可愛い幼馴染みが勇者みたいなんだけど魔王討伐とか危ないから俺が代わりに魔王をボコボコにします!!
この世界では、全員が16までに『天職』を授かる。
剣士、魔法使い、そして勇者などだ。
天職を得たものは、天職に応じた圧倒的な能力が得られる。
剣士だと、剣を扱ったことがないものでも、自由自在に操れるようになる。
魔法使いだと、魔力を使い超常現象を起こすことができる。
天職を授かると誰からも説明は受けないが、自然と、どんなものかがわかる。
そして、誰もが自分の職業にあった生活で生きていく。
俺も身分にあった職業を得て、故郷の町で穏やかに一生を過ごす予定だった。
しかし、そんなことはなかった。
俺の最愛の幼馴染であるユリシアが勇者に選ばれてしまった。
勇者には魔王討伐の義務がある。
かつて魔王を討伐できた勇者はいない。
当然ユリシアが魔王を討伐できる可能性は低いだろう。
町のみんなは泣きながら送り出している。
俺だって泣いている。
今から死地に向かう幼馴染を送り出すのだ。
これでしばらくの間離れ離れになってしまう。
え?勇者はそのまま死ぬんじゃないのかって?
馬鹿か!目に入れても鼻に入れても痛くないほど可愛すぎ、女神でも天使でも妖精でもおかしくはない、ていうかそのものであるほど神々しいオーラを持ち、世界の誰もが恋するほど美しい最愛の幼馴染であるユリシアが死ぬわけねえだろ!
じゃあどういうことだって?
決まってんだろ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ふぁーあ。」
朝の日差しに目を焼かれ、背伸びをしながら、目を覚ます。
そして寝る。
まだ眠いし。
それに、今日は休日だ。
今日の予定なんて学校しかない。
ちなみに後20分で学校は始まる。
俺の家からは10分は学校までかかる。
つまり、後5時間は寝れる。
そういうことだ。
そして俺は、布団を被り再び深い眠りに落ちる。
寸前で、
「なんでもう一度寝ようとしてるのよ!」
仰向けに寝転がっている、俺の腹部にとてもとても重たい衝撃が伝わる。
「ぶぉぉぉぉぉぇぇぇぇ!」
目を開けると、そこにはあり得ないくらいの超絶美少女がいた。
この世に存在するはずがない芸術のような顔。
その目はサファイアをはめ込んだかのように澄んだ碧眼。
その髪は、月の光をそのまま束ねたような金髪。
あぁこれは、
「死んだんだな。きっと俺を天使が迎えに来たんだ。そうに違いない。しかし神も馬鹿だな。こんな天使に迎えさせたら、死んだ後でもっかい死んじまうよ。バタッと。」
そしてベッドに倒れ込む。
「は?何馬鹿なこと言ってんの、もっかい殴るわよ?」
「あぁ!ユリシアだったのか!すまない!可愛すぎて天使と間違えてしまった!いや間違えていないのか?だって溢れ出る神々しいオーラに、天使の羽が生えていてもおかしく「そろそろ怒るわよ?」
「すんません、準備します。」
頬を膨らませて(つついていい?)、プリプリと(可愛すぎるこの擬音!)怒っているのは俺の幼馴染(であり女神以下略)のユリシア。
そろそろ潮時か、これ以上は流石に置いて行かれそうだ。
ユリシアにそんなことされたら傷ついて死んじゃう!
え?すでに怒られてるし殴られてる?
まさか、これはご褒美だろ。
そして3秒で準備を終える。
女神を待たせるわけにはいかないからね!
「早すぎるでしょ。まぁいいけど。じゃあ行こうか、ヴィル」
はい女神に俺の名前を呼んでいただきましたっ!
俺の名前はヴィル君です。15歳です!
でもお隣には女神がいるので女絡み注意!
ユリりんに比べたら、俺なんてゴキブリみたいなものだから、どうでもいいね!
「ユリりんを待たせられないからね!」
「は?ユリりんって何?もしかして私のこと?気持ち悪いからやめてくれる?」
うん!今日もいい朝だ!
