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41.お出かけ①

前回、週一更新に戻れる的な事を書きましたが、寝違えやら何やらでまたもや更新があいてしまいました。

申し訳ない。

ストーリー全然進んでいませんが、読んでやってください。

 ヴァシェーヌ国の三区(?)にある高級宿屋の一室にて、黒衣の騎士様と薔薇の花を片していると、部屋の扉がノックされた。

 レオナルド様に視線で隠れるように指示をされ、私は花束を抱えたまま隣の部屋へ隠れると、そっと扉に顔を近付けて耳をそばだてた。

 人の話し声が聞こえたと思ったら扉が開かれた。


「出て来て大丈夫だ」


 薔薇の花束を寝室に備え付けられたテーブルに下し部屋から出ると、見覚えのある男性二人が立っていた。

 一人は筋肉こそ最強の武器と言った感じの不愛想な巨漢さんで、もう一人は人懐っこい笑顔を浮かべた細マッチョさん。

 確か救援隊の<望み挑む者>のギルフォードさんの知り合いだったかな?

 二人は私の前へやってくると背筋を伸ばし手を胸に当てて騎士の礼のポーズを取った。


「この度、アゼリア様の護衛を仰せつかりました、第二騎士団所属下級騎士ガロスです」

「同じく下級騎士のユエンです」

()()()の、アゼリアです」


 私が何者であるかを正確かつ明瞭に伝えるべく鍛冶師の部分を強調すると、案の定二人は困惑顔となった。


「鍛冶師……?」

「はい。鍛冶師です」


 仏頂面のガロスさんに笑顔で肯定すると、ユエンさんが目をパチパチと瞬かせた。


「えっと、から揚げの人ですよね?」


 から揚げの人――。

 間違いじゃないけど……。


「カフェは副業で本業は鍛冶師なんです」


 二人はか顔を見合わせると、答えを求めるようにレオナルド様を見た。


「アゼリアは鍛冶師だ」


 無表情かつ硬い声でそう言われ、二人は再び顔を見合わせると、勢いよく私の方へ向き直った。


「あのっ、本業が鍛冶師で副業がカフェって事は、本業が忙しくなったら副業は無しになるのだろうか?」

「違いますよね? 兼業ですよね?」


 酷く焦った様子でそう聞かれ、私は答えられなかった。

 正直に言って、サクリ村では武器防具の需要は殆ど無く、鍛冶師としての仕事は飲食店に卸す鉄板や型の作成だったり、農具を作る位で年に何回かしか売れなかった。

 鍛冶屋のメインは雑貨コーナーに置かれたマルマール様お手製の魔道具や薬類。旅の先々で買い付けた珍し物だ。それであっても毎日客が来る事もなく暇だった。

 だからこそカフェを問題無く営業する事ができたのだが……。

 ここは商業国家。武器防具は普通に売れるし、修理依頼だってあるだろう。

 鍛冶の仕事が忙しい!!

 なんて状態が想像つかないけれど、そうなった場合、カフェを運営できるだろうか?

