あとがき(めいたもの)特別篇三 ―スーパーヒロインズ! 師走に起きよ―
安達太良なゆみの読書記録
教師に本を勧めるだと? 礼節を欠いた学生が増えている。母校の格が落ちているのだ。第一に、僕はいみじく忙しい。貴重な時間をこの一冊に費やせというのか? 僕の時間を有意義にできるほどの価値が、この一冊にあるのか? 『スーパーヒロインズ! 師走に起きよ』、続き物の三巻目をよこすとはな。不親切なのだ、全巻揃えてくるか、一巻目を持ってくるのが筋だろう、阿呆が、呆け茄子が。
ふっ、ライトノベルとも小説とも分類できない、どっちつかずの半端な文章の塊だ。一時間もかからなかった。
感想を求められるだろうから、各話についてメモを残しておくか。手間がかかる。壱号、伍号、応答しろ。壱号はこれから口頭で感想を述べる、僕のタブレットに入力しろ。伍号は僕行きつけの菓子司へ適当にお礼を買ってこい。領収書? 阿呆、いるか。お前のバイト代で支払え。先月の養育費、392円ごまかしただろう。誰がお前達を食べさせてやっているのだ。早く遂行しろ。
第十二番歌:似せた物語
新たに登場する人物が、棚無和舟か。ヒロインズと日本文学国語学科の教員をつなぐ役割なのだな。お年寄りに大立ち回りを演じさせるとは、作者は狂っているのか? 他大学の学生も乱入して、空満大学の警備はどうなっている? 人物が多くて、読みづらかった。
第十三番歌:擬せた者語
作者は、パロディを好んでいるのだそうだ。第十二番歌と読みが同じだ、音声情報のみだと混乱する。『伊勢物語』の擬物語(分かりやすくいえばパロディのこと)『仁勢物語』から題名を借りたようだな。ヒロインズ対ヒロインズ、教員対教員の後編だ。勝敗については、妥当だろう。もう少し悲劇的な展開にしても悪くなかった。
第十四番歌:雲に隠れて
題の元は、雲隠の巻ではないのか? 紫式部に並ぼうという作者の恥知らずさに呆れるよ。石山寺に行け、すぐにだ(行きました。真夏に全体を歩いてきました。八十島)。ヒロインズの質問に答えているあの人物は、粘着質なのだ。僕と同じ名前……性格を除いた全てが一致している。訴えなくもないが、この国に従ってやるよ。言論、表現の自由が権利としてあるのだからな。どこに、と問う気が失せた輩がそこらに転がっているようだが。
第十五番歌:梓弓抄
アヅサユミめ、この本でも語られているのか。お前の台詞は、ほとんどの読者が古語辞典を必要としなければならない。僕はいらなかった。勧めてきた学生は、言語に関する知能が壊滅的に、致命的に低い。最後まで読めたことを、表面的に褒め称えてやる。
第十六番歌:アヅサユミ、引く
二話にわたり、アヅサユミが登場して腸が煮えくり返っている。作者はアヅサユミ信者か? 狂気的な神を崇める人間もまた狂気的なのだ。枕詞に「あづさゆみ」がある。作者のセンスがいかに貧弱か、文盲の若人達でもようやく分かるのではないか? 分からなければ、義務教育以前の問題だ。ひらがなドリルからやり直せ。
以上だ。壱号、保存して「余計な用フォルダ」に移せ。何が滑稽だ? まずは、化粧室で鏡を見ろ。次に、その顔で街に繰り出し、職務質問されることを想像するのだ。
四限終了か、僕は次に講義があるため、席を外す。肆号、伍号が帰還したら廊下に逆立ちさせておけ。弐号、参号は机を片付けろ。試料を勝手に使うな。六度目の注意だ。
この駄作は、明日に返す。