学校に近づくとちらほら生徒たちが見え始める。
毎日のことだが、視線を集める。
みんな俺に見惚れている!なんてことはなく、隣のマイエンジェルに見惚れている。
そりゃそうだ、この学校で断トツに可愛いからね。
ほら、周りの会話に耳をすますと
「あぁ、今日もお美しい!隣の犬の糞邪魔だな」
「朝から姫を見られるなんて、今日は幸せな一日になりそうだわ!なんであのゴミ隣にいるの?」
「ここはさっき女神が通ったところ、女神ブレスがまだあるかもしれない!目一杯吸い込んで離さない!おえ、女神の匂いと一緒にカメムシの匂いがする。やめとこう気分が悪くなる」
「デュフフ!デュフ、デュフフフ!デユフフフフ隣の不能、使えないからって僕の妄想に割り込んで来ないでくれ!」
あぁ、いつも通りだな。
みんなよく女神の美しさをわかってらっしゃる。
ユリシアと比べられてしまうと俺は、月とすっぽんが踏んじゃってる蟻の行列の最後尾のクソ雑魚蟻の糞ぐらいの差がある。
これでも足りないぐらいだ。
それはそうと、最後から二番目の奴よく踏み止まったな。
もしお前が、意図的に、いや無意識にでも、女神ブレスを吸っていたとしよう。
吸う瞬間、その汚ねえ口の中に近所のおっちゃん特製の、激辛トウガラシを打ち込んでやるところだったぜ。
あれはやばい。
半径2メートル以内に入った生物は何者であっても、その痛みで意識を失う。
最低でも半径5メートルは離れないと安全とは言えない。
俺はあれを5重にした袋に入れて常備してるけど、今日はもう持っていない。
え?どこにやったのかって?
おかしいな、落としたのかな
「デュフフ、ん?頭の上に何かが、
ぷぎゃーーーーーーーーーーーーーーーー!」
なんか後方が騒がしいな。
あそこに倒れているのは、さっき俺を不能呼ばわりした奴じゃないか。
まぁそれはどうでもいいけど。
俺の見えている範囲で妄想をするのはいただけなかったな。
まぁ俺の見えていない範囲でも相応の制裁は加えるがな。
ちなみにどうでもいいけど俺は不能じゃないぞ!
どうでもいいけど!
そうこうしているうちに学校に着き、同じクラスなので、一緒に教室に入る。
そして隣の席に座る。
「はぁ、今日も隣でマイエンジェルを眺められるなんて、俺はなんて幸せなのだろう」
「きもいから黙って」
くぅぅ!可愛い!
そう俺は、中学生の頃から、いや!小学生の頃から、否!生まれた時から!いつだって!
ユリシアの隣をキープしている。
席替えする度に生徒同士の殴り合いに参加している。
そして毎回一位を獲得する。
ざまぁみろ!
ユリシアの隣は渡さないぜ!
生まれた時からっていうのもまじです。
誕生日も同じだからね!
まさにこれは運命!そうDestiny!
「だから結婚しよう!」
「うるさい!授業始まるわよ!」
ちょうど教師が入ってきた。
授業が始まる。
目を覚ますと授業は後少しだった。
「最後に魔王と勇者について詳しく話すぞ〜。じゃあ、ユリシアーまずお前が魔大陸について知ってることを話してみろー。」
あいつ今呼び捨てにしやがった。
こ◯ろす。
隠れてない?知らないね。
「はい。魔大陸とは、我々が住む、聖大陸の隣に位置しています。大陸といっても、魔大陸と聖大陸はつながっており、巨大な壁『エンドライン』が境としてあるだけです。魔大陸に住む、魔族や魔物たちは、人間の天職とは違う能力を持っています。そして、聖と魔に別れた時代から絶え間なく、エンドラインにいくつかある狭間から魔王軍として聖大陸への侵攻を続けています。以上です」
「完璧だな。じゃあ次は、今起きたヴィル、魔王について話してみろ。」
「えー仕方ない、魔王とは、圧倒的な力を持ち魔大陸を統べる者です。まぁうちの女神様には及びませんが。魔王が死なない限り魔王軍は止まらないので、勇者達を送り込み魔王討伐を狙っています。天使がいればワンパンだけど。以上です」
「お前は変なことを言わないと、喋れんのか!まぁいい、俺の話すことはほとんどなくなったな。天才と天災に聞けば代わりに授業してくれるから楽だ。最後に、魔王を討伐するため生まれてくるのがさっきヴィルが言った勇者だ。勇者は人類の希望であり、唯一魔王を倒せる可能性がある人間だ。勇者はパーティーを率いて魔王討伐に行く。この時パーティーに選ばれるのは強力な天職を持つ者達だな。よし、次は実技だ。着替えて外に出てこい。」
天才達でいいのになんで2回言ったんだ?
