紅茶を飲んで話そう
評議も終わり、聖は不安に・・・
そんな時、風神とリーゼロッテは聖を励ます。
一息つく。
状況を頭のなかで整理する。
俺は現聖王という立場でこの世界に現れた。
先代聖王は約600年前7人の仲間とともに魔王を自らの命と引き換えに滅した。
そしてその魔王が今、復活しようとしている。
俺はその先代聖王のように命をなくすのだろうか。
人々の安寧の対価として身を捧げ、世界を救う英雄となるのだろうか。
別に命の意味を語るつもりはない。
そんな曖昧なもの、誰も定義し答えの出せない事柄について俺の小さな頭で考えるつもりはない。
でも、ここでそれを見越してしまいそうになる。
不安だけが俺を取り巻くそんな心境。
「s・・・せいお・・・聖王・・・聖王様!?」
「ンッ!?」
リーゼロッテが目の前にいた。
俺は深く考えすぎていたようだ。
周りが見えていなかった。
「大丈夫ですか聖王様?
無理もありません、一日に起こることが多すぎたのですね。」
リーゼロッテは心配してくれている。
俺の目はリーゼロッテの膨らんだ2つの山にしかいっていないが・・・
近いんだよ。
「目が虚ろですね・・・。大丈夫ですか?
今お茶をお淹れいたしますね・・・」
俺のいやらしい視線に気づくことなくお茶を淹れに行った。
いや、いいもの持ってますよ、リーゼロッテさん!
「コホン!聖王様、目の保養になりましたか?」
なんということでしょう。
風神お前いたのか・・・。
「あー、すみません・・・つい。」
いやさ、突如として目前に立派な2つのお山があったら見ちゃうでしょ。
谷間とかに吸い込まれるでしょ!!?
健全な16歳だし---!
「さて、聖王様今日はいろいろと連れ回してしまい申し訳ありません。
おかげで順調に事を運ぶ事ができました。
ありがとうございます。」
「いいえ・・・。俺って・・・何もできなくて。
でも、自分の責任だけは身にしみた気がします・・・。」
そう切実に。
身にしみすぎて、吸いきれない。
指先から水滴が落ちそうなくらいに身にしみた。
「そうでしょうとも・・・。大衆が・・・我々が待ち望んだ救世主とも言えるお方です。
ですが、私たちはそれを全力で支える所存です。
どうか、ともに歩ませてほしい・・・。
私も父を亡くし、王位をいただくときにはその責任に押しつぶされそうになりました。
ですが、周りの仲間たちと国民に支えられここまで走り抜けてこれた。
私は・・・その時仲間と国民がしてくれたことを聖王様にしていきたい。
そう考えています。だからどうか思いつめないでください。」
コトン・・・
リーゼロッテがカップを置く
「紅茶です。落ち着きますよ」
この時飲んだ紅茶の味は忘れられない。
そう、落ち着く香り、温かいぬくもり・・・・
カップを傾け、飲み終え、置く。
「風神様。私・・・まだいろいろ混乱していますけど、自分にできることは精一杯やりたい。
魔王を倒すことも、人々を救うこともできるかわからない・・・。
でも!自分のできることは精一杯やりたいんだ!だから、支えて欲しいし、教えてくれ!!」
「はい、いくらでも支えます。いくらでも教えます。
我が身は常に聖王様とともに・・・。」
風神は俺の目の前で膝を床につけ一礼する。
リーゼロッテもそれに続いた。
でも違和感を感じる。
「えっと・・・かしこまったのはやめませんか?
おれ、そういう主従関係見たいのは苦手で・・・
友達・・・いや、仲間として接して欲しいなーって思うんですよ。」
リーゼロッテと風神は顔を合わせて”えっ?”と戸惑った顔をしている。
「ですが聖王様!あなたは救世主であり、神にも近い存在なのです。
そんな方に崩れた対応などできません!」
「でも、嫌なんです・・・。こう、大勢の前では仕方ないですけど・・・
こういうそうじゃない時くらいは・・・ね?」
「・・・わかりました。善処しましょう。
いや、そうすることにするよ・・・。」
風神は少し戸惑いながらも言葉を崩してくれた。
俺はリーゼロッテを見る。
「あっはい!!わかりまし・・・了解しました!!
仲間ですもんね!!やってみます!!」
よろしい・・・!
可愛い!何でも許しちゃう!!
リーゼロッテはそんな笑顔で答えた。
「では、今日は休みましょう。
明日もやらなくてはならないことが多い・・・。
リーゼ、聖王様を部屋に案内してくれ。」
「まって風神様!その聖王様っていうのも息苦しいんだ。
先代はそりゃすごいことをした偉人だ!でも俺はまだ何もしていない!
伝承通り現れただけのただの一般人だよ?
だから、聖王と同列呼びってのはちょっと気がひけるんだ・・・。
前に自己紹介したよな?俺は山ノ手 聖だ!聖って呼んでくれないかな?」
学校でも仲の良い友達は”ひじりー!”って呼んでくれた。
俺はそれがいい。そう思ったんだ。
「・・・・ひじり・・・・聖様もダメですか?」
「かたいよ・・・」
「・・・わかりました!では聖・・・と呼ばせてもらいます。」
「うん、そうしてくれ!
もちろんリーゼロッテもね?」
「あっはい!わかりました!聖ッ!!」
うーん、ぎこちないけど気にしないでおこう。
「ではリーゼ、聖を部屋に案内してくれ。
私も少し休むよ。」
「はい、風神様!せいお・・・聖!ついてきて!」
少し気が楽になった気がした。
「リーゼロッテ、部屋に行ったらさっきのお茶また淹れてくれない?」
「はいっ!わかりました!」
なれるまで時間がかかりそうだ。