32.更に十人分追加
折角の三連休なので、連続投稿を狙って昨日書いて、今日訂正してそのままの投稿です。
日にちを空けてから読み返すをしていないので、後日色々訂正するかも知れませんが、宜しくお願いします。
案内役の騎士団員四名と存在感有り余る十名の冒険者達の背中を見送りながら、レオナルド様にそっと確認する。
「えっと、今の方達が救援隊ですか?」
「ああ。首都ドローワのギルドに所属している<望み挑む者>と言うパーティだ。やかましい連中だが、実力は確かだ」
リッカ母さん曰く、冒険者とは暴力愛好家の別称だとか。
母から聞いた冒険譚に出てくる冒険者も好戦的な人が多かったので、私の冒険者に対するイメージは戦いに飢えた見た目も雰囲気も『怖い』だったのだが、実際に見た印象は『優しそう』だった。
<望み挑む者>の人達が特別なのか、母の冒険譚が極端だったのか分からないが、ちょっと残念な気持ちになっているのは何でだろうか?
それはそうと。
「救援隊にしては武器以外の荷物が殆どなかったですね。てっきり食料やポーション等を山ほど持って来ると思っていました」
「持っては来ているだろう」
「何処にです?」
「確か、魔法使いが異空間収納を持っていたはずだ」
なるほどと、頷いていると恨めし気な声が背後から聞こえた。
「アゼリアよ。我は何時までこの状態でいればいいのだ?」
いけない。忘れてた!
慌てて強制命令を解くと、霽月はストレスを解消させるためか、欠伸をした。そしてジトっと私を睨んだ。
「霽月ごめんね」
フンと顔を背ける霽月の横顔に魔法の言葉。お肉を唱える。
「今日の朝ご飯は霽月の大好きなレッドボアの角煮だよ。それにステーキ山盛りに用意しているよ」
魔法の言葉の威力は絶大だ。
尻尾がゆっくりと左右に振れた。
「今すぐに持って来るから待っていてね。レオナルド様、岡持ちを取りに行きましょう」
レオナルド様と共にカフェ【猫のしっぽ】に戻り、テーブルに置いたままになっていた岡持ちを持って霽月の元へ戻った。
少し時間が経ってしまったけど、まだまだ温かいお肉のお皿を並べると、食に貪欲な魔獣は勢いよく食い付いた。
尻尾が引き千切れんばかりに振れている。機嫌はすっかり良くなったようだ。
良かった。良かった。と、団員さん達の朝ご飯の支度に取り掛かろうと天幕へ歩いて行けば、結界の方からオムとアールシュ。そして名前は分からないが、ウサギ耳の獣人二人が走って来た。
「レオナルド様。アゼリア様」
「何だオム?」
「どうかしましたか?」
「手が空きましたので、朝食のお手伝いに来ました」
何て素晴らしいタイミングだ。
「有難う御座います。それでは何時ものように食器からお願いします」
「「「「はい」」」」
元気いっぱいの返事の四人を天幕前に待機させ、私とレオナルド様でカフェ【猫のしっぽ】から物を運び出して行くと、オムとアールシュ。そしてウサギ耳の二人が次々に結界へ黙々と運んで行く。
食器、ドレッシング、サラダ、おひたしが天幕前から運ばれ、次は米釜だと運び出していると魔法使いのハリソンさんがやって来た。
「レオナルド団長。お疲れ様です」
レオナルド様に礼をすると、ハリソンさんはすぐさま私に向き直った。
「アゼリア様。少し宜しいですか?」
「はい。何でしょう?」
「朝食なのですが、余裕はどれ程ありますでしょうか?」
「余裕ですか? だいぶ多めに作りましたが、何でそんな事を聞くんです?」
「実は先程の救援隊から救援物資を受け取ったのですが、干し肉とパンを見て、団員達がこの世の終わりの様な顔をして……。かく言う私も天を仰いだ一人ですが。それを見て<望み挑む者>達が不思議に思い、団員に訳を聞いたのです」
「はあ?」
「団員達から語られるアゼリア様の料理を聞き、<望み挑む者>達が是非とも自分達も食べてみたいと言いだしまして……」
「なるほど」
「十人分を追加で大丈夫ですか?」
十人。人数的にはそうだが、恐らく団員の皆さんと同じくらい食べるはずだ。
つまり、三十人分。
全員がカレーとから揚げのセットを。もしくは肉じゃがとおひたしのセットを食べてもいいように作ってあるし、味噌汁は一人一杯と制限をかければ問題ない。が……。
「おかずは大丈夫だと思いますが、ご飯が足りなくなるかも知れません。カレーは途中からうどんで食べて貰う事になりますが、いいですか?」
「勿論です。うどんで食べるカレーも美味しいですから、全然問題ありません」
ほっと胸を撫で下ろすハリソンさんに朝食メニューの説明をし、折角だからと米釜四つを魔法の絨毯で運んで貰う事にした。
絨毯に乗せられるだけ物を乗せ、結界へ送り出すと、入れ替わりでオムとアールシュが戻って来た。
事の次第を説明し、獣人さん達の朝ご飯がうどんになるかもしれないと伝えると、二人は困ったように微笑んだ。
「我々奴隷の事は気にしないで下さい」
「聖女様がお優しいのは分かりますが、普通でいいです」
普通とは一体?
