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彼らに明日は来なかった。  作者: ヤブ
第三章「五回目の『今日』」
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夢の声

 体育が終わり、いつものように羽の入ったダンボールとラケットを倉庫にしまい、体育館を出る。由子は先に教室に帰り、俺は一人、とぼとぼと歩く。


 一人で寂しいからではない、体がだるいのである。

 朝はすこし軽い程度だったが、今では体が重たい。妙にぞわぞわとして、気持ち悪い。体内で細胞がウイルスと戦っているのだろうか。


 保健室に寄って行こうかと思ったが、もう少し様子を見れば治まるかもしれないと考え、寄り道をせずに教室に向かう。


 時計を見ると、あと数分で本鈴が鳴る。

 俺は重たい体を走らせた。


 二時間目の数学。


 同じ勉強を復習すれば頭に入ると言うが、こんなに何回も勉強しても、メリットなどない。体がだるいのもあり、俺は授業中ではあるが寝ることにした。


 机に伏せたとき、四回目の『今日』と同じように、後ろの男子がまた由子の話をしていることに気づき、密かに耳をすませた。


「なあ、さっきの休み時間見た?」

「何を?」

「滝沢が小倉に話しかけてたところ」

「え、まじで? 見てねえわ」

「俺ビックリしたよ」


 『また』、由子と滝沢が話していただと?

 何故だ。どんどんと『今日』が変わっていく。まるで、一日以上時間が進んでいるかのようだ。今は、一回目や二回目の『今日』と同じはずだ。その時に由子と滝沢が話すことなんてなかった。なのに、何故話しているんだ? 何が変わっているというのだ?


「え、なに話してなかったか聞いてないの?」

「さすがにそこまではな」


 一体何を話していたのだろうか。……好きな人の話、か? いやいや、二人にとってはじめて話すんだ。いきなり「好きな人はいる?」と聞かれたらなにか裏があるのかと疑ってしまうだろう。


 じゃあ、一体……何の話……?

 そこから、俺の思考は一時停止した。



 声が、聞こえる。

 ――結構な人が知ってると思うけど、西田くんは知らないんだね。やっぱりね、小倉さんもそういうことなんだと思うよ。

 ――教室で見た人影、誰だったんだろうな。

 ――お、図星か? さては俺の由子がとられて嫉妬しているってところか?

 ――いや……。西田がな……。

 ――西田くん、純情だねー。

 ――西田、私先に行くな。

 ――西田くん!

 ――……何か、その……。ちゅ、中学生だし、好きな人の話とか。

 ――気づいてほしいことに、気づいてくれないとき、かな。



「きりーつ」

 号令係の声で、俺は目を覚ました。

 あの夢は、何なんだろうか。

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