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初デート1

結局あれから押しきられて、翌日デートすることになってしまった。

だって彼のあの返しに思考が停止して、何て言えば断れるのかわからなくなってしまったのだ。


…なしくずしにデートを承諾した時に拍手したやつら、全員一発殴らせろ。




そんな訳で彼と王都を散策することになった日の朝、彼は公爵家の馬車で迎えに来た。

そうそう、名前はラリーというらしい。

ラリー・クレバット。


「おはようございます。クレバット様」


深く頭を下げると、すかさず


「嫌だな、ラリーって呼んでよ。夫婦になるんだから」


と返された。


「なりませんよ!?」


思わず脊椎反射で突っ込んでしまう。


「うん、まあ昨日の今日だもんね。心の整理がつかないのは仕方がないよ」


駄々っ子を見るみたいな目で見てますけど、おかしなこと言ってるのはそっちですからね!?婚約が成立してるみたいな体で語るのはやめてください!


とまでは流石に言えず、差し出された手を引きつった笑顔でとって馬車に乗った。


馬車はカタコトと静かに動き出した。

うちの馬車とは段違いな乗り心地の良さだ。ほとんど揺れないし、座席の布地もなめらかで手触りがいい。それに内側の枠組みなどに施された木彫りの装飾も目に楽しい。


流石だ。

お金がかかっている馬車は違う。

お金の差は家の力の差だ。

いくら彼がそういうのを前面に出してこないとはいえ、態度には気をつけなければと気を引き締めた。



そういえば、昨夜お父様にラリーとの事を相談したら


「うちに『断る』という選択肢があると思うかい?」


と半笑いで諭された。

わかってる。そんなものはない。

子爵家vs公爵家なのだ。

全くもって勝負にならない。

何とか穏便に断るには、私が彼の機嫌を損ねることなく興味を失ってもらうしかないのだ。


その為にはまず情報収集だ。

そう意気込んで、向かい合って座っているラリーに聞いてみた。


「いったい私のどこを気に入られたのですか?」


そこさえ無くなれば、もしくは勘違いだったと思わせられれば興味を失ってくれるだろう。

けれど


「うん、顔かな?」


即答されて、微妙に嬉しくない気持ちになってしまった。

見た目を褒められるのは嫌じゃない。

でも、それだけでプロポーズっていうのはちょっと…。けどそれなら化粧を変えたら割と簡単に……

と作戦を立て始めたのだけれど、まだ続きがあった。


「その猫みたいに挑戦的な目とか、感情が素直に出る眉とか、いいなって思ったんだ。あと強気な唇も好きだなって昨日気づいた」


……「顔」と言っても、ラリーが気に入ったポイントは思ってたのとちょっと違った。

意外にも私のことをちゃんと見てくれていたように聞こえて、不覚にも少し照れる。


「政治経済はほぼ満点なのに魔法学と詩学はさっぱりで、よく追試受けてたりするとことか。カフェテリアの日替わりメニューに一喜一憂してるとことか。猫が好きなのに、裏庭の猫には未だに触らせてもらえないとことかも好きだよ」


そのポイントに萌える気持ちはわかりません!

ていうか、あの猫には結局触らせてもらえないまま昨日卒業しましたけどね!


「あと友達と話してると、どつき漫才みたいになってるとことか。好きなケーキだと食後に三個はペロリと食べちゃうとことか。食べ過ぎた日の午後の授業は、寝ぼけてちょっと目がトロンとしてるとことかも好き」


…ちょっと待って。

そんなとこまで好きなの?っていうか、なんで知ってるのどこから見てたの!?

まあカフェテリアは全学年一緒だし、私の教室は一階だったけど…。


どうしよう。そんなマニアックなポイントを並べられても困る。

…それにちょっと怖い…。



……………せめてもうちょっとわかりやすい物を……何かサクっと変えられるものを……


「……コレっていうものは無いんですか?」


ラリーは軽く眉を寄せた。

さあ、いったい何を変えれば飽きてくれるの!?

固唾を飲んで、その綺麗な色の唇が開くのを待つ。

そしてーー





「うーん………骨?」





……………どうしろと。

……ていうか私の骨の、どこがどう好きだって言うの……



私は思いきり、途方に暮れた。



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