08話
日常
それは、常日頃普段から送っている変わらない日々のことをいうが、俺の日常には常日頃普段からある珍獣が引っ付いている。
その珍獣は朝起きた時には必ず体のどこに引っ付いていて、体には小さな手形の痣あざが付いている時がある。
それ故、体の血流が滞とどこおり寝起きは体が重い。特にある珍獣が背中に抱き付いた時は起き上がるのに苦労する。
昼間に俺は山を走ることで足腰と体感を鍛えるが、ある珍獣が歩幅を合わせて走るから全力で走ることは出来ず物足りなさを感じる。そして、山では山菜や木の実など採取するが、ある珍獣がたまに毒草を間違って採ってくる。間違って食ったら下痢ではすまない。
夜は、その珍獣と一緒に飯などを食べた後、その生物と一緒にテレビを見たり一晩中ゲームに付き合わされたりして寝不足になって朝を迎える。
そんな、ある日。
家に変わった来客が来ていたようだ。
「黒夢、今日とても可愛いお客さんが来たのよ。」
山釣りから帰ってきたら母さんが、なぜか巻物を持っている。
「この匂い、猫が来たのか。」
「そうそう、可愛い猫耳の女の子がこれを黒夢殿に渡してくれて。」
「可愛い猫耳の女の子て、村雨って言う子?」
「そうよ、黒夢には可愛い知り合いが居るのね。」
俺は母さんから受け取った巻物まきものを見ると【翌日の昼日中ひるひなかに紫苑を連れて住吉神社に来い。 もしも来なかったらわしが首を刎ねに来るから好きな方を選べ。】
「いつから、こんなにモテモテになったの。これ完全に恋文でしょう。」
「いや、モテて無いから。」
「行くな、殺されるぞ黒夢!」
「そうだな......今日の晩飯は、アマゴの塩焼きにするか。」
俺は今日釣った魚の調理法を考えることに集中する。
明日のことを考えると不安しかないが、何とかなるだろう。
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ということで、やって来ました住吉神社に。
神社には多くの参拝客で溢れかえっているな。
「黒夢、出店に上手そうなものがたくさんあるぞ。」
「昼なのにもう屋台が出ているのか。」
住吉神社は小さな港町にしては立派な神社で、この町のちょっとした観光名所になっている。
昔はそれほど賑わっていなかったけど、どこかの番組で強力なパワースポットとして紹介されて一気に参拝者が増えて、何故か神社で飼われている大量の猫の中でハート模様がある猫を見ると幸運が訪れると言う噂が広まり、さらに観光客が増えた。
「白坂さん、ここに居ましたか。」
「うぅ、この声はあの巫女か。」
褐色の巫女こと、多川凪沙さんがこっちに来る。
そして、参拝者の視線もこっちに来る。
褐色の巫女て目立つよな。
「遅いぞ人間。」
気付くと頭に乗っているサビ猫。
重いし爪が頭皮に食い込む。
そして、サビ猫を見ていた観光客が写真を撮ってくる。
「村雨、近頃お前の写真を待ち受けにするのが流行っているようだぞ。」
「御託はいいからすぐに付いて来い。」
「ちょっと待てよ。」
村雨は声を荒げて人混みを瞬く間に駆けていく。
俺と紫苑はも人混みを走るが紫苑はあちらこちら気を取られて、よく人にぶつかりそうになる。
「黒夢、あそこに母上がいるぞ。」
「え?」
紫苑が指差す方を見ると、木の後ろから顔半分を覗かせる母上もといい母さんがいた。
その手にはカメラ怪しく光っていた。
「白坂さん、おのちゃんが待ってますよ。」
「え! おのちゃんて、あの土地神のおのちゃん。」
「うん、そうだよ。」
多川さんに背中を押されながら建物の中に入る。
その時、俺の手は紫苑を掴んでいなかった。
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海岸が一望できることが名物の住吉神社の本堂の
晩夏の生温い風と共に1人の少女が入ってくる。
「久しぶりだな、青筒男命。」
「土足で人の家に入るのは無礼だな狐。」
薄手の着物を着た大柄の男が少女に嫌味を言う。
「何が目的だ。」
「俺は何も企んではない、お前の方こそ何かあってここに来たのだろう。」
