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Happiness  作者: 遠藤 敦子
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 元接客業ということもあってパソコンの操作はあまり得意ではなかったけれど、業務に慣れてきて遊佐さんはできることがどんどん増えていった。さらに電話対応でもおどおどすることはなくなり、変な人からの電話にあたっても気にしなくなったーー最初は落ち込んだりトイレで泣いたりしていたそうーーという。


 遊佐さんが入社して1週間経ち、堀内チーフが僕の席にやってきた。

「遊佐さんの歓迎会兼お前の送別会しようと思うんだけど、来週の金曜日空けといてな」

来週の金曜日は特に予定がなかったので承諾する。場所は会社近くの居酒屋(どこかは未定。決まったらまた言うとのこと)で、メンバーは部長・堀内チーフ・遊佐さん・僕・郁大・星野さんの6名だという。郁大が興味本位で遊佐さんに余計な詮索ーー彼氏いるのかとか、結婚しないのかとかーーをしないか心配だったけれど、さすがに部長とチーフの前だし大丈夫かなという気持ちもあった。



 いよいよ当日を迎える。結局は会社近くの焼き鳥店に行くことになった。18時に現地集合することになっていたけれど、なかなか遊佐さんが来ない。何があったのかと心配していると、遊佐さんがダッシュでこちらに向かってくる。

「すみません、道に迷ってしまって……。ギリギリになってしまいました……!」

遊佐さんは息を切らしながら話す。堀内チーフが「大丈夫だよ、間に合って良かった」と言ってくれたこともあり、遊佐さんは安堵した様子だった。

 入店し、お酒を飲んだり焼き鳥を食べたりしながらいろいろな話をする。恋愛の話になり、酔いの回った郁大が遊佐さんに彼氏がいる前提で話し出した。僕が「おい郁大、よせって……」と止めようとすると、遊佐さんは

「よく彼氏いる前提で話されることが多いんですけど、私、元旦那と死別したんです」

としんみりした顔で言う。

「えーそうなんですか? なんかすんません……」

郁大はこれ以上踏み込んではいけないことを察したのか、遊佐さんに気まずそうに謝罪した。僕は遊佐さんが元夫と死別した経緯を知っているけれど、この場で言うことではないので黙っていることにする。

 そして話題の中心は僕に移り変わり、部長が「小野関も理不尽なことで異動になったけど、腐らず頑張れよ」と応援の言葉をくれた。虚偽の内容で炎上してしまい、部長と堀内チーフで人事部長に異動は取りやめにしてくれと掛け合ったけれど、それでも人事部長は首を縦に振らなかったという。

「はい、新しい部署でも頑張ります!」

僕が宣言し、3時間半に及ぶ会はお開きとなった。

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