まぁいいや、外に出るか。
実技は模擬戦だ。
いくら魔大陸と分かれているといっても、こっちの大陸にもモンスターはある程度出る。
最低限の自衛ができる能力を身につけるためだ。
体操服に着替えて外に出る。
教師を待っていると、野郎どもが雄叫びを上げる。
野朗どもの視線の先では天使が聖なる衣装を纏い地上に舞い降りた姿があった。
聖なる衣装、つまり、体操服だ!
何度見ても可愛すぎるだろ。
しかもエロい。
むっちりした白い太ももがエロすぎる。
でも俺以外の野郎の視線に晒されるのはむかつくな!
全員覚えた。血祭りにあげてやる。
「よし、全員いるな。始めるか。同性同士でペアを組め。」
さっきから一番興奮した顔で見てるあいつにしよう。
「よし組めたな。じゃあ適当に模擬戦していくぞ。まずは、お手本を見せてもらうか。ユリシアのペアから始めよう」
来たー!
頑張れ頑張れマイエンジェル!
と言っても結果はわかりきっているが。
木刀を持ったユリシアと槍を持ったもう一人のモb女子が対峙する。
相手は槍使いの天職を授かっているが、ユリシアは未だに天職を授かっていない。
本来戦闘系の天職をもつものと持たないものとでは勝負になるはずもない。
本来は、な。まあ見てなって。
教師の声で模擬戦が始まった。
槍使いの槍は目にも止まらぬ速度でユリシアを狙う。
しかし、ユリシアは軽く身を捻るだけでそれを避けている。
まだ始まったばかりの模擬戦だが、もう勝負がつき始めた。
圧倒的に優勢なのはユリシアだ。
美しい軌跡を描く剣は確実にモブ女を追い詰めている。
勝負は槍女の槍が破壊されたことで終わった。
ユリシアの完封勝利だ。
職業の原理を覆すこの強さが、俺のマイエンジェルの天才と呼ばれる所以だ。
その後は適当に模擬戦が進んで終わった。
ちなみに俺はギリギリで勝った。
なかなかやるなあいつ。
次は仕留める。
さて授業は全て終わった。
帰ろうと思ったら、
「ほら!ヴィル早く帰るわよ!」
女神様からお声がかかった!
「是非とも喜んで!」
ユリシアとの帰り道、俺達はいつもの道を歩いていた。
夕日は真っ赤に染まりながら西の空に眠ろうとしていた。
「綺麗な夕日…」
ユリシアが空を眺めながら言った。
「いやいや、西日に照らされてるあなたの方が綺麗ですよ」
「もう…すぐそういうことばっか言うんだから」
実際目の前の彼女は幻想的な美しさがあった。
「来週で私達は16になって、それまでに天職を得るのよね」
そう、来週で女神がこの世に降臨してから16年目になる。
そして俺も16になる。
16までに職業を誰もが得るのでユリシアもなんらかの職業を得るだろう。
「誕生日の約束、忘れてないでしょうね」
「忘れるわけないじゃないか、女神様とデートだぜ?」
「そ、それならいいわ」
そう言ってそっぽを向いた彼女の頰は心なしかさらに赤く染まっていた。
「ただいま」
返事はない。
俺は一人で生活している。
両親は俺が5歳の頃町を襲撃した魔物達を退けるために命を賭した。そして死んだ。
それから俺はずっと一人で生活している。
しかし寂しくはない。
ユリシアの家族が俺を実の息子のように扱ってくれたからだ。
そんなことを思いながら机の上にある箱を見た。
「これを渡して、ちゃんと想いを伝えるんだ」
そして眠りについた。
だが俺は知らない、次の日が激動の1日になることを。
また日光が入ってきやがって、朝を迎える。
今日は休日なので、早く起きる必要なんてない。
と思っていたんだが何やら外が騒がしい。
「ざわざわざわ」
でも、俺には関係ないね!
