05話
愛車の黒い原動機付自転車に酔い潰れた紫苑を乗せて、俺は紫苑を休ませるために商店街内はゲンチャリをゆっくり押して歩く。
商店街内では歩いた方が安全なので、どのみち徒歩で移動するけど。
母さんから預かった買い物メモには、三人分の食材が強調して書いてある。 母さんも紫苑も俺の独身生活に終止符を打とうしている。
もう、独身生活は諦めるしかないのか。
俺は、まだ22だぞ。
「いらしゃい! 今はサバが旬で美味しいよ!」
元気良く客寄せをする魚屋をスールして、向かいの花屋に行く。
お仏壇に飾る花を買うが、色んな花ガあって選ぶのに迷うが、ここは無難な菊の花を買う。
菊の花に手を伸ばすと、隣から小麦色の手が出てきて腕が当たる。
「あ、すみません。」
「いえ、こちらこそすみません。」
俺は咄嗟に腕を引っ込める。
隣を振り返ると、サビ猫を頭に乗せている肌が日にこんがり焼けている巫女さんがいた。
褐色肌の巫女とはレアだな。
「黒夢、その女は誰だ。」
「え、この気配は妖怪。」
自称神様のケモノミミ少女と紫苑を人目で異類と気付いた褐色の巫女。
そして、置いてきぼり食らう俺。
平凡な商店街で、普通ではない者同士が出合ったようだ。
「あのう、巫女さん、コイツが何だか分かるのか?」
「えっと妖怪ですか。」
「私は妖怪では無い、山神だ。」
「ぇ、山神様ですか。」
巫女さんは少し驚いているが、俺も紫苑が神様だとは信じられないのは同感だ。
「すみませんが巫女さん、神様について教えてください。」
「そうですね、お払いしないといけないでね。」
巫女さんは、どこからか御札を取り出して紫苑に近付き、御札を貼り付けようと手を伸ばす。
紫苑の隣にいた俺は褐色の腕を掴み、紫苑の鼻先直前に腕でを受け止める。
「くろ、む 。」
「何するんですか。」
「とりあえず場所変えませんか、人の迷惑になるから。」
俺はそう言い、背中に張り付き震える紫苑と戦闘態勢に入っている巫女さんの対応を考える。
「お客様どうかしましたか!?」
「何でもないです。」
「何でもないですよ。」
花屋の店員に話しかけられるが、俺と褐色の巫女は「何でもない」と言い誤魔化すが、商店街を行きかう人に注目されるのであった。
地元で問題を起こすとあっという間に知り合いに広がるから大変だな。
「ふぁ~~にゃ~~。」
気付くと、黒毛と赤毛が混ざった毛色の猫が俺の頭の上に乗り、あくびをしている。
何、この状況?
「あのう、場所を変えませんか?」
「ぁはい、そうですね。」
、
、、
、、、
夏休みが終わりに差し掛かっている時期の砂浜には、男女のカップルと家族連れが海と砂浜に溢れている。
そんな砂浜に、夏なのに黒いフードと黒い長ズボンを着こなし頭に猫を乗せる山派の俺と、巫女服に麦藁帽子と微妙な組み合わせの海派の海派女子高校生、そしてニット棒とぶかぶかのTシャツを着こなし三人の中では一番まともな格好の山派の狐耳少女。
俺達はこの砂浜で服装が孤島の如く浮いている。
しかも、笑われながら写真まで撮られる始末である。
「もう一度、場所を変えませんか?」
俺はこの状況に耐えられず、別の場所を変更することを巫女さんに提案する。
「ここは、霊を沈めるのに丁度良いんですよ。」
「そうか、ここの海は結構深いからな、コンクリート詰めにして沈めるのか。」
「え!、何ですかその怖い話。」
「違うのか。」
「黒夢、こんなヤツほっといて買い物の続きをするぞ。」
紫苑が何度も強く袖を強く引っ張る。
「そうだな、買い物続きがあるから、また今度なにか霊の事とかが知りたくなったら来ます。」
「黒夢、さっさとここから立ち去るぞ。」
「そうだな。」
俺は頭に乗っている猫を砂地に置いて、人の目から離れるために狭い路地に入り込む。
「ちょっと待って、まだお払いは終わってないわよ!」
「時間が出来次第、また別の場所で会いましょう。」
あの褐色肌の巫女さんは、前に近くの神社で見たことがあるから気がするから、何か謎の生物に知りたいことあったら神社を訪れればいいか。
「にゃ~~ん。」
路地を抜けて、ゲンチャリを止めた駐車場に到着すると見たことがあるサビ色の猫が俺の愛車の上に座っている。
その猫には、何か得体の知れないものを感じる。
「儂の妖気を感じ取れるほどの霊感は備えているようじゃな。」
「猫が喋っているけど、紫苑を知り合いか?」
「私に猫の知り合いなど居ないぞ。」
「はぁ、はぁ、 やっと追いついた。」
後ろの道から巫女さんがやって来る。
完全に囲まれた。 って、なんで俺は逃げているんだ?
「あのう、用件なら買い物が終わってからでいいですか。」
「逃げようとしても、無駄ですよ。」
「黒夢......。」
巫女さんが両手の指に数枚の御札を挟みコッチに歩み寄ってくる。
手を強く握り絞める紫苑は震えている。
「とりあえず話し合いませんか、戦うことは最終手段して話し合いましょう。」
「その口ぶりじゃ、戦うことも視野に入れていることじゃな。」
横を見ると、小刀を持つ猫耳のクノ一が紫苑に向かって刃物を突き刺そうとしている。
反射的に紫苑を抱き寄せて、体の軸を捻ってクノ一に後ろ蹴りを当てて吹き飛ばす。
「なかなかやるのぅ、武道を心得ていたか。」
クノ一は華麗にバク転して、直ぐに体制を立て直す。
「少女に刃物を突き刺すお前らの方が妖怪じゃないのか。」
「黒夢、私を置いて逃げろ! こいつらの目的は私だ。」
「そのようだが、逃げろて言うなら腕を放してから言え。」
紫苑が腕をガッチリ掴むから、二人を相手するのは難しい。
紫苑を入れれば二対二になるけど、紫苑は数には入れない。もしも紫苑が一緒に戦えば数秒で殺されるだろう。
「なぜ紫苑を狙う。目的は何だ。」
「私達の目的は封印が解けた祟り神を再封印することです。」
封印? いかにも陰陽師的なことだな。
陰陽師なんて詳しくはよく知らないけど。
「ちょっと、待った!。」
「何ですか?」
俺は二人向かって叫ぶ。
「お前ら、なぜこの子が祟り神と決め付ける。 決め付けるなら何か証拠を出して自分を納得させるてから封印でも何でもやってくれ。」
「そうですね、確かに何の説明も無しで攻撃するのは間違っていますね。」
「どうするのか凪沙。」
二人から放たれる殺意は弱まる。
何とか、話し合いに持ち込みれそうだな。
「では、説明しますので浜に行きましょう。」
「......ここで、説明してはいただきませんか。」
「いいえ、海辺で話します。」
ループって、恐い。