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Happiness  作者: 遠藤 敦子
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 「どうもありがとう。悪いよ、ここまでしてもらって……。タクシー代は俺が払うから」と言う店長さんに、僕は「タクシー呼んだの僕なんで、ここは僕が払います。店長さんは安静にしててください」と返す。

「ところでお兄さん、お名前は……?」

店長さんに名前を聞かれ、小野関翠ですと答えた。小野小町の「小野」に関係の「関」、翡翠の「翠」で『おのぜきみどり』です、と。店長さんは川上真也(かわかみしんや)さんといい、今52歳で独身だという。29歳の頃に離婚して(元妻が職場の妻子持ちの上司とW不倫したが、俺にも悪いところはあったと言っていた)子どもはおらず、離婚後に起業して米粉ドーナツ専門店を始めたそう。

 話をしているうちに病院へ到着した。宣言通り、タクシー代は僕が支払う。それから僕は川上さんに付き添って病院へ行く。検査の結果、大きな病気はなかったそうだ。僕もそれを聞いて安心したけれど、過労やストレスが原因だろうとのことで様子を見るため、川上さんは1泊だけ入院することになった。

「俺が休んだら、店は……」

お店の状況について心配する川上さんに、僕は「大丈夫。1日くらい休んだって良いんですよ。今まで頑張って来られたわけですし」と声をかける。

「俺以外みんなバイトだし、何かあったらと思うと休めなかったんだ。でも小野関くんのおかげで、こんな俺でも休んで良いんだって思ったら安心した」

川上さんは僕の言葉に安心した様子で、今まで休めなかった事情を教えてくれた。結局明日は臨時休業とし、明日出勤予定だったスタッフには改めて補償することにしたそうだ。

 点滴を打ったこともあり、川上さんの顔色は少し良くなっている。もう倒れる寸前だったころの弱々しい声ではなかった。

「お昼に同僚の男の人と今日のノルマは書類200部にホッチキスって話してたけど、仕事できそうなのに小野関くんは何があってホッチキスすることになったの? あ、嫌な気分にさせたらごめんね」

川上さんに聞かれ、僕は今までの経緯を話す。

「実は僕新入社員の教育係してたんですけど、その彼の勤務態度を強く注意したらパワハラされたってTwitterで拡散されてしまったんです……。相手が休職したこととTwitterで炎上したこともあって、今の部署に異動になりました。毎日ホッチキスして手が空いてもやることなんてないし……。お昼に来た同僚と仲良くやってるんですけどやりがいがないので、転職したいって思ってます」

僕の話を聞いた川上さんから、思いがけないことを言われた。

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