 そんな事を考えていると、ガロスさんが眉間の皴を深め熱く言い放った。


「毎日とは言わない。週四、いや、三でいい。飲食店をやってくれないだろうか?」

「できれば四で! 四でお願いします!」


 週四かぁ。

 それなら何とかなるかなぁ……。

 いやいや、待て待て。

 本業の鍛冶屋が二日で副業のカフェが四日じゃあおかしいでしょ。

 せめて逆にするとか、どっちも三日ずつにするとかしないと……。


「人手が要る様なら知り合いに声をかけるが?」

「物件なら知り合いを紹介しますよ?」

「いや、その……」

「先立つものが無いようなら、騎士館の食事係として働くという手もあるが、どうだろうか?」

「それ! いいですね。騎士館なら武器や防具の修理依頼も受けられますし、一石二鳥じゃないですか」

「街で下働きするよりずっと給料は高いし、固定制だ。支払いの遅れなどもないし、休みもちゃんと取れる」

「街の飲食店と違い、変なのに絡まれる心配もないですしね」

「どうだろうか?」

「どうですか?」


 二人とも随分と前のめり気味に勧めてくれているが、残念ながら私は城やそれに関係する場所へは近付いてはいけないという鉄の約束があるのだ。


「すみません。騎士館で働くというのはちょっと……」

「なら、店を出すという方向で!」

「できれば配達とかあると嬉しいです!」

「ええっと、その……」


 二人の勢いにしどろもどろとなっていると、静かな声が割って入った。


「お前らいい加減にしろ。アゼリアが困っているだろう」


 すると二人はレオナルド様に駆け寄りこそこそと話し始めた。


「団長! 団長も一緒に説得して下さい」

「団長の本気、見せて下さい!」

「本気? 何だそれは?」

「黒き死神が本気を出せば、老若男女関係なく首を縦に振ると聞いています」

「第二騎士団の生ける伝説の力を見せて下さい!」


 小声で話してはいるが、距離が距離なので全部聞こえていますよ?

 てか、団長の本気って何だろう。脅して『うん』と言わせる的な感じかな?


「大方、フェリックス様の戯れでも聞いたのだろう」

「いえ、フェリックス様ではなく……」

「なら誰だ?」

「その…第二騎士団の方々が……」

「ほう。その方々は他に何か言っていたか?」


 目を逸らし、言い淀むガロスさんにレオナルド様は鋭い眼光で睨み付け、圧をかける。


「いいから言え」

「はい。その……無駄に整った……」

「何?」

「いえ。団長の見目麗しいお姿を最大限に活用して欲しいとの事でした」


 言い終えたガロスさんを一睨みすると今度はユエンを睨んだ。


「お前は?」

「あーー自分が聞いたのは、壁へ対象者を追い詰め、対象者の顔の側の壁を叩き威嚇後、捕食者の如く対象者を見下ろし……」


 ユエンさんはジャケットのポケットへ手を入れ、抜き出すと、手の平を盗み見るようにして続けた。


「『お前の作った料理が食べたい。勿論一番食べたいのはお前自身だ』と、囁くようにと……」


 短い付き合いだが、レオナルド様が言いそうにないセリフにその姿を想像し、吹き出しそうになった。

 鼻から「グフッ」と音を漏らすと、レオナルド様に睨まれた。

 駄目よ。

 駄目駄目。

 笑っちゃ駄目!

 頑張れ私の表情筋! そして腹筋!


「ユエン。手の平に隠している物を出せ」


 ユエンさんは手の中に隠し持っていたメモ用紙を差し出すと、レオナルド様はそれを奪う様に受け取った。


「この字の書き癖は……」


 グシャリとリスト表を握りつぶし、


「あいつら、帰ったら特別強化メニュー漬けにしてやる」


 不穏な言葉を呟くと、


「お前等もだ」


 と、二人に悲しいお知らせをした。







 一瞬にして疲労感漂う表情となった二人は、


「命令に従っただけなのに……」

「頼まれただけなのに、とんだとばっちりだ」


 と、零した。

 聞けば、ガロスさんとユエンさんは平民出身の元冒険者で第二騎士団に入って日が浅いらしい。それ故に階級が低く上位騎士に()()()をされると、従わざるを得ないのだそうだ。


