冒険者になる
そんなこんなでやってきました。冒険者ギルド!! 漫画でよく見る流れについテンションが上がる。
「すいません。冒険者登録をしたいのですが」
受付嬢に声をかける。異世界のテンプレ、猫耳だ! 触りたい! 顔には出さないが、内心とても興奮している。
「かしこまりました。登録料は20ガルです」
20ガル。グルジャ・バルトルスの記憶から1ガル100円くらいだから、2000円か。財布から20ガルを渡す。
「お預かりします。ではこちらの紙にお名前をお書きください」
霧屋星火っと、俺が書いた文字はこの世界の文字に変わっていた。どうやら、記憶を得たことでこの世界の文字を書けるらしい。記入した紙を受付嬢に渡す。
「お預かりします。冒険者カードを発行いたしますので少々お待ちください」
受付嬢のぴょこぴょこ動く耳を眺めて楽しんで待っていると、すぐに受付嬢に呼ばれた。
「お待たせしました。こちらが冒険者カードになります」
「ありがとうございます」
Fランクと書かれた冒険者カードを受け取る。これで身分証は手に入れることができた。せっかくだから依頼を受けようかな。
依頼書が貼られている壁を見るとゴブリン討伐、薬草採取、急募! ブルードラゴンの討伐と様々な依頼が貼られていた。俺はその中から薬草採取の依頼書を手に取り、依頼を受けた。
依頼を受けた俺は王都トレア近くの森にきていた。この森は比較的危険のない森らしい。
「とりあえず試してみるか。サーチ」
サーチの効果により、薬草が光って見えるようになった。
「どうやら魔法を使えるみたいだ。それなら、ステータス」
霧屋星火
HP 100
MP 9995
全属性魔法
俺のステータスは記憶にあるグルジャ・バルトルスのステータスと同じだ。俺が転生したのは、俺とグルジャ・バルトルスが根本的に似ていたためかもしれない。もうどうだっていいけど。
全属性魔法はどんな属性の魔法も使え、想像次第でどんな現象でも引き起こすことができる。元いた世界の知識を使えばできないことはないだろう。
そんなことを考えながら、俺は見渡す限りの薬草を採取した。手持ちの袋いっぱいまで採取できたため、成果としては上々だ。
俺は冒険者ギルドに戻り、受付嬢に薬草を渡した。
「これで依頼完了となります。こちら、報酬の100ガルです。お疲れ様でした」
「ありがとうございます」
換算すると、薬草採取で日給1万円。それなりに稼ぐことができた。
俺は100ガルを財布に入れ、目を覚ました場所であるグルジャ・バルトルスの家に戻った。しかし、家の前には兵士が何人もいて、家の中のものをどんどん運び出していた。
「何してるんですか!?」
慌てて兵士に詰め寄り、声をかける。
「何してるって、亡くなられた賢者様の遺品を回収しているだけだが。賢者様の遺品の中には、悪用されれば国さえ滅んでしまうものがあるからな。それよりお前は誰だ? 賢者様の関係者か?」
「俺は星火。賢者様の弟子だ」
俺は咄嗟に嘘をついた。転生魔法の失敗で選ばれた赤の他人です……なんて言っても誰も信じてくれないだろうし、関係者じゃないと言えば、兵士からは怪しく見えてしまうと考えたからだ。
「そうか。でも悪いな。王様の命令だからやめることはできないんだ。文句があるなら王様に言ってくれ」
兵士はそう言うと、もう取り合ってはくれなかった。
「しょうがない」
俺は諦めて近くの宿で泊まることにした。ベットに横になってくつろいでいると、ふと疑問に思ったことがあった。
「勇者召喚は成功したのか?」
勇者召喚が成功したというなら、その話を一度でも耳にするはず。しかし、今日一日誰もそんな話はしていなかった。それどころかグルジャ・バルトルスが亡くなったという話も兵士からしか聞いていない。
「まあ、いっか」
俺には関係のないことだから。そう思って俺はそのことについて考えるのをやめた。そして、明日は何をしようか悩みながら眠りについた。