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Happiness  作者: 遠藤 敦子
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 「実は俺も、何もかもどうでもよくなってしまうことが立て続けにあったんだ」と彼女に言うと、目をパチクリさせていた。

「こんな塩顔イケメンで仕事できそうな人にも、そういうことってあるんですか?」

僕は「塩顔イケメン」でも「仕事できそうな人」でもないけれど、お世辞とわかっていても嬉しくなったのだ。それはさておき、最近の出来事について話す。

「ああ……。俺いま25歳で大学から付き合って同棲してる彼女いて、もうすぐプロポーズしようって思ってたんだ。元カノが会社の同期の男を同棲してる家に上がり込ませて、その男が俺の元カノと『付き合っている。だから身を引いてくれ』って土下座して頼み込んできたわけ。元カノは黙ってばっかで何も言わないからどうしたいか聞いたら、俺を『嫌いになったわけじゃないけど、優しすぎて物足りない。同期といる方が合ってる』って。だから俺は元カノと相手の男を家から追い出した」

話しているうちに茉拓との最後のやりとりがフラッシュバックしてきた。大学時代から一緒にいたのに、終わり方が最低最悪だったことを思い出す。

「え、なんなんですかそいつら。自己中すぎて呆れる。浮気してたクソ女勝手に出て行ったんなら、お兄さんもまともな新しい彼女作って幸せになったら良いのに」

先ほどまで失恋して死にたいと泣いていた彼女が、僕の話を聞いて真剣に怒っている。いつの間にか涙が乾いていたようだ。

「いやー俺はもう恋愛とかいいわ。また裏切られたらと思うと怖いし。そっちこそ、その変な外国人の男以上に幸せになったら良いじゃん」

僕がそう言うと彼女は、「いや私も新しい彼氏作る気ない」と笑っている。

「まあそう思ってるのも今だけだけどな」

「お兄さんこそ、今は彼女いらないって思ってても半年後には新しい彼女いるかもしれないですよ?」

彼女とそんなやりとりしていたら僕自身もつられて笑ってしまった。何もかもどうでもいいという気持ちが消え去っていく。俺、まだ笑えるのな。そんな気持ちだった。

「じゃあここで出会った記念ってことで、LINE交換お願いしていいですか? さすがに毎日LINEはしません。何かあった時に相談したくて」

彼女からLINE交換を持ちかけられる。さすがにアラサーに片足を突っ込んだ男が女子大生とLINEでやりとりするなんて、世間一般からすれば気持ち悪いだけだろう。

「いやー、いくら成人してるとはいえ女子大生とLINEする25歳社会人男ってきもいだろ? 逆の立場ならどう思う? お姉さんが20代半ばの社会人で男子大学生とLINEするって」

「私は全然平気です! なのでどうかお願いします……!」

精一杯牽制したけれど、彼女にどうしてもと頼み込まれ、LINE交換することになった。僕は仕事しているので平日夜と土日しか返信できないことを了承の上で。

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