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Happiness  作者: 遠藤 敦子
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 翌日、出社するなり僕を見る同僚の視線が冷たい。僕を見ながらコソコソ話をしている人もいた。会社の電話が四六時中鳴り止まない。そんな時、僕は人事部長に「小野関(おのぜき)くん、ちょっといいかい?」と呼ばれた。人事部長に連れられて会議室に行く。

「実はな、小野関くんが新入社員にパワハラしているという内容がSNSで拡散されて、『小野関翠をクビにしろ』『パワハラする社員がいる会社は信用ならない』っていう苦情の電話がたくさん来ているんだ」

そう話す人事部長は僕にスマホでTwitterの画面を見せてきた。「パワハラ小野関と戦う社畜くん」というアカウントだったが、「教育係の小野関にパワハラされた。入社して2ヶ月しか経ってない新卒相手に偉そうの極み。マジ死んでほしい。#パワハラ教育係 #ハーモニーハウジング #パワハラ撲滅 #拡散希望」と書かれている。その投稿では、昨日僕が新入社員に強く注意した部分の音声のみが切り取られていた。

 「パワハラ小野関と戦う社畜くん」の正体は間違いなく、あの彼だ。人事部長によると、彼本人は昨日心療内科に行き、1ヶ月間の休職を要すると書かれた診断書を提出してきたそう。

「待ってください! 僕はパワハラなんてそんなつもりはなく……若い彼に成長してもらいたくて指導したんです。指導記録もあります」

僕は指導記録として書いていたノートを人事部長に見せた。人事部長はそれを読みながら

「小野関くん、君の言いたいこともわかるよ。でもね? 相手がパワハラって言ってる以上、パワハラになり得るんだ。しかも相手は休職までしてるから。小野関くんの顧客対応の素晴らしさは上からも評価されてるよ? でも『後輩にパワハラして休職に追い込み、SNSで炎上した社員がいる管理会社』ってだけで、わが社のイメージが悪くなるんだ」

と言う。たとえ虚偽の内容での炎上だとしても、SNSで炎上したというだけでイメージダウンに繋がりうることを痛感した。

「だから小野関くんには申し訳ないけど、来月から人材強化チームに異動してほしい。来週から派遣さん来るから、引き継ぎもしておくように」

人事部長から人材強化チームへの異動を命じられる。人材強化チームは不祥事を起こした社員が追いやられる部署で、事実上は自主退職待ちの部署だ。僕がいましている業務は、週明けから来る新しい派遣社員に引き継ぐことになった。

「……わかりました」

嫌ですとは到底言えなかったので、そう答えるしかなかったのだ。

 結婚すると思っていた彼女には浮気されて振られ、好きだった仕事は虚偽の内容での炎上で簡単に失ってしまった。僕はもう、これからどうしたら良いかわからなくなった。もういっそのこと、僕が死んだら全部楽になるのだろうかと思ってしまったくらいだ。

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