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02話 


 「くぅん、ふぅ~ん。」


 「落ち着いたか。」


 俺はいわゆるケモノミミ、狐の耳と尻尾を生やした狐娘に抱きつかれている。

 一見、男性から見たらこの上なく羨ましい状況だが、相手は今日合ったばかりで普通の人ではなく謎に満ちた神を名乗る少女だ。

 だから、俺は嬉しいと言うよりも未知の存在への恐怖心が大きい。

 

 「悪いが紫苑、お前のことを教えてほしい。」


 「......あまり言いたくない。」


 「そうか、じゃ俺はそろそろ帰るけどお前はどうするのか?」


 「付いて行く。」


 どうしてそういう結論になるんだ。

 いやでも、頼るものがないから俺に付いて来ようしているとしてるなら納得する。

 しかし俺は、妖怪? 神? そんな、何かふわっとしたものの扱い方なんてしらないし、置いて行くにしても勝手に付いてくるかもしれない。 いや絶対付いて来て、「恩返しに来ました」と言って家に押しかけてくる気がする。


 「イタ!」


 「どうした。」


 「いや、少し栗のイガが足に当たっただけじゃ。」


 山には栗以外にも野いばらや山椒などトゲがある植物がたくさん生えているから、素足で山道を歩くのは危険だな。 

 俺は背負っている籠を引っくり返し、中にある栗を全部捨てる。


 「乗れ。」


 「いいのか? わざわざ私の為に。」

 

 「まだ木にはたくさん栗が実っているから、また取りに来ればいいだけだしな。」


 「そうか、すまない。」


 紫苑はそう言って籠の中に足をいれる。

 その足には、まだ鎖が痛々しく巻かれてる。

 

 「その鎖、封印とか言ってたけど、なぜ封印されてたのか?」


 「えっと、、ただの勘違いで封印されてしまったのだ?。」


 疑問形で俺の問いに答える紫苑は何か誤魔化している。

 そして、籠にスッポリ入っている紫苑は小動物的可愛さを感じる。

 何だかんだで、俺はこの不可思議な状況を受け入れてかけているが、理解できないことはひとまず置いて、怪我した少女を助けると言う。常識的な事をするしかないな。

 

 「こじんは、何で私にここまで尽くしてくれるのか?」


 「ただ山に鎖に縛られた少女をほっとくのは普通に見過ごせないだろう。」


 人として助けるのであって、そこに特別な感情などは一切無い。

 怪我が治ったら、すぐに野生に帰らせるつもりだ。


 「そうか、ありがとうなこじん。」


 「あと、自分の名前はこじんじゃなくて、白坂しろざか 黒夢クロムだ。」


 「え! こじんじゃないのか?」


 「人に名前はあまり言いたくないんだ。」


 「ふぅ、しろざかくろむ、白坂しろざか 黒夢クロムか、いい名だな。」


 紫苑は何度も俺は名前を嬉しそうに呟いて、それの呟きを聞いていると恥ずかしくなる。

 やっぱり、教えるべきではなかったか。


 「少し寄り道するぞ。」


 「どこに行くのか?」


 「ただ花畑と夕日が見える場所。」


 「黒夢クロムは花が好きなのか。私も花は好きだぞ。」


 「そうか、男が花好きだと馬鹿にはしないのか?」


 「私は男が花が好きでも変だとは思わないぞ。」


 「......はぁー・・・、そろそろ見えてくるぞ。」


 女子との会話なんて経験があまり無いから何を話すか迷う。

 頭をなやましながら、俺は黄色く色づいたがしげる森をぬける。

 森を抜けたことで視界が広がり、遠くには海と山に挟まれた小さな港街が見え、手前には稲刈りが終わった棚田たなだ一面にコスモスがほこるのが見える。


「街はだいぶかわったが、夕日は昔のままだな。」


 俺は空と海と雲と山と街が赤くに染まっている故郷の光景を携帯でパシャリと撮る為に里帰りに来た。

 大学四年生、県外への就職が決まった俺にはなるべく故郷の風景を写真にして持って行きたいと思って、お気に入り景色を撮る事にした。

 