「ざわざわざわざわざわざわ」
寝ようか。
「ざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわざわ」
「うるせーーーー!いい度胸だ!朝から騒ぐボケナスどもを蹴散らしてやる!」
窓から身を乗り出すと、そこには、街の半分以上が集まっているのではないかというほど、大勢の人がいた。
適当に近くの男に話を聞く。
「よう兄弟!なんの騒ぎだ?」
「えっ、お、俺か?めでたいことがあったんだよ!
うちの街から勇者が出たんだ!名前は確か
ユリシアだったかな?」
人混みを押しのけて中心へ向かう。
そんなはずがないと思いながら。
必死に前へ進んでいき、ようやく一人で立っている人物が見えた。
そこにいたのは、紛れもなく俺の幼馴染のユリシアだった。
言葉が、出なかった。周りからは歓声が止まない。
ユリシアも笑顔でそれに応えている。
でもその笑顔から見える感情は決して喜びじゃなかった。
周りのやつらには、あの悲しい笑顔が見えないのか?
ただの女の子があそこに立っていることに疑問を抱かないのか?
気づけば、俺は人混みを突き飛ばしてユリシアの目の前にいた。
「ヴィ、ル?」
俺を見ても、悲しい笑顔をやめなかった。
「ユリシア!走るぞ!」
ユリシアの腕を掴んで走り出す。
さっき、俺が突き飛ばしたところはまだ空いていた。
突然の乱入者に周りが騒がしいが、関係ない。
駆け抜けて、街の外の森の中へと逃げ込んだ。
ようやく追っ手がいなくなり、止まる。
振り返り、彼女を抱きしめる。荒れ狂う鼓動がシンクロする。
二人の鼓動が落ち着いたとき、ユリシアが俺の肩を押した。
そして笑いながら戯けるように喋り始めた。
「ヴィル、急にどうしたの?あ、私に二人きりでお祝いを言いたかったのね、言ってくれれば時間を作ったのに」
「やめろよ」
「それにしても、びっくりしたわ。朝起きたら右手にこんな聖印があって、騎士様がくるんだもの」
「やめてくれ」
「これで、私も歴史に残る勇者ね」
「やめてくれって!言ってるだろ!」
「やめてくれって、どういうこと?」
まだ、彼女は笑っている。
「それだ。その悲しい笑顔をやめてくれよ…」
無理やり上げた口角は不自然に震えながら上がっていて、彼女の瞳には僅かに涙が浮かんでいた。
「俺にまで、その笑顔を向けないでくれよ」
彼女は俯むく。
「無理だよ、私は勇者に選ばれたんだから。先生も言ってたでしょ?人類の希望だって。希望が泣いてちゃダメでしょ?」
消えそうな声で話す彼女の地面には水の跡がいくつもあった。
「そこに、お前の思いはあるのか?お前がそう望んでるのか?」
「望んでるわけ!!」
初めて表情を崩し、声を荒げた彼女の瞳からは涙が溢れ出していた。
「ないでしょ…」
今にも消えてしまいそうな彼女を、消えてしまわないように、ここに留めるように、もう一度抱き寄せる。
「お前の想いを聞かせてくれよ」
「ずっとここで暮らしたかった!」
「なんで私が勇者なの!?」
「魔王なんて知らない!」
「私じゃなくてもよかったじゃない!」
「死にたくない!」
「怖い!」
「ずっと、ヴィルと一緒に、いたかった…」
「でも私は、行かなきゃいけない。私は勇者だから」
「ユリシア…」
意を決した俺はユリシアの首に手を回す。
「ちょ、ヴィル?」
「難しいな、こうか?あ、こうだな、これでよし」
そうして、俺はユリシアから離れる。
彼女の首にはペンダントが付けられていた。
「綺麗…」
彼女の美しい金髪と同じ色のチェーンで、まるで真っ赤に染まった夕日のようなライトストーンのペンダントだった。
「誕生日プレゼントだったんだけど、ちょっと早くなっちまった」
「買って、くれてたの?」
