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Happiness  作者: 遠藤 敦子
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 有休消化前の最終出勤日に、松宮さんと星野さんと郁大が僕の送別会をしてくれることになる。仕事終わりに会社近くの海鮮居酒屋に集まり、4人でたくさん話をして飲食した。金曜日だったこともあり、僕たちは終電前までお店にいたのだ。花束をもらい、3人に見送られながら終電に乗った。3人ともLINEを交換しているので、僕が転職しても連絡を取り合うことは可能だったのだ。

 翌日から有休消化期間に入り、そうなったからにはと好きなように過ごす。長いこと行っていなかったジムに行く日もあれば、家から一歩も出ずに過ごす日もあった。しかしそんな日々も長くは続かなかったので、単発でアルバイトをしながら体を慣らす日を増やしていく。そうすることで新天地でも頑張れそうな気がしたから。



 あれから3年の月日が流れた。いろいろあったけれど、僕は店長として働いている。前職で毎日書類にホッチキスしていた日々が嘘のように、やりがいを持って働いている。大阪だけでなく京都や神戸にもお店をオープンさせ、川上さんはエリアマネージャーとして統括するようになった。真面目な性格の川上さんは昔は「俺が休んだら店が回らなくなるんじゃないか」とよく言っていたものの、新店のオープンに伴い良い店長候補の正社員に恵まれたこともあり、そういったことは言わなくなったのだ。とはいえ、川上さんは常に採用活動や店舗拡大で忙しい。小野関くんにはぜひ俺の右腕になってほしいと言ってくれたからには、そうなれるように川上さんをサポートできたらというのが僕の願いだ。

 あともう1つ変わったことといえば、松宮さんが僕の後輩として入社してきたことだった。息子さんが小学校高学年になって手がかからなくなったこともあり、ハーモニーハウジングでの営業経験やクレーム対応経験を活かしたいという動機があって転職したそう。そんな松宮さんは今、米粉ドーナツの良さを知ってもらうために委託販売やキッチンカーでの販売を視野に入れて営業活動を行っている。



 ある日、閉店作業を終え僕と松宮さんは一緒に帰ることになった。愛優からLINEが来ておりメッセージを見ていると、松宮さんが「その人誰?」と興味津々で覗き込んでくる。

「デパートの屋上から飛び降りようとしたのを僕が助けた子です。当時大学生だったんですけど、今は社会人かな。24歳とかそれくらいかと」

僕が愛優について説明すると、松宮さんは

「やっぱり小野関くんはすごいな、ヒーローみたいだ」

と言ってくれた。メッセージは「結婚して、福山(ふくやま)愛優になりました」という内容で、ウェディングドレス姿でご主人と寄り添った写真が送られている。LINEの名前も「福山愛優(篠崎)」になっていた。僕は愛優に「おめでとう。ついに愛優も結婚か……幸せになれよ」と返信する。

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