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03話 


 「これは、私がまだ子狐の時に私は人間に殺されたときに稲荷神の眷属を名乗る白狐びゃっこに拾われて、この土地の守り神として生きることになったのだが、私には人の記憶を消す神通力しか使えず人の役には立てないと思っていた。

 だがある日、妻と娘を事故で亡くした男が懺悔しに神社にしっこく訪れて鈴を鳴らすので、妻と娘の記憶を消したら男の表情から悲しみは消え前向きになったのを切っ掛けに神社には忘れたい記憶を消しに多くの人が足を運んできては大繁盛。

 私は毎日、人々の記憶を消すことで多くの人を救ってきたが、常連客が付かず次第に神社に来る人が減りはじめ、村に新しい神社が建てられたことによりまったく人が訪れなくなってしまった。

 

 誰も来なくなってから私は考えた。

 そして、私は思いついた。

 誰も来ないなら、私の方から来ればいいと。

 

 それから、私は時折り村に降りて、手当たりしだい人々から忘れたいであろう記憶を消してあげたが、私の力に嫉妬した新参者の守り神が根も葉もない噂を流して村人をあやつり私を追い込んで山深くに封印したのだ。

 私は村の人の為に尽くしてきたのに、村人は私への恩を忘れて......記憶を奪うたたかみとして恐れて、......ぐすぅん  」


 「そうか、そうか。」


 俺は返答に困り、ひたすら"そうか"とつぶやく。

 傷口にはあまり触れないほうがいいので、取り合えず紫苑をなぐさめる。

 だけど、勝手に人の記憶を消したら普通に混乱するだろう。


 「紫苑は、優しい子だな。」


 苦し紛れに障りの無い言葉で紫苑を励ます。


 「そうか、 もっと慰めて欲しい黒夢クロム。」


 「はいポテチ、コンソメ味。」


 俺は女性の慰め方は知らないが、対外たいがいのことは美味しいお菓子を渡せば解決することを22年間という短いようで長い人生で幾度も経験している。

 美味しい物こそ、人々を幸せにする秘薬なのだ。


 「なぜ、慰めて欲しいと言ったら袋を渡すのだ。」


 「天ぷらが好きならポテチとか、芋を薄く切ってあげたものとか好きだと思って。」


 紫苑に渡したポテチの袋を開けて、中からコンソメのこうばしいかおりがする油で揚げたパリッとしたジャガイモのスライスを取り出し食べる。

 指が油塗れになって携帯スマホに触ると汚れてしまうので、携帯スマホでの作業が終わったあとに食べるようにしているが、気を抜くとパソコンのキーボードがネバネバした油で汚れているからポテチと言う食べ物は恐ろしい。

 そして、美味しい。


 「うー・・・。」


 「食うか?」


 うらめしい目で、こっちを見てくる紫苑にポテチをすすめる。

 紫苑はポテチの匂いをしばらく嗅いだ後、ポテチを食べ始めた。


 「黒夢クロム! なんだこれは旨過ぎるぞ。」


 「ポテチ。」


 紫苑はその後、俺が明日のおやつにとって置いた塩味もたいらげるのであった。

 食べ終わった後には、歯磨きと手洗いすることを忘れたらいけない。


 ......紫苑の分の歯ブラシが無い。



 その後、俺は歯ブラシを買うためにコンビニまで一走りしてきた。


、、

、、、


 朝目覚めると、金縛りならぬ鎖縛りにあっている。


 「すぅー くぅー。」


 原因は俺の腹の上で体を丸めている紫苑ってことは分かっているが、確か紫苑は母さんの部屋で寝ることなっていたが。


 「黒夢クロムも、もう彼女の一人や二人は持つ歳になったのよね。」


 真の元凶である俺の母親が、障子しょうじの隙間から微笑みながら息子の不幸をながめている。

 母さんは昔から、俺を驚かして笑っているドS体質であるゆえ助けてはくれないだろう。

 動こうとしても紫苑の足から伸びる鎖に拘束こうそくされているので身動きがとれない。


 「母さん、彼女を二人持つのは無理だと思うよ。」


 「あら、そうね。でも1人は確定なのね。」


 「確定て、紫苑のことか。」


 「そうよ、昨晩紫苑ちゃんが彼方のことを色々いてきたのよ。例えば彼女はいるか、どんな女性が好きか、どうやったらお嫁さんなれるかなんていてきたわよ。」


 母さんは、二十二歳になっても”年齢=彼女居ない歴”の俺の人生に危機感を感じている。

 だが、俺は彼女など居なくても楽しく生きて行ける自信なら腐るほどあるし、むしろ彼女でも作ろうとすれば自分の時間が無くなって損をすると思っている。

 ここは、反論しても倍にされて返されるだけなので無視スルーする。


 「紫苑、起きているのなら鎖を解いて。」


 「ぷぅ、ふぅふぅ。」


 紫苑は腹の上で眠りながら笑っている。

 その寝顔を見ると緊張と恥かしさで心拍数が上昇する。 


 「じゃお二人さんは仲良く あ い を育んでね。」


 「いや母さん、昨日合ったばかりの人を嫁にするのは無理だ。」


 「無理、無理なのか!? なぜじゃ、何故なぜだめなのか言ってくれ黒夢クロム!」


 たぬきりをしていた紫苑は大声をあげて鎖を引っ張る。

 そして、俺の首に巻かれた鎖が絞しまる。


 「首が絞まる、やめろ。」 


 「黒夢クロムダメなところは治すから私を捨てるないで。」


 話をまったく聞かない紫苑との交渉を諦めて、俺はひたすら魚のようにじたばた暴れる。

 もしも、紫苑が嫁として来たら俺は一ヶ月もしないで死ぬかもしれない。


 十五分間、体感時間で一時間以上感じたが、なんとか鎖から脱出して暴れる紫苑を取り押さえてなだめる。

 嫌いではないと言うと「では、私のことを好きなのだな」と言ってくる。

 好きではないというと......  何でもするからと叫び、足にしがみ付く。


 どうやら、俺には選択肢が1つしかないようだ。

 

 俺は、まだ合ったばかりでお互いを知らないから長い時間をかけて関係を築こうと、曖昧なことを言って、なんとか紫苑を納得させる。


 「そうだな、私も少し焦っておった。 すまなかったな黒夢。」


 「気にするな。」


 誰か! 女子の取り扱い説明書をくれ。と、俺は心の中で悲鳴を上げる。

 これは、後で全知全能のグーグル先生に相談するしかないな。


 「とりあえず、その足に付いている鎖を取ろうか。」



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