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掌返し

作者: 秋暁秋季

注意事項1

起承転結はありません。

短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。


注意事項2

心霊番組で人形が出る度に思うんですよ。

散々可愛がられてやってきたのに、ある時『化け物』呼ばわりされて、笑いものにされるのは、辛いだろうなと。


でもまぁ、私も怖がる側なのですが。

長い間、散々持て囃され、念が宿って、怖がられ、面白半分に見世物にされる。そうなりゃ可愛さ余って憎さ百倍。祟が収まらないってのは、まぁ、人の業。


僕は蚤の市で売られていた日本人形を片手に抱いて、自分の店へと戻って来た。受け取った時の店主の顔を忘れない。顔を顰めて、薄気味悪そうに僕の胸に押し付けた。

――お代は要らねぇ。さっさと引き取ってくんなぁ。夜中になると騒ぎ出すんだ。

――へぇ、其れは其れは。

確かに彼女は、長い年月を掛けて大事にれている顔をしていた。平たく言うならば人を恨む様な人相をしていない。だが其れが皮肉にも裏目に出た。

今まで散々可愛がられて来たから、自分は愛されて当然と思っている節がある。其れが裏切られた時、失意によって周りを傷付ける事にもなりかねない。早めに引き取って正解か。

――大事。大事……。

「あぁ、大事だとも。僕の店に来た子達は皆大事」

話したそうに、遊びたそうに、僕の腕を叩く。其れをあやす様に体を揺すぶる。大人しくしておいておくれ。もうすぐ着くから。

店に着いてからも、彼女は大人しくはしなかった。動かない筈の関節を無理矢理ギチギチ言わせて僕の袖を掴む。構って欲しいのだと思う。だから其れを宥める様につげ櫛で髪を梳かし、着物を揃え、彼女の相手をしてやった。

――大事。大事……。大事なの……。

「大丈夫だよ。何処にも行く場所が無かったら、此処が君の家になるんだから」

寂しんだろうなぁ。今まで愛されて当然だったから。掌返した様に面白半分に見世物にされて。其れが物凄く、傷付いたんだろうなぁ。持ち主が変わったから、誰が悪いとかではないけれど、人の残酷な面だよ。


手入れの済んだその子は店先に飾られる事になった。可愛がってくれる良い買い手が居れば売り渡すし、居ないのならば此処を家にして物の移り変わりを見れば良い。それまで僕が相手をしてあげよう。

そうしてまた買い占めた装飾達を手入れしていた時のこと、一人の常連が顔を出した。

「あ、新しい子が増えてる」

「今まで沢山可愛がられて、念が宿って、掌返しで見世物にされた可哀想な子。だから思いが乗じて動くし、僕以外にも積極的に話し掛ける」

この子ならきっと、怖がり半分に弄ぶ真似はしないだろう。そう思って切り込むことにした。その予想通り、彼女はただ無表情に人形を眺める。眺めて、目を逸らした。

「引き取るかい?」

「私は荷が重いかな……。自分でも持て余すのに」

彼女の目は、情に翻弄されたその子を憐れんでいた。思うところがあるから、きっとそう返したのだろう。

「そう、気が向いたら人形遊びでも付き合ってあげて。人形は人の心を表す鏡なのだから」

子猫の時は可愛かったのに、大人になって可愛くなくなった。だから捨てる。

そんな話と似てると思うんですよ。この話。


長い間、愛情を込めて接して、念が宿ってしまったなら、責任持ってお世話しなくてはならないと思った先日。

面白半分に気味悪がって弄ぶのは、なんだかとても可哀想でした。

でも私もきっと、怖がって手放すと思います。

駄目ですね。


店主はそう言った曰く付きの物も買い取ってそう。

相手が偏見なしに、真面目に面倒を見てくれる人だったら、その事を説明した上で売り渡しそう。

でもそうじゃないなら、ずっと骨董品店を居場所として提供し続けると思います。


元々物の声が聞ける質だから、そこに偏見はないと思うんですよ。

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