「私はただ、お前に大切な物を奪われたくは無いだけだ!」
少女は手から紫色の炎を男に向かって放つが、男は結界を生み出して炎を防ぐ。
「記憶を燃やす狐火か、昔と比べて弱くなっているな。」
「全て塵として消してやる。」
少女は人身の肉体を燃やし、火の勢いを上げて男に飛び掛る。
「自らの神格を燃やしての攻撃、ここまで愚直だと哀れだな。」
「!?」
男は強風を生み出して、少女を炎もろとも吹き飛ばす。
そして、壁に叩き付けられた少女にさらに攻撃を仕掛ける。
「お前は昔から思い込みが激しい、大人しく眠れ。」
男は封印術を少女に放つ。
だが、何か金属がぶつかる音が本堂に響き。
少女は無傷で、前には古い鎖が宙を舞っている。
「オイ、ちょっといいか。」
「封印術を封じの鎖で相殺したのか。」
戸の前には腕に鎖を巻き付けている青年が立っており、青年の息は荒く冷や汗をかいている。
「お前が、おのちゃんか。」
「いかにも、俺がこの地を治めるおのちゃんだ。」
「そうか、話は大体聞いたが、」
青年は少女に駆け寄り、庇うように鎖を構える。
そして、膝をつき手をつき頭を下げる。
「うちの紫苑が失礼しました!」
青年は土下座した。
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「う? 黒夢。」
「起きたか。」
「! そうだ私はあの憎きアオツ、ッウ。」
「大丈夫か?」
舌を噛んだ紫苑を横目に俺はりんごアメを齧る。
どうやら、この様子ではまだ勘違いしているようだな。
「なぁ、紫苑。」
「黒夢! 私を慰めてくふぇ?」
俺を見た途端飛び付く紫苑の口にりんごアメを放り込む。
「ふろぅんん?」
「とりあえず人の話を聞け。」
コク、コク、
紫苑はりんごアメを齧りながら首を横に振る。
「まず、紫苑。 今日ここに呼び出されたのは紫苑が無害な存在か確かめるためで、別にお前を罠に嵌める為ではない。」
「ふぅん?」
「お前が無害な存在と分かれば、もう封じることはしないし、何かあった場合は力を貸すと言ってきているんだ。」
「ふおが! がはぁ がはぁ 、嘘だ。」
りんごアメを吐き出した紫苑が俺を睨み付ける。
その表情を見ていると誤解を解くのは難しそうだな。
「信じる信じないは勝手だが、紫苑。」
「黒夢、何だ?」
俺は頭を掻いて気持ちを落ち着かせるが、今から言う言葉は正直言いたくない。
紫苑がどういう反応するか分からないし、恥かしいが言うしかない。
「俺はお前を失いたくない、いつも道理に生活できればそれでいい。だから過去のことは忘れてくれ。」
「......うん、黒夢がそこまで言うならそうする。」
「そうか、じゃ紫苑。 お祭り行くぞ。」
俺は赤面した顔を隠して話を切り替える。
多分これで、問題は解決したはずだ。
「なぜ、急に祭りの話をするのだ?」
困惑する紫苑の手を引き外に出る。
外はもう暗くなっており、祭りの提灯と屋台の明かりが夜の神社を照らす。
人々が祭りを楽しむ中、ある女性が微笑みながら真っ直ぐコッチに来るが女の目はまったく笑ってない。
「黒夢、女の子を守ることが出来ないなんて、母親として恥かしいは、ちょっと来なさい。」
「母さん、自分は紫苑を守りきっただけど......怒っている?」
「黒夢、女の子は無傷で助けないと助けたことにはならないのよ。」
「いや、ごめんなさい母さん。」
「私に謝ってどうするの、紫苑ちゃんに謝りなさい。 そして私と紫苑ちゃんが満足するデートをして頂戴。」
浴衣姿の綺麗な女性が満面の笑みで俺の首根っこを握り、深い深い草陰に引きずり込む。
「母上、黒夢は悪くない私が悪いのだ。黒夢を許してくれ。」
いつもは頼りがいゼロの紫苑が、魔王に立ち向かう神々しい勇者に見える。
今、始めて紫苑を神様だと実感した気がする。
「そう、紫苑ちゃんも責任を感じているのなら、一緒に罰ゲームをやりましょう。」
「母さん、黒歴史にならない程度の罰ゲームにしてほしいです。」
紫苑の力を持ってしても、罰ゲームと言う。地獄の罪滅ぼしが無くなることはなかった。