そのペンダントは昔二人で王国都市に出かけたとき、彼女が目を奪われていたペンダントだった。
「君によく似合うと思ったから」
一瞬、綻びかけた顔だがすぐに悲痛な表情に戻った。
「でも、私はヴィルに何も返せない!何も出来ずに死んじゃう!」
「ユリシアは死なないよ」
「死ぬに決まってる!だって勝てるわけない!」
「ユリシアは負けない」
「無理だって言っ「そして、帰ってきたら結婚しよう」
目を丸くした彼女に続ける。
「いつになってもいい、何年経ってもいい。俺はずっと待ち続けるから」
「そんなこと、言われても」
「別に魔王を倒せなくてもいい、逃げてきてもいいから。俺はいつでも君を迎える。例え誰が君に運命を押し付けても、俺が跳ね除ける。君を守る」
「好きだ、アリシア」
「ずるい。ずるいよヴィル。そんなこと言われたら、絶対死ねないじゃない」
「あぁ、死ねないぞ」
「いつも自分が言いたいことだけ言うんだから」
「愛情表現は大事にしてるからな」
「そんなずるいヴィルには返事してあげないから。せいぜい不安な毎日を送ってなさい」
「いつまでも待ってる」
「いつ帰ってきてもいいように、隣空けときなさいよ?」
そう言って笑った彼女の笑顔は恐怖や不安はかけらも残っていない、正真正銘の笑顔だった。
そして次の日、彼女はあっさり旅立っていった。
俺は今何をしているかって?
教えてやろう。
え?聞いてない?
うるせぇ。
俺は今、
ベッドにうつ伏せになって死んでます。
俺のエンジェルがいなくなったんだぜ。
俺なんで生きてんの?
ねぇねぇ誰か教えてよ!
俺はこれから何を頼りに生きていけばいいの!
女神様ー!俺が耐えられませーん!
そんなことを喋っている俺の部屋はすごく片付いている。
この町にはもう女神はいない。
俺の最愛の彼女はおらんのじゃ!
生まれ育った町って言っても、女神との思い出しかないからどうでもいいな。
で、なんで俺が荷物をまとめたかというと、俺は旅に出るからだ。
ユリシアは多分、いや絶対戻ってこない。
戻ってくるのは、魔王を討伐してからだろう。
つまり戻ってこない。
だからここにいなくても大丈夫。
俺が何をしに行くかはまだ秘密だな。
ユリシアの両親に感謝と別れを告げ町を出た。
そして夜を迎えた。
街から少し離れたところで火をつけ野営していた。
そろそろ俺が何をしようとしているのか教えてもいいかもな。
ずばり!
「こんにちは、人族の少年。今日はきれいな満月だね。」
その通り!いや誰やねん!
振り返ると、黒いマントを羽織った長身の男が立っていた。
何あれ不審者?
まあ冗談はさておきこいつは今人族のって言ったな。
多分人間ではない。
それに開いた口の歯は鋭く尖っている。
おそらくこいつは
「もう気づいたかもしれませんが、私は、魔王軍幹部の、ブモー・ノ・ミラーです。お見知り置きを。」
ただの変t…
え?魔王軍幹部?
なんでここにおるん?
明らかに序盤に出てくる敵じゃないだろ。
「なんでここにいる?って顔をしてますね。」
え、きも!
「実は先日、勇者が現れたとの話を聞きまして、早めに摘んでおこうと参った次第です。で、少年、勇者がどこにいるか知りませんか?素直に教えてくれたら命は見逃しますよ?」
こいつ、まさか、女神を殺っちゃおうとしてる?
へーそう。ふーん
「なんで俺がお前に教えないといけないんだバーカ!」
「今、なんと言いました?」
「聞こえなかったのかよ、難聴め。その服カッコ悪すぎだって言ったんだよ。」
「そんなこと、言ってませんよね!」
そう言いながら、剣を抜き襲いかかってきた。
常人には捕らえられないスピードで。
常人なら捕らえられないだろうなぁ。
あいにくと俺は違う。
「ふんっ!」
変態のふるう剣を右手と左手の小指で挟んで止める。
真剣白刃取りの小指バージョン!
