01 終焉の始まり
初めてローファンタジー系を書きました。
気長に書いていこうと思います。
楽しんで頂けたら幸いです。
20✕✕年 12月25日
町中がクリスマスカラー一色に染まる中、突然それは起こったーーーー。
今年最後の講義が終了の時間を迎えたのだが、チャイムが鳴る気配をまるで感じない。
本来なら、講義の終了を知らせるチャイムが聞こえるはずなのだが、学生たちの悲鳴しか聞こえない。
いや、そもそもチャイムが鳴っているのかも怪しいところだ。
鳴らしたところで特に何の意味もないと思っているから、主電源をわざと落としたのだろう。
何故なら、俺ーー内宮陽太郎を含む日本在住の人々の運命はすでに決まっていると言っても過言ではないのだから。
本日を以て、日本文明はーーーー『滅び』を迎える。
誰も望んで日本文明の滅びを受け入れたわけではない。
では、どうしてこんな運命に陥ってしまったのか。
飛び交う怒号と悲鳴を同時に耳にしながら、悲痛極まりない現実を噛みしめることにした。
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今日の予定、特になし。
クリスマスだからと言って特別な予定があるわけでもない。
端的に言うと、俺には彼女がいないのだ。
存在しない『彼女』という概念を具現化するなら、俺の彼女はゲームの中のヒロインと言えるだろう。
まあそんな話はさておき、彼女とクリスマスデートするだけが特別な予定だと定義づけるのはどこか的外れな気がする。
リアル彼女のいない俺が言っても、ただの負け犬の遠吠えにしか聞こえないだろうが、クリスマスに彼女と過ごすだけが特別な予定とは言わないと思う。
オンライン・ゲームで知り合ったフレンドとクリスマス限定イベントを周回するのも特別な予定と定義されるのではないだろうか?
他大学のせいで疎遠になってしまっていた高校の同期と久しぶりに遊ぶ約束をするのもそうではないのだろうか?
だからこそ、『クリぼっち』という言葉は聞き捨てならない。
別にぼっちでもないし、予定が全くないわけでもない。
俺にだってこの後特別な予定がある。
ーーそう、講義課題の山を片付けるという特別な予定があるのだ。
今となっては『塵も積もれば山となる』という言葉の意味もよく理解できる。
ゲームがしたいがために後回しにしてきた課題が山のように溜まっていた。
完全な自業自得なのだが、二次元彼女とクリスマスデートするためには山を撤去しなければならない。
しかし勉強嫌いな俺にとって、それは地獄の作業だ。
今すぐにでも逃げ出したいところだが、逃げ出せば当然単位はもらえない。
つまり、逃げ出すことは許されないというわけだ。
軽くうつ状態になりながら地理学の講義を聞き流すように聞いていると、突然天井に備え付けられていたスピーカーがガサガサと音を立て始めた。
ーー・・・スピーカートラブルか?
マイクを使っていた講師も当然のようにその異変に気が付き、スピーカーの音量調節器具などをいじっているようだが改善には至ってない。
恐らくは、配線の問題かスピーカーに内蔵されている部品の劣化が原因なのだろう。
講義時間も刻一刻と迫っているため、講師はマイクなしで講義を進めるよう方針を取ると、嫌がらせでもしているかのように突如スピーカーからガサガサ音が消えた。
いや、正確には最初から壊れていなかったのだ。
操作権限が各教室からコントロール室へと移行しただけのようだった。
しかし、その行為に一体何の意味があるのか?
学園全体のコントロール権限を意図的に所有した者が慌てた様子で放った言葉を、俺は戯言のように簡単に受け流すことができなかった。
「緊急! 日本全域規模の巨大隕石が落下しているとの情報が入りました! 生徒の皆さんは至急『地下図書庫』へと避難を開始してください! 繰り返します、日本全域規模のーーーー」
その緊急アナウンスだけが学園全体に響き渡る。
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