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Happiness  作者: 遠藤 敦子
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 LINEを交換したことで、彼女のフルネームがわかった。彼女は篠崎愛優(しのざきあゆ)というそうだ。彼女は僕のフルネーム表記を見て、「おのぜきすい? なんて読むんですか?」と聞いてきた。

「おのぜきみどり、だよ」

僕がフルネームを教えると、愛優は「みどりくん? 塩顔に似合わず可愛い名前」と笑っている。

「おいしばくぞ。女みたいな名前って言いたいんか?」

と言う僕に、

「いやそうじゃなくて、ギャップ萌えしました」

と笑いかけてくれた。

「じゃあ愛優、気をつけて帰ってな。もう死にたいなんて思うなよ」

「翠くんと話して、私まだ笑えるんだなって思えました。早く新しい彼女見つけなね」

そんなやりとりをして、僕と愛優は別れた。



 週明けの月曜日から、新しく女性派遣社員が僕の部署に配属される。堀内(ほりうち)チーフが連れてきたその女性は、168cmくらいの高身長で鎖骨くらいの長さの髪を外ハネにし、落ち着いた雰囲気を醸し出していた。30歳前後だろうか。どうしてこんなモデルさんみたいな人が派遣社員になり、マンション管理会社で働こうと思ったのか僕は興味津々だった。

「初めまして。本日から配属されました、遊佐真優子(ゆざまゆこ)です。前職は接客業なので事務は初めてですが、よろしくお願いいたします」

そう挨拶する遊佐さんを見て、僕はどこかで見たことがある気がしたのだ。接客業といっても夜職では絶対になさそうだった。どこかで見たことあるというのも、僕の考え過ぎだと良いけれど。

「遊佐さんは、小野関の隣に座ってもらおう。小野関は遊佐さんのOJTよろしくな」

堀内チーフに言われ、僕は遊佐さんに自己紹介する。

「初めまして、小野関です。新卒から3年働いてて、至らないところもあると思うんですが、よろしくお願いします。ではさっそく、挨拶回りに行きましょうか」

それから僕は遊佐さんを連れて、部署内の挨拶回りに向かう。どこのデスクに行っても、女性同僚は「モデルさんみたい」「美人な人」という目で見ているし、男性同僚は下心丸出しな目で遊佐さんを見ている者もいる。初対面で人を惹きつける彼女の才能を、僕はすごいなと思いながら見ていた。

 さっそくOJTに入り、まずはシステムの使い方から教える。パソコンはエクセルを少しとワードしか使ったことがないとのことで不慣れな様子だったけれど、「もし何かわからないことがあったら、聞いてもらえたら何度でも教えます!」と僕が言うと遊佐さんは安心していた。

 そうこうしているうちに昼休みのチャイムが鳴り、女性同僚数名が遊佐さんをランチに誘う。ランチ会と称してインタビューでもするのだろう。僕は同い年で派遣社員の菅田口郁大(すだぐちゆうだい)、先輩社員の星野一樹(ほしのかずき)さんと定食屋へ出かけた。道中で郁大に「翠は良いよな、遊佐さんみたいな美人の教育係できるなんて。前世でどんな徳を積んだらそうなった?」と羨ましがるような発言をされる。

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