遊園地3
――お前に、言わなければならないことがある。
さっきまで楽しく話していたのに、突然由子が少し悲しそうな顔をしたため、俺は体を強張らせた。
由子がこんな事を言うのは初めてであるため、今から何が起こるのかは想像も出来なかった。
「……ん? 何だ?」
俺はどうにか普通に振る舞ったが、由子にはばれているだろう。
由子と目があったとき、俺は少し笑って首をかしげたが、由子は悲しそうな顔をして俺を見つめるだけだった。
「……西田」
由子はそう言いながら、俺の顔をまっすぐに見る。だが、すぐに視線を下に向けてしまう。
俺は由子を待った。
「……最近、変わったことは起きてないか?」
突如、黙っていた由子がそう言った。目線は未だ下を向いている。
変わったこと? それはやはり、『今日』が繰り返されるようになったこと。
しかし、そんなこと言うと、由子は目を見開いて俺を見ることだろう。
他に変わったことは何かあっただろうか。
「…………た、例えば、変わったことと言っても、そんなその……普通の事じゃなくて、不思議なこととか可笑しな事が起こってるとか……」
不思議なこと……。そう言われると、やはり『今日』が繰り返されていることしかない。
しかし、何故由子は急にこんな事を聞くのだろう。俺の近くで起こった変わったことが、実は由子が関係しているのだろうか。
一瞬、良からぬ事が頭を過ったが、それはないだろうと思った。しかし、何故かそれが引っ掛かる。
「西田。……ないのか?」
由子がそう言うが、俺は額に手のひらを当てて前に抱え込んだ。
どういうことなんだ? まさか……。まさか由子が……。
「西田、もしかして……気づいたのか?」
まだ分からない。頭のなかで全ての情報が一瞬にして溢れだした。その中にヒントがあるはずだ。
いや、もしかして俺はもう気づいてしまったのかもしれない。ただ、信じたくないから、別の考えを導きだそうとしているのだ。
俺はしばらく全てを停止したまま、落ち着きを取り戻す。
そして、俺は顔を上げた。
口を開けては閉じ、開けては閉じを繰り返し、俺はゆっくりと声を出した。
「……由子。もしかして、お前は……」
それから先は、言えなかった。なんと言っていいのか、分からなかったからだ。
由子はしばらく俺の顔を見て、顔を下げた。そして、また上げる。
「気づいたんだな」
由子は微かに笑った。
「じゃあ……由子……。由子が……」
「ああ、そうだ。私が『今日』を繰り返しているんだ」