「はい?」
そのまま折っちゃう。
「あなた何者ですか?油断していたとは言え私の一撃をそんな遊びながら止めるなんて、普通の天職ではありませんねぇ」
「お前の探してる勇者の幼馴染さ。至って普通の男だぞ」
「普通の人間には私の攻撃は止めれないんですよ!まあいい、ギリギリまで痛めつけてから聞くことにしましょう。見せてあげます。夜の王」
そういうと、変態の体が、ちっちゃい何千匹ものの蝙蝠に別れる。
こいつは吸血鬼なんだろうな。
変態吸血鬼だ。
「夜の王なんて、卑猥すぎんだよ!」
『バカにするのもいい加減にしなさい!』
蝙蝠のそれぞれが凄まじい勢いで俺目掛け飛んでくる。
後ろには魔術を構えてる奴もいるな。
「仕方ないなあ、遊んでやるよ」
次の瞬間、俺は後ろの魔術を構えた蝙蝠千匹ほどの背後にいた。
「爆ぜろ」
轟音と共に魔術を構えた蝙蝠は全て消えた。
『なっ!転移に炎魔法、あなたは賢者ですね!おおかた最初は身体強化魔法でも使っていたんでしょう?天職がわかれば対策は容易い!』
蝙蝠が剣や槍あらゆる武器に姿を変える。
『接近戦といきましょう!』
なるほど、俺が賢者と判断して即座に近接戦闘に切り替える。
これが魔王軍幹部なのも納得かもしれない。
でもまぁ、俺賢者じゃないんだけどね
「創造、アーベントロート」
俺の右手には赤い剣が握られている。
『クッ……ハハハハッ賢者が剣を握ってどうするんです?』
「御託はいい、かかってこいよ」
『ハァ、もういい、死になさい』
剣と槍と斧が飛んでくるが、剣を斬り落とし、槍を掴み斧と相殺する。
『は?もう一度』
その前に空中の武器全てを斬り落とす。
息絶え絶えに武器達は元の男に戻る。
『な、なぜ賢者がそれほどの力を、ま、まさかキサマは!』
「俺一度も賢者とか言ってねえし」
『きょ、今日のところは見逃します!だから!』
「黙れ、てめぇは、ユリシアを狙った、逃すわけねえだろ。
燃やし尽くせ、アーベントロート」
その夕焼けのような剣は空にかざすと真っ赤に燃え上がり、夜空を埋め尽くすほどの輝きを放つ。
『キ、キサマ、何者なんダァァァ』
最後の力で剣を抜き飛びかかってくるミラー。
「ハァァァァァ!」
『ギャァァァァァァァァァァァ!』
アーベントロートを振り下ろした後には焼け野原しか残っていなかった。
「俺は超絶美少女勇者の幼馴染、ヴィル。家名はない。
天職は【理を外れた勇者】
それだけだ。」
さて、故郷に降りかかる害は払えたし行くか。
え?何をしにって?
決まってんだろ。
俺が幼馴染勇者の代わりに魔王をボコる。
魔法で呼び出した竜の上に乗り俺は魔大陸へ向かう。
勇者パーティーが出発するまで一ヶ月あるらしい。
目標は出発するまでに魔王をボコる。
「このためにあったのかもな、この天職」
両親が死んだ次の日に、この天職を授かった。
当時はもっと早くと恨んだものだが、今は分かる。
俺はユリシアを守るためにこの天職をもらったんだ。
存分に使わせてもらうぞ。
待っててくれ、ユリシア。
それから魔王をしばいて他にもなんやかんや大変なことがいっぱいあって、最終的にはユリシアと幸せに暮らしたとさ
昔書いたものをリメイクしてみました!
もし良かったらアドバイスなどもらえると嬉しいです
感想、レビュー待ってます!
面白いと思ってくれた方は星やいいねお願いします!
続きを書くかはまだ悩み中です
読んでいただきありがとうございました!