホーンウルフの討伐終わりました!」
アイテムボックスからホーンウルフを取り出して見せる。
「きゃああああ!」
ミサさんが叫び声をあげる。何もない空間から突然現れたホーンウルフの死体に驚いたみたいだ。
「驚かせてしまってごめんなさい」
「……いえ、大丈夫です。ホーンウルフの死体はこちらでお預かりします。査定が終わるまで少々お待ちください」
ミサさんは若干引いている。気まずい空気のまま時間だけが流れていく。
「お待たせしました。こちら報酬の500ガルです。お疲れ様でした」
「……ありがとうございます」
淡々と話す、無表情のミサさんに落ち込みながら報酬を受け取る。
「あ、星火さん」
「はい!」
ミサさんの呼びかけにテンションが上がる。さっきの無表情は仕事だからで、もしかしてデートのお誘い!?
「次から討伐したものなど素材をいきなり出すのはやめてください」
「……はい」
お叱りだった。うん……わかってた。
テンションただ下がりの俺はトボトボと歩いて宿に戻る。
「お客さん。手紙です。お客さんは何者なんですか?」
宿に戻ると、宿の亭主から手紙を渡される。俺に知り合いなんていないから、手紙を送ってくる人なんていないはず……
「はぁ!? 王様の紋章!?」
手紙には王様の紋章がついていた。面倒なことになると直感したが、無視はできない。恐る恐る手紙を開けた。