 「黒夢クロム、あの田畑一面を桃色に染めている花はなんだ。」


 「コスモス、別名は秋桜あきさくら。」


 「秋桜か、、黒夢クロムその手に持っているものはなんだ?」


 「スマートフォン。」

 

、、

、、、


 俺は今日、山に行ったら鎖に繋がれていた自称神様で本物の獣耳と尻尾を持つ少女を拾って来た。

 さて、家族(母親)にどう説明する。


 人気ひとけいあぜ道を歩きながらあらゆる質問を想定シュミレーションして作戦を立てるが、良い案が思い浮かばない。


 でも、どうやらその心配は要らなかったようだ。



 「おかわり!」


 「はい、はい、紫苑ちゃんは天ぷらが好きなの。」


 「はい、とてもおいしいです。」


 ガッガッとお盆の精進料理を食べる紫苑と隣の台所で山菜を揚げている母さん。

 馴染み過ぎて、違和感が無い。 


 「ごちそうさま。」


 「黒夢クロムもういいの?」


 「うん。」


 俺は早めに食事を済ませて、スマホで今日合った不可思議なことを調べる。

 "ケモノミミの少女に遭遇した" "対処法" "妖怪" "山神" "神様の飼育方法" 色々検索してみるが有力な情報は無かった。

 線香の匂いが漂う和室で俺は頭を抱えてゴロゴロ転がる。


 「黒夢クロム、何しているのか?」


 ゴン!

 背後から不意にかかる言葉に驚き机の柱に頭をぶつける。


 「なぁ紫苑、お前は何者か詳しく教えてくれないか。」


 「う~ん、色々と世話になっている身だから話すとするが......」

 

 紫苑はうつむき、黙り込む。

 その顔にはご飯粒が、一つ、二つ、・・・・・・五つあるが無視スールしよう。


 「......」


 「黒夢クロムは私のことを嫌いにならないよね、絶対に、絶対に。」


 紫苑は畳に座り、寝転がる俺の顔を両手で優しく包み顔を近づける。

 近すぎて、息があたる。


 「どうして、俺に嫌われることを恐れている。」


 口が勝手に開き、思わず本音が漏れる。


 「! ......、それは、私がお主に惚れたからだ。」


 「......」


 俺は思った。

 ラブコメ展開か。


 顔を赤く染めて俺が逃げないように力強く掴む腕。

 完全に惚れられた。今まで女性経験とか無いけど、閉じ込められたところを助けて、行くあてが無い所を家に連れ込む。だけで、こんなことで今日合ったばっかり赤の他人に惚れるだろうか。


 もしかして、これは所謂いわゆる一目惚れか? 


 「もしかして、この私じゃイヤか? 見た目とかは幻術で黒夢クロムの理想の姿になるし性格とかに不服なところがあったらすぐに治しますので、そばにいさせてください。」


 「泣くな、俺はお前のことを否定するつもりはまったくない。」


 「そう、ですか。 では受け入れてくれるですね、絶対に嫌いにならないんですね、フッ、フッフッ....」


 紫苑は妖々しく小さく笑う。

 その笑い声は、聞いていると意味深な不安が積もっていく感覚がする。

 この子は何かヤバイ。


 だが、それは俺の勘違いかもしれないし、まずは相手のを知ることから始めよう。

 何事も、知ることから始めよう。


 「紫苑、お前のことを教えてほしい、喋れる範囲でいいから。」


 「そうだな、これからながいなることだし、話すぞ。 黒夢。」


 一々、俺の名前を呼ばないでくれ。 恥かしい。 

 あと、"長い付き合い"てところを強調して言う紫苑が少しコワイ。

  


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