【log: <TITLE> Novel : Dragon Heart </TITLE>】
竜は、たくさん殺しました。
人のためでした。
あなたが大事です、
死にかけの竜は人に言いました、
大事にしたいと考えてます。
それなら人間になってよ、
人は言いました。
それはできない、竜に生まれてしまったから、
と竜は答えました。
死なないでよ、
と人は泣きました。
死なないよ、この程度では、だって竜だもの、
と竜は笑いました。
どうして、ぼろぼろなのに、笑ってるの、
と人は怒りました。
あなたは元気なすがたなのに、どうしてぼろぼろ泣いてるの、
と竜は言い返しました。
だって、きみが死んじゃう、
と人はいっそう泣き始めました。
空を雲が塗りつぶして、大粒の雨が降ってきました。
ぼくにはわからないよ、
とうとう竜は言いました、
だってぼくには、心がないから。
そうなの、
と人はうつむいて涙をぬぐい、
そうなの、
と竜はうなずきました。
でも、ずっとそばにいるよ、
と言い添えました。
いなくなったりなんてしないから。
竜の言葉に、人は顔を上げました。
雲がちぎれて、そのあいだから、一筋の光が差しこみました。
光は、竜と人のあいだに横たわりました。
人が、両手をお皿のようにくっつけて伸ばしました。
そのお皿に、光があたたかくそそがれました。
じゃあ、これあげる、
人は今度は笑いました、
あたしの半分。
竜はおどろいて、まじまじと人を見つめ、
たっぷり時間をかけて、泣き始めました。