「先程は失礼しました。どうあってもヴァシェーヌ国でアゼリア様の店をオープンさせるように言われていたので、気が逸りました」


 仏頂面ではあるものの丁寧に謝罪してくれるガロスさんに、


「上からの命令じゃ仕方ないですよ」


 と、返し。


「まあ、俺たち自身が食べたいと言うのもあったんですけどね」


 軽い口調で本音を漏らすユエンさんに、


「そこまで料理を気に入って頂けて嬉しいです」


 と、答え。


「ところで、これは何でしょうか?」


 足元に置かれた箱や紙袋を見下ろした。


「開けてみて下さい」


 何だろう。

 開けるのちょっと怖い。

 笑顔を張り付けたまま躊躇っていると、ガロスさんから再度開けるように促された。

 先程、レオナルド様から渡された腕輪以上の物は出ないだろうと覚悟を決めて縦長の箱を開ければ、栗色の長い髪のかつらが現れた。


「街は黒髪の聖女の話で持ち切りなので、黒い髪は隠した方がいいだろうと団長に言われ、よくある髪色を選びました」


 隣に置かれた同型の箱を開けると今度は金色のかつらが現れた。


「栗色が気に入らなかった時の為に用意しました」


 心使いは嬉しいが、私の眉毛は黒いので金髪のかつらを被ったらおかしな事になってしまう。

 金色のかつらの箱を閉めて隣に置かれた紙袋を開けると、ブラウスとスカートが入っていた。


「あの、服なら自分のがありますが……?」


 私の言葉にガロスさんは困ったように眉を寄せ、ユエンさんは頬を掻きながら答えた。


「アゼリア様の服はとても美しく洗練されたデザインなんですが、ヴァシェーヌ国では見かけない物なので、人目を引く恐れがあるんですよ」


 確か、服は地域の文化や社会、宗教などで全く違った発展を遂げるものだとリッカ母さんが言っていた気がする。

 同じ国であっでも都心と田舎では着ている物が違うのだから、他国となれば尚更だろう。

 いくつもの紙袋の中から一番質素な服を選んでいると、静かな声が落とされた。


「まだ着替えていなかったのか」


 顔を上げると紫がかった黒色長髪のかつらを被り、漆黒の騎士服から砕けた感じの私服へと着替えたレオナルド様の姿があった。


「どうしたんですか、その恰好?」

「黒い死神と呼ばれる騎士が側に居たら、お前の正体を勘繰られるだろう」


 なるほど。それでわざわざ変装してくれたのか。


「お前も早く着替えて来い」


 どの服にするか決めかねていたのだが、迷っている時間は無いようなので最後に開けた袋を持って寝室へ入った。

 早く着替えろと言うのだからこの後に何か予定があるのかもしれないと、袋から黒色のワンピースを取り出して急いで着替え、栗色のかつらを被り、鏡で全身をチェックすると勢いよく寝室の扉を開けた。


「着替えました!」


 大声で報告したからか、勢いよく扉を開いたからか、三人は驚きの表情でこちらを見た。


「早いな」

「早くと言われましたので、急ぎました。それでこの後の予定は? 何処に行くのでしょうか?」

「それはどちらかと言うと、俺の方が聞きたいのだが……」


 うん?


「何か予定があるんじゃ……」

「結婚の申し込みが受け入れられていたなら、色々と行く場所があったんだがな……」


 ギャー!!

 何でその件をばらすの!


「「けっこん?」」


 思いがけない言葉の登場に首を傾げるガロスさんとユエンさんに、私は慌てて説明をした。


「あーー。あの、けっ、けぇ……()()な量の注文を頂いたんですが、ちょっと材料が足りなくて断ったんです。ね?」


 話を合わせるように目で訴えるが、レオナルド様は怪訝そうな顔をするだけで『うん』とは言ってくれない。


「ですよね!」


 声と目の圧を強めに訴えると、漸くレオナルド様は「ああ」と合わせてくれた。

 結婚と結構。

 かなり苦しいすげ替えだけど、昨日今日知り合った鍛冶師に騎士団長が結婚を申し込むなんて、普通はあり得ない。だからだろう。


「注文?」

「何のですか?」


 納得してくれた。


「……カレーです」


 カレーが作れないのは問題だと、二人は足りない材料を手に入れると申し出てくれたが、丁重にお断りして話を戻した。


「予定が無いのに、何で着替えたんですか?」

「ヴァシェーヌに着いたんだ。色々見たいものがあるんじゃないかと思ってな」


 確かにトランクの中にずっと入ったままだったから、いい加減外に出たい。


「行きたいところがあれば言ってくれ。案内をする」


 行きたいところ。

 たくさんあり過ぎて何処から行くか、迷う。

 う~ん。


「取り合えず外に出て、三区がどんなところか見てみたいです」

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