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Happiness  作者: 遠藤 敦子
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 2人が出て行って、僕は広い部屋に1人残された。いつから付き合っているのか聞けなかったのが悔しい。そもそも茉拓の様子に気づけなかった僕も馬鹿だったけれど。過去にも家に連れ込んで、僕たちのベッドで浮気していたかと思うとはらわたが煮え繰り返る。確証はなくとも、そういうことをしていたであろうベッドで寝る気にはなれなかった。結局はリビングのソファで寝たけれど、一睡もできなかったのだ。

 このマンションの契約者は僕なのだから、1人で住むことになる。ある程度貯金できたら引っ越しして、ベッドも買い替えよう。茉拓に渡すつもりだった婚約指輪は売って金に換えよう。その金で飲みに行くか焼肉でも食べに行こう。もう彼女とか結婚とかそういうのはいいや。僕の頭の中はそんな考えで埋め尽くされていた。


 翌日、僕はいつも通り会社に向かう。4月に入社した男性新入社員の教育係を任されているけれど、彼には手を焼いている。最初は若いし大学卒業したばかりで学生気分が抜けないのだろうと傍観していた。しかし、就業時間5分前に上司にLINEで欠勤連絡をすること・連絡なしに遅刻してくること・確認せずに勝手に仕事を進めてしまうこと・敬語が使えないこと(来客があり、お客さんの前で「男の方が来ました」と言うなど)といった目に余る仕事ぶりだったこともあり、もう大目に見ることはできなかったのだ。

 そんな彼は今日も、連絡なしに7分遅刻して出社してきた。第一声は「おはようございまーす」で、遅れて申し訳ありませんといった謝罪の言葉はない。今までの勤務態度のこともあり、一度指導しよう。そう思った僕は、「ちょっと会議室に来てもらっていいですか?」と彼を会議室に連れて行った。

「寝坊なのか電車の遅延なのかわからないけど、遅れそうな時って前もって連絡できますよね? 連絡しないのには何か理由があるんですか?」

僕が問いただすと、彼は連絡しないのは遅刻を咎められるのが怖いからだと言う。

「もう学生じゃないし、社会人なんだから報連相は徹底してくださいね。仕事を進める時もそうですけど、勝手に進めるんじゃなくて、一度僕か上司に確認してください」

そう言うと、彼は小さい声でわかりましたと返事する。彼への指導記録として、僕はノートに指導内容や彼の反応について記録していた。ハラスメントではなく正当な理由があっての指導だという照明をするためだ。しかし、まさかこのやりとりを録音されているなんて、僕は知る由もなかった。

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