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1.英雄? の帰還

令和投稿です(何それ?)


何時も男の主人公ばかり書いており、女子の口調が分からなくなっているので「おや?」ってところがあれば脳内で適当に変換しておいて下さい。すいません。

『五百万クレ貯まったら戻ってくる。だからそれまで俺の事を待っていてくれ』


 そう言って、ダンジョンへ魔物狩に出かけた婚約者のトッドが三年の歳月を経て、村へ帰って来た。

 帰って来たのだが……。


「小さいとは言え、ダンジョン一つ攻略しちゃって。俺ってば、英雄って呼ばれるようになっちまってさ~」


 装いは派手。しゃべり方は軽薄に。

 しかも、胸の大きな美女の肩を抱いていた。

 村の中心部にある商店街。四方の通りを結ぶように設けられた広場にて、謳うように自身の武勇伝を語っているのは本当にトッドなのだろうかと、己の目を疑いながら人だかりに近寄る。

 村を出る前に比べ精悍な顔つきになってはいるが、光りを集めたような金色の髪に翡翠の瞳は記憶の中のトッドそのままだ。

 だというのに、別人に見えるのは服装の所為か、話し方の所為か……。

 声高らかな自慢話を黙って聞いていると、何度となくトッドと目が合ったが、私を無視するように視線を外し、トッドは話を続けた。

 永遠に続くかと思われた英雄伝が漸く終わりトッドに近寄ろうとするも、英雄伝に興奮した人々がトッドを取り囲み矢継ぎ早に質問を始めた。

 これは当分解放されないだろう。

 今日の今日で王都に戻る事はないはず。村人達の興奮が冷めた頃にでも話をすればいいと、賑わう人の輪から離れ、村はずれにある自宅件鍛冶屋へと帰った。







 トッドが帰って来た実感が得られないまま、ぼんやりと店内の掃除をしていると、鍛冶屋【猫のひげ】と書かれた扉は開かれた。


「相変わらずしみったれた店だな」


 いきなりの暴言に顔を引き攣らせる私を余所に、トッドは片腕に巨乳美女をぶら下げたまま無遠慮に店に入ってきた。

 嘲るような目で店内を見渡すトッドに一言言ってやろうかと口を開くが、くすりと嘲笑する声にそちらを見れば、巨乳美女は何故か勝ち誇った顔で私を見ていた。

 えっと……。

 どちら様ですか?


「忙しくて、全然連絡できなくて悪かったなアゼリア」


 言葉とは裏腹にトッドの顔は全く悪びれていない。

 それどころか、ニヤニヤ薄ら笑いを浮かべている。


「さっき、広場でも話したんだけどよぉ。俺ってばダンジョン攻略者になってさ。王都では英雄アルフリードって呼ばれているんだ」

「……アルフリード?」


 あんたの名前、サクリ村のトッドでしょ?

 そんな私の疑問に答えるようにトッドは続けた。


「トッドって垢抜けない名前だろ? だから、英雄に相応しい名前に改名した訳よ」


 何がアルフリードだ!

 愛情を込めて名付けてくれた両親に謝れ!


「それでさぁ~。英雄の俺と片田舎の鍛冶職人であるお前じゃあ、釣り合いが取れないと思う訳よ」


 続く言葉は容易に想像が付く。と言うか、美女を同伴して店に来た時点でおおよその展開が想像付くけど。


「お前との婚約解消って事で、ヨロシク」


 実際に言われると、ダメージ喰らう……。

 ってか、婚約解消だと言うのに、軽過ぎない!?


「で、こっからが本題なんだけどさ~」


 婚約解消が次いでかよ!


「これ、直してくんない?」


 差し出されたのは、私がトッドの為に打った剣だった。


「王都で直して貰おうとしたんだけど、無理って言われてさ~」


 当たり前だ。

 この剣は特殊な材料を使い。特別な魔法効果を織り込み打ったものだ。

 私以外の人間に修理など出来る訳がない。


「王都で色々な剣を試したけど、これが一番しっくりくるって言うか。切れ味いいんだよな~。お前、女としてはパッとしないけど、鍛冶師としての腕はいいのな」


 押し付けるようにして渡された剣を胸に抱き、心の中で呟く。


『秘儀。武器破壊!』


 積み木細工の如く粉粉になった剣を見て、トッドは慌てふためいた。


「なっ! なっ! なっ!」

「あらあら。この剣。既に限界を超えていたみたいね」


 満面の笑みの私に対して、顔を真っ赤にし怒り狂うトッド。


「お前! 何してくれてんだ! 今直ぐ直せ!」

「丁度いいじゃない。女を新しくしたみたいに、武器も新しくしたら?」


 嫌味で応戦するが、頭に血が上った自称英雄はそれに気付かずに、苛立たしげにテーブルを叩いた。


「ふざけるな! この剣はダンジョンマスターを討ち取った記念の剣なんだぞ!」

「思い出にしがみ付くなんて、英雄様には似合わないわ。それにここまで砕け散ったものを直すなんて出来ないわよ」


 嘘。

 本当は出来るけどね。


「なら新しい剣を寄越せ!」

「あらあら。英雄様にはこんな片田舎のパッとしない女が打った剣よりも、王都の有名店で売られている剣の方がお似合いではなくて?」

「俺はお前の剣が……」

「分からない人ね。あんたに売る物なんか、うちの店にはないのよ! 分かったらさっさと出て行って!」


 困った客を強制排除する為に仕掛けられた魔法発動のボタンを押すと、元婚約者とその連れは店外へ吹き飛んだ。

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