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Happiness  作者: 遠藤 敦子
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 「それなら小野関くん、うちで社員として働くのはどう?」と、川上さんの店で働くことを勧められたのだ。

「小野関くんなら良い店長候補になれそうだし、ぜひ俺の右腕になってほしいんだ……!」

川上さんは頭を下げて僕に懇願する。まさか川上さんの入院先でスカウトされるなんて思いもしなかった。

「川上さんの熱意には心を打たれました。前向きに考えてみます!」

僕が言うと川上さんは嬉しそうな顔をする。連絡先ももらったので「また川上さんの体調が落ち着いた頃に連絡しますね。どうか無理はなさらず」と言い、病院から出た。


 病院からの帰り道、愛優からLINEが来ていることに気づく。内容を確認すると、新しい彼氏と2ヶ月で別れたそう。

「一体何があった? 2ヶ月で別れるなんて」

と返信すると、愛優は別れた経緯について教えてくれた。

「それがまじで最低な男だったんです。私に内緒で元カノと連絡とってるし、マザコンだし、モラハラひどいし、デートは自分の行きたいところ(カードショップとかアニメグッズ店とか)しか行きたがらないし……。結婚する前に本性わかって良かった!」

話を聞いている限り、別れて正解な男だと考える。付き合いたてで楽しい時期からそんな自己中心的な男なら、結婚したらさらにひどくなることは想像に難くないから。また相手はデート代もまともに払えない割には、カードショップやアニメグッズ店で浪費しまくっていたそう。モラハラ、自己中心的、度が過ぎたマザコン、隠れて元彼女と連絡を取る、浪費家の時点で「そいつはやめといた方が良いのでは」と老婆心ながら思ってしまった。

「そんな奴は別れて正解だし、まだ若いからもっと良い人に出会えると思う。結婚する前にそんな奴だったってわかって良かったじゃん」

と僕は返信する。初めて会ったときはあんなに死にたい死にたいと泣いていたのに、愛優も強くなったものだと感慨深くなる。



 それから僕はいつも通りホッチキスをこなし、相変わらず松宮さんや郁大や星野さんと仲良く過ごしている。4人でランチしている最中に「実は俺、転職したいって考えてて……」と話を切り出したとき、松宮さん以外のメンバーは驚いていた。郁大と星野さんは外回りに行く頻度が高く、なかなか会えていなかったから。

「翠お前転職って……。ホッチキス生活に嫌気さした?」

郁大に訊かれ、「嫌気はさしてないけど、このままで良いのかなって思ってて。やりがいないし理不尽な理由で異動になったし、もう続けるのは難しいかなって」と答える。

「翠の気持ちはわかった。そういうことならうまくいくように応援する」

郁大と星野さんにさらに背中を押してもらい、僕は転職活動を頑張ると決めた。

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