二人の言葉の意味が分からず、助けを求めるようにレオナルド様を見ると、小さな溜息を零された。
「第二騎士団では奴隷も団員と同じ扱いをしているが、通常奴隷は人として扱われない。食事は残飯がもらえればいい方で、腐った物や水しか与えられない事もよくある」
「そんな酷い」
「まともな物を食べられるだけで幸せ。団員と同じものを用意できないからといって謝らなくていいと二人は言いたいんだ」
サクリ村から出た事がない私には奴隷がどういうものか、正直分からない。
人を人として扱わない事が、世界にとって当たり前で普通の事だとしても、私には受け入れがたい。
それに受注先から料理を別にして欲しいと言われているならまだしも一緒でいいと言われているのに、同じものが用意できないのは敗北以外のなにものでもない気がする。
同じものが用意できない時はプラスアルファを付ける。
それが客商売のセオリー!
「分かりました。同じものを用意できない分。皆さんのうどんは肉大盛りにしますね!」
鼻息荒く告げると、三人は驚いたような顔になり、その後小さく笑ったのだった。
作り置きしておいた物を全て運び出し、レオナルド様と共にカフェ【猫のしっぽ】に戻ると、フェリックス様にリクエストされたお子様ランチの制作に取り掛かった。
大皿を三枚用意し、下準備しておいたから揚げ用の肉とエビフライをフライヤーに投入すると解凍済みのハンバーグとポテトとソーセージを鉄板で焼く。その間に二階の自宅キッチンから持って来た炊飯釜から三合のご飯を取り出し、ケチャップライスを炒める。
炒め終わったご飯を茶碗を使い半球体に盛り付け、爪楊枝と紙で作った旗を刺した。
大人なのだから旗は不要だろうと刺す予定ではなかったのだが、レオナルド様にメニュー表と同じにして欲しいと頼まれたので、急遽ヴァシェーヌ国の国旗を作る事となり、ヴァシェーヌ国に疎い私に代わって、レオナルド様に国旗を書いてもらった次第だ。
性格が滲み出る細部まで書き込まれた国旗。
それを掲げる一合のケチャップライスの山は大皿の手前左端を占領し、その隣にはハンバーグ、焼きポテト、ソーセージと並び、ケチャップライスの裏には千切りキャベツの山を作り、エビフライとから揚げを並べ、その隣に夜のうちに作っておいたプリンを容器ごと置いた。
「大人用お子様ランチ完成!」
「何と言うか、圧巻だな」
「お子様ランチは色々乗っていて、目に楽しいですからね」
「確かに。だが、何で三皿も作ったのだ?」
怪訝な表情を浮かべるレオナルド様に一皿手渡す。
「一皿はレオナルド様の分です」
「俺に?」
「よかったらそこのテーブルで食べて下さい」
「だが、運び出しの手伝いが……」
「今日はから揚げだけですから、食べてて貰って大丈夫ですよ」
生真面目な騎士さんにそう告げると、どうしたものかと逡巡したみたいだが、目の前のお子様ランチの魅力に負けたらしく無言のままカフェのテーブルへ大皿を運んで行った。
料理ではなく私に向かい「頂きます」と手を合わせるレオナルド様の姿に嬉しいような、恥ずかしいような、変な気持ちになる。
「召し上がれ」
そう返した直後。スペシャル特典の存在を思い出し、慌ててレオナルド様へ近寄った。
「レッドボアの角煮です。キッチンスタッフの特典ですので、皆さんには内緒でお願いしますね」
角煮の入った小鉢をテーブルに置くと、レオナルド様は直ぐにそれを食べた。
「臭みが強いレッドボアの肉がこんなにも甘くなるなんて。お前は凄い料理人だな」
「母のレシピをそのままに作っているだけですけどね」
「再現できるのが、既に凄い事だろう」
「そう……ですかね?」
「ああ。餃子にから揚げ。スープパスタ、カレー、角煮、どれも本当に美味しかった。俺が知る中でお前は一番の料理人だ」
サクリ村ではリッカ母さんの味を恋しがる人が多く、レシピ通りに作っても「何か違う」と言われる事があるので、肯定して貰える事がこんなにも嬉しいとは……。
ちょっと泣きそう。
「有難う御座います」
じわっと溢れ出そうになる涙を誤魔化すように瞬きを繰り返し、レオナルド様に背を向けるとそのままキッチンへ戻った。
岡持ちにお子様ランチのお皿二枚を入れて、階段へ向かうと声がかけられた。
「もう一枚は誰の分だ?」
「お子様ランチですか? ローレン様です。フェリックス様だけ違う物を食べるとなると、フェリックス様の物をローレン様が毒味をするんですよね? 一口とはいえ、人が食べたお子様ランチって寂しいかなって思ってローレン様の分も用意しました」
「毒味をするのはローレン殿ではないが、同じものを食べた方が蟠りがなくていいかも知れないな」
ん?
天幕で一緒に食べていると聞いたので、てっきりそうだと思っていたんだけど……。
普通に考えたら、偉い人が毒味なんかしないか。
「ええっと。とりあえず外で待機してくれているオムに渡してきますね」
あははっと、勘違いを笑って誤魔化し、外へ続く階段を上った。
アゼリアが<望み挑む者>を見てがっかりしたのは、日本にはいまだに武士がいると信じている外国人が日本に来て現実を目の当たりにしてしょぼんとするのと同じ感じです(笑)
母の話に出てくる感じの冒険者を期待していたのです。




