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彼らに明日は来なかった。  作者: ヤブ
番外編「太田と古和田」
24/30

行きたい高校

「友菜、高校は決まったの?」


 台所で夕食の準備をしている母が聞いた。


 最近、母はそればかりを聞いてくる。夏休みに行われた三者面談から、ずっとこの調子である。確かに、十一月の下旬なのにまだ高校を決めていないのは遅いのかもしれないが、そればかりを言われると腹に来る。


「まあまあ」


 手に持っているスマートフォンを見ながら言った。


「ったく、スマホばっかり見てないで、ちゃんと勉強したらどうなの? というか、勉強してるの?」


 親は本当にうるさい。勉強勉強って、言ってるほうも気分はよくないだろう。


「ちゃんとしてるよ」

「本当に? あ、太田くんはどうなの?」


 急に太田の話題を出した。


「知らない。どうせ、スポーツ専攻のある高校じゃない?」

「じゃあ、友菜もそこにすれば? 昔からスポーツ好きでしょ? 太田くんと一緒だったら、頑張れるんじゃないの?」


 出たよ、恋人とのためなら頑張れるってやつ。


 恋人っていっても、私たちはまだ中学生。中学生の恋愛なんて、ほとんどお遊びみたいなものだ。私が太田と付き合ったのだって、前の彼氏のことを手っ取り早く忘れるためだ。前の彼氏と別れて、一ヶ月後に太田が告白してきた。まだ前の彼氏に気を持っていた私は、太田を利用して忘れることにしたんだ。そう思うと、私は本当に最低だ。


 太田は見た目と違って結構一途で、かれこれ一年も付き合っている。けど、高校に入れば他の人を好きになるに違いないだろう。男っていうのはそういうもんだ。


「んー……」


 別に、私は全く行きたい高校の検討がついていないわけではない。さっき母が言っていたように、スポーツ専攻のある高校を考えている。しかし、私には将来の夢がある。それは保育士である。弟や妹がいるためか小さい子が好きで、そういう子と関われる仕事がしたいと思っている。近くに高校卒業で保育士になれるというところがあるため、そこにも興味を持っている。だが、やはりそこはお金が普通の高校よりもかかる。兄弟の多いうちにとっては、辛くなってしまう。


 高校のうちにバイトをしてお金をためて、専門学校へ行くという道もある。そうなると、スポーツ専攻にいくと部活一筋になり、バイトをしている時間はほとんどないだろう。ここは、普通科に行くのが妥当だ。


「最終的に決めるのは友菜だけど、あんまり呑気にしてると落ちちゃうかもね。悪いけど、私立だけは勘弁ね」


 その言葉に、私は少しプレッシャーを感じた。

 夕食を食べて風呂に入ったあと、私は自分の部屋がある二階へ向かった。


 勉強机に座り参考書を開けるが、ペンを持つ気にはなれない。ただ書いてある文字を見るだけ。


 受験が大事なのはよくわかる。将来就職するために、大切なことだ。中卒では就職できるところはあまり見つからないし、やはり高校に行った方が無駄な苦労をしなくて済むだろう。


 スマートフォンを見るが、きているのはゲームの通知だけ。

 二学期に入ってから、ほとんど太田とはメールをしていない。毎日学校で会えるわけだし別にいいのだが、一学期までは毎日のようにメールをしていたため、何だか寂しい。


 文化祭は既に終わり、三年生は受験に向けて頑張る。文化祭前にはある事件があって騒ぎになったが、一ヶ月ほどが経ってようやく落ち着きを取り戻してきた頃である。本当は落ち着くのはあまり良くないかもしれないが、いつまでもあの事で戸惑っているわけにはいかない。


 そういえば、太田と高校について話したことはない。お互い特に気にしていないのか、「受験」という言葉が会話に出ることもなかった。


「やっぱり、太田はスポーツ専攻だろうなー」


 ちょうど近くにスポーツ専攻がある高校があるし、まだ付き合う前に「俺は、スポーツ専攻のある高校に行く」と言っていた。だから、ほとんど確定だろう。もともと勉強があまり出来ないし、太田にはもってこいだ。


 時計を見ると、既に十時を過ぎていた。机に座ったまま、三十分も経っていた。いつもより少し早いが、私は寝ることにした。

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