偶然の転生
「はあ―」
暑い夏が終わり、紅葉がチラホラ見える。今日から新学期が始まる。俺、霧屋星火は憂鬱だった。
クラスでは空気、話し相手もいない。そんな学校生活がまた始まってしまう。
「……サボろっかな」
そう思いながら、駅前の信号が変わるのを待っていた。
「星火おはよー!」
突然、背中を突き飛ばされた。
「えっ!」
道路に飛び出す。
プ――! ドン!
強い衝撃を受け、俺は吹き飛んだ。
「星火!」
混濁する意識の中、地面に転がった俺に駆け寄る幼馴染の高尾雪奈の姿が見えた。どうやら俺を突き飛ばしたのは雪奈らしい。軽く押したつもりだろうが、夏休みの間、引きこもっていた俺は耐えれなかった。
雪奈が泣きながら俺の体を押さえて出血を止めようとしている。しかし、その感覚も周りの音も段々と消えている。
俺は死ぬんだな。ああ、やり残したことがいっぱいあ……ないな。案外後悔なんてないもんだ。でも、雪奈のことは心配だな。自分のことを責めるだろうし。
「雪奈……自分を……責めないで」
そう言うと、俺は意識を失った。
…………………………………………………
「ここは、どこだ?」
目が覚めると、俺は謎の模様が描かれた石畳の上に寝ていた。
俺は死んだはず。ここは死後の世界? 疑問を感じ、周りを見渡す。
「これは?」
近くの机の上に本が置いてある。表紙には見たこともない言語が書かれていた。とりあえず本を手に取ってみる。
「うわ!」
いきなり本が光り、声が聞こえてきた。
「これを聞いていると言うことは転生魔法は成功したらしいな。おめでとう! 儂の名はグルジャ・バルトルス。お前は儂だ」
意味が分からない。俺は霧屋星火、グルジャ・バルトルスではない。
「混乱しているだろう。この魔法はまだ未完成だったため、記憶を継承できていない可能性がある。たが安心しろ! この本に儂の記憶を保存してある。今から記憶を転写してやる」
突然、本からいくつもの光の玉が飛び出し、俺の中に入った。
「ぐ! 頭が」
膨大な情報のせいなのか、頭が割れそうに痛い。しばらく悶えていると、いつの間にか本は光らなくなっていた。
「……そういうことか」
グルジャ・バルトルスは賢者と呼ばれた魔法使いで、命を代償に勇者召喚を行う予定だった。
自分が生き残るために転生魔法を作り上げたが、転生魔法は失敗した。何が原因かわからないが、俺が選ばれてしまったらしい。
「とりあえず、何か着て外に行ってみよう」
とりあえず、壁に掛けてあった服を着てローブを羽織り、部屋を出た。外に出ると中世ヨーロッパのような街並みが広がっていた。
どうやらここはグルジャ・バルトルスの記憶にある王都トレアで間違いないみたいだ。
しかし、それはそれで問題がある。俺はグルジャ・バルトルスではない。つまり身分を証明するものがない!
「どうしよう。そうだ! 冒険者になろう!」
冒険者カードは身分の証明にもなる。俺は冒険者ギルドに向かった。
ありがとうございました。ゆっくり書いていきますので、気長にお付き合い下さい。