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妖怪哲学

作者: 佐藤守華


ボクは妖怪です。


妖怪と言っても下級にしかならない


下の下。 端の端。

死んでも気づかれない程のザコという事です


そんなボクが晴れているので散歩をしていると

ある(ひと)の子が歩いていました


人の子というのは意外な生き物です。

ボクら妖怪の存在を否定したがる

陽気で残酷な生き物です


ですが、その人の子は違う感じがしました。


なぜなら。

普通ではなさそうだったからです


いや、まず。格好が変でした


人の子というのは、ヨウフクという物を着ているのですが

その人の子は、珍しいヨウフクを来ていました


しゃつ。という物を着ているのは分かるのですが、書いてある文字が『テツガク』


と大きく書いてあるのです


『テツガク』とはなんなのか

ボクごときにはわかりません


目には隈がありましたが、森を見て立ち止まり、ニヤニヤと笑っているようです


下は普通にずぼんかと思いきや、膝下ぐらいのずぼんでした


そして、靴下を履かずに裸足でせいふく?の靴を履いていました


季節は春夏秋冬での秋です


寒くないのでしょうか。


ボクは寒くもないくらいなのですが、今日(こんにち)人の子を見たらまふらーとかぼうぐ?をしていたので寒いらしいのです。


そんな彼にとても興味が湧いたので近ずいて見る事にしました。


所詮(しょせん)人の子にはボクですら視えないのですから、大丈夫でしょう


視えないはず。でした。


おや、と彼はボクの存在に気が付きました

いやいや。視えるわけがないのです


ですが、彼はボクに向けて言葉を掛けてくれました


「こんな所でナニをしているのですか」


それが最初にボクに掛けた言葉でした。


ボクは認識された事に内心は平常心ではいれなかったので


え。え。

みたいな感じであわあわと慌ててしまいました。


彼はそんなボクに対して首を傾げ

それからニヤと笑い掛け

「悪い感じの妖怪サンじゃあ、なさそうですねぇ」


と言った。


なんで、そんな事が分かるのか。

何故、視えるのか。


分かりません。


彼はボク的には悪そうには見えない。

そう、単純に思いました


「なんでボクが視えるんですか」

ふと、思った疑問をぶつけてみました


そうすると彼は

不敵に笑い、そしてヨウフクを引っ張りながら

哲学(てつがく)に似ているじゃあ、ないですか。見えないですかこの文字が」


何故、『テツガク』と『妖怪』が同じなのかさっぱり分かりません。

接点すらみゆけられない


「その『テツガク』と妖怪のなにが一緒何ですか」

話をしている事に疑問を覚えていた事を忘れ問い掛けた


すると、顔をムッとさせて。

不機嫌そうに

「『テツガク』ではなく、『哲学(てつがく)』ですよ」


素早く、怯えてしまったボクは

「ご、ごめんなさい」

と即座に謝りました


言い方の違いは分かりませんでしたが、そんな所も気になる程『哲学』にこだわったいるのだと思いました。


すると、突然

彼は両の腕を広げて、笑い掛け

「それにしても。こんな所にきたかいがありますね」


不意に言った


「なんでですか」

疑問に思ったボクは問いかけました

こんな所に来て、ボクに会ったことを嫌に思っていないのかと


「それはですね、創造が本当にある事の証明だからですよ。

『哲学』の考え方と『妖怪』の存在は認めるべきですからね」


分かったような。

分からないような。


「そういう理由(わけ)で否定すること無く、肯定派なので視えるんじゃないですかね」


なにがそういう理由(わけ)なのか


そうして多分、ボクがよく分からないような顔をしていると

そうですねぇと首を傾げ、考えるような動作をした


「例えば、空が青ではなく。虹色にするという方法があるとすると、方法はあるのですから信じていればそれは本当にある事になるんですよ」


ややこしい人の子だと思いました。

というか、方法があっても試さないと本当にある事にはならないと思いました。


「そう、試さないと誰も信じません。だからといって無理に押し付けようとは思いませんけどね」


とクックッと笑ったが、目が笑っていない。


「だって、自分だけが知っている事って秘密事ってワクワクしませんか」

ボクの方を見て、同意を求めるように問いかけてきた


木の上から話していたボクは木から降りて

そうですねと肯定した。


「でしょう」


まぁと付け足すように言いました。

「押し付けようと思うような相手はいますけどね。あそこまで『哲学』を否定されると苛つきますから」


そう言って、さっきの不機嫌そうな顔とは比べ物にならない程の殺意とも捉えられる顔をしていました。


「その人の子は嫌いなのですか」

驚きながらも聞きました。


こんな独特な人の子を見たことがない。というか可笑しい人の子を怒らせるとはどんな人の子なのかも気になりました。


すると、その独特な。可笑しい人の子は

ふと、我に帰った


「き、嫌い…ですかぁ…」

一瞬だけ泣きそうな顔になり、すぐに元にもどり。

「私は嫌いじゃあないですけど、あっちは多分嫌いだと思いますよ」

と、諦めたような顔をして。無理矢理笑った


「あの人は、いつから感情が欠落してしまったのか…性格も変わってしまった。早く戻してあげたいですけどね」


そして、だからと続けた


「今のあの人は嫌いじゃあないですけど、好きでもないのです。

昔に戻して欲しい」

と独り言のように呟いた。


人の子は変わりやすい。

そう聞いたことがあるのですが、本当らしい

昔のまま変わらないのは妖怪だと思っていましたが

それだけではなさそうです。

こうやって人の子の中にも止まった時計は錆び付いてしまうのでしょう。


あ、という顔をしてその人の子はニコリと微笑み

「すいません。話しすぎてしまいましたね

それでは失礼」


そう一言残し

ご機嫌に歩って行きました。


今日(こんにち)の散歩はとてもいいもとなり、あの人の子が仲直りできるように帰ってからお祈りしたいと思います。


我が主様。

仲直りのお祈りの仕方を教えて下さいね。


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