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01話


 茜色あかねに染まった空と灰色と橙色とういろに分かれた積雲せきうんがゆっくりと流れてゆくのをただただ眺めている。

 ここ最近、空をまじまじと見上げたことは無いな。

 ............って、俺は誰だ?


 後頭部に鈍い痛みを感じて、自分の事が分からない......これは、いわゆる記憶喪失か?

 

 俺は、落ち葉が深くまで積もっている地面の上に大の字で倒れ、横には背負せおいかごと火バサミが転がっている。

 籠からは栗の実がこぼれている。


 思い出した!、俺は母親が住んでいる隣町にお墓参り行くことになったけど面倒だから栗拾いに来たんだ。

 自分の名前はたしか、白坂しろざか 黒夢クロム 名前がキラキラネームだからよくいじられる。

 状況から見て、後ろの低木ていぼくほどの高さの崖から落ちて脳震盪のうしんとうを起こしたようだな。


 「んぅうう、どけぇぇ。」


 腰の辺りがモゴモゴゆれている。と思ったら、俺は誰か人を下敷したじきにしている。


 「どえぇぇ、どけぇぇ!」


 俺は慌てて退いたが、少女はまだ落ち葉の中をバタバタしている。  

 その少女は痛い子なのかは分からないが、古びれた着物を着ていて腰にはゆさゆさと揺れる尻尾と頭には三角形型の狐の耳のようなものがある。

 コスプレとかの知識は無いが、着物はとてもリアルで私服と言われれば納得してしまうほど自然だが、注目する点は耳と尻尾がなぜゆさゆさもふもふと生きているように揺れているのだ。


 「おい、大丈夫か?。」


 「お主、何者だ!」 


 少女が俺の存在に気付き体を強張らせる。


 「人間。」


 「そうか、じゃなくてお主の名前だ!。」


 少女のノリツッコミが森に響く。

 子供ってうるさいから嫌いなんだけど、この少女の声は鈴のように透き通った綺麗な声だ。

 地元にこんなに綺麗な声の少女が居ればすぐに噂になると思うけど、この子はどこから来たのか。


 「個人情報なので言いたくない。」 


 「こじんじょうほう、変わった名前だな。」


 何か、勘違いされているようだが訂正するのは面倒などで、そのままにしとくか。

 呼び名なんて、人を表す記号に過ぎないしな。


 「うんうん、よく変わっていると言われるけど、あなたの名前は何ですか。」


 「私の名前は紫苑しおん、この山を治める山神だ。」


  山神? 

 俺は神やご先祖供養などは信用しないたちなんだけど、この少女は純粋に神様とかが居ると思っているのか。

 他人にどうこう言う気は無いけど、自分を山神と発言している獣の耳と尻尾を生やした謎の少女,紫苑しおんをどう上手く対処するかで俺は頭をフル回転して考えるが良い案が思い浮かばない。

 情報が曖昧で少なすぎる。


 「紫苑しおんさんは、どうしてこんな山奥で1人に居るんですか?」


 「私は山神だから山にいるのは当たり前のことじゃろう。」


 「そうですか......では山神様、自分はもう帰りますね。」


 話し合いは不可能と見て、こぼれた栗を籠に戻して一刻もこの場を立ち去ることにしよう。

 この山はさほど深くないし人を襲う危険な動物などはいないから、紫苑しおんは大丈夫だろう。


 「ちょっとまて、こじん!  私を一人にするな!?」


 紫苑しおんは俺の居る方に走るが、頭から転んでしまう。

 よく見れば、紫苑しおんは靴などは履いておらず素足で、足には縄のようなものが絡まっている。


 俺は、この状態のまま幼い少女を山に置き去りにするのは危険だと判断して、紫苑しおんの元に引き返す。


 「足、見せてみろ。」


 「お主に解けるものではない。」


 「いいから見せてみろ。」


 「......分かった。」


 足首には鎖が縛られており、偶然に絡まったものではなく。

 意図的に動きを阻害する為に付けられている。

 紫苑の足には痛々しく黒い痣が出来ている。


 「イジメにしたら酷すぎる。」


 「こじん......」


 紫苑しおんが何かつぶやき、顔を赤らめている。

 生足なまあしを見つめられるのは女性にとって不快だな。

 俺は視線を鎖に絞り、鎖をほどこうするがきつく縛られておりほどくのは無理と判断する。

 足の関節を外して鎖を外す方法があるが、痛いので止めとく。


 「やはりこの封印を解くのは出来んか。」


 俺は鎖を掴み上下に振って鎖を浮かび上がらせる。


 「お主!?、何をやっておるのか。」


 「何て、鎖を引き抜くんだけど。」


 「?」


 鎖をほどくのは無理だけど、引っこ抜くことは出来るかもしれない。

 紫苑しおんに絡まる鎖をたぐりドコに繋がっているか調べると、苔むして所々材木が腐っている古い祠のを見つける。

 どうやら鎖はこの祠の柱に打ち付けられているようだな。

 

 俺は鎖を火バサミに絡めて鎖をめいいっぱい引き柱を思い切り蹴る。

 柱は傷んでおり蹴るとぐらぐらと揺れて、何度か引っ張り続けると柱が折れて鎖が取れた。


 「......そう言えば、何で鎖に繋がっていたんだ?」


 勢いで祠の柱を折ったけど、考えてみれば何故で紫苑しおんは鎖に縛られていたのか。


 「......」


 「お~~い、聞こえているか?」


 「......、ぐすん。」


 紫苑しおんは小刻みに震え、頬には大粒の涙が流れ始める。


 「おい、どうした? なぜ涙を流す。 俺がが何か気に入らないことをしたのなら謝る。」


 「......こじん....ありがとう。」


 紫苑しおんは泣きながら俺に抱きつくのだが、俺はどうしていいか分からず。紫苑しおんの頭を撫でてなだめることしか出来なかった。

 そして、紫苑しおんの頭には人の耳が付いておらず狐のような耳がじかに生えていることが分かり、俺は異類いるいの存在に混乱するのであった。

 あと、俺のあだ名がこじんになっているが、もっとましな呼び名が無いのかと若干じゃっかん後悔するのであった。

 

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