06話
時計の針が午後の1時を向いているお昼時、海の家は水着や半袖など肌を露出している格好の観光客で溢れかえっているが、店の隅のテーブルには黒のフード,ニット帽の狐耳,巫女,猫耳クノ一。
コスプレしてはしゃぐ集団を装い、俺達は何とかその場を誤魔化しているが人の視線が痛い。
「私の家は神社をやってて、私は昔から霊を見ることが出来てよく家で祀っているおのちゃんとよくお喋りなどして遊んでいました。」
「あのう、おのちゃんって、この猫耳のこと。」
俺はそう言い、自分の隣にいる猫耳クノ一を指差す。
「その子の名前は村雨、村ちゃんと呼んでね。」
「ちゃん付けはしなくてもいい。」
「そうか、俺の名前は白坂です。」
「ぁ、私は多川凪沙、よろ、しく。」
ぎこちない挨拶をする褐色の巫女とこ多川凪沙さんから、コミュ障臭を感じる。
「で、おのちゃんて誰?」
「あ! それは、私の家で祀っている土地神様です。」
「おかわり!」
「焼きそば、二つください。」
猫耳クノ一いる反対方向の壁側にいる紫苑が三度目のおかわりをする。
ここの焼きそばは美味しいし、250円と安いから俺もおかわりする。
「人の話、聞いてますか?」
「うん、うん、そのおのちゃんが土地神ってことは分かったから、話の続きをして。」
「話の続きを話す前に1つ。 私も焼きそばを食べます!」
その後、焼きそばを食べながら、俺は多川さんの話を聞きた。
話は俺の質問と紫苑の食欲により、よく話が脱線したが話の内容は、多川さんは土地神から山に封じていた祟り神が何者かの手により解放されて、このままでは人々の大切な記憶が祟り神に奪われてしまうから山神を名乗る狐を見つけたら直ちに封じろと言われたそうだ。
「いや、確かに紫苑は昔に祟り神として勘違いされて封じられたらしいが、多分無害で無知な子供だぞ。」
「黒夢、私は子供ではないもう大人として子作りぃぃぃ痛い。」
青のり塗れになった頬を摘む。
公衆の場で卑猥なことを言うな。
「痛ぃいたぁ、ぁぁはぅ、はぅ はぅ 」
何故か嬉しがって、尻尾がバタバタと揺らす。
ドMか?
「もしかして、お二人は付き合っているんですか?」
「そうだ、私と黒夢は運命共同体だお前達などに私達の未来は奪えはしない。」
「はい、はい、一先ず落ち着こうな、顔が青のり塗れだぞ。」
お手拭を使って、紫苑の顔を拭く。
膝の上に座る紫苑は彼女と言うより子供に近い。
「自分は、うっかり封印を解いて紫苑の世話をすることになったが、紫苑は今まで人の記憶を消したことなんて無いし、本当に紫苑が記憶を奪える能力があるとは思えないな。」
「私は記憶を奪うことは出来ない、消すだけで特に何も出来ない無能じゃよ。」
少し紫苑はうつむき、悲しいそうな目をしている。
撫で撫でと頭を優しく撫でて慰める。
「でも、記憶を消すことが出来るんでしたら危険なので封印しますしかないです。」
「まて、まて、何でもかんでも危険だからという理由で拒絶するのはよくないぞ。 それに、封印してもまた解けるかもしれないし、封じるよりも仲良くやっていくほうが良いと自分は思うしそれに俺は納得しないぞ!」
俺は満席繁盛している海の家で叫ぶのであった。
店内は静まり返り客の大半が俺を見る。
店のスピーカから流れる陽気な音楽が虚しく流れる。
「その言葉に心打たれました、おのちゃんには私から説得します!!」
多川さんは、なぜか熱い涙を流し紫苑を封じることを先送りにしてくれた。
なんか良い人そうで良かった。
「少しでも問題を起こせば、儂がお前の首を刎ねてやるからな。」
「!」
村雨ちゃんが子声で脅しをかけられるが、ひとまず危機は去り。
神様のことを知っている人と知り合いを作ることが出来た。
「代金は全部で5750円になります。」
代金は全部俺が払うことになった。
安いからって頼みすぎたな。