馬車に揺られて2
馬車に揺られ暫く経つ。
風神とリーゼロッテの話を聞きながら、メモを取りながらしていると
「もうすぐ首都につきます!」
その時聖が見た光景はあまりにもすごかった。
道行く中、俺はリーゼロッテさんに紙とペンをもらい聞いたことをメモしていた。
そんな姿を見て風神らはたいそう感心していた。
そして俺の書く日本語をみて風神は驚愕した。
どうやら今この世界で普及している言語体系とは異なっているらしい。
風神は俺の書く日本語に興味津々だ。
メモをまじまじと見ていろいろ聞いてきた
---この言語はどこの言語なんだ!!?
---これはなんて読むのか!?
---この文字の成り立ちは?
---この文章を要約するとどういう意味になるのか!!?
---この一文にはどれだけの意味が込められているのか?
etc・・・
逆に質問攻めにされた。
リーゼロッテが教えてくれたが、風神は考古学のたぐいが大好きで、好奇心が止まらないタイプなのだそうだ。
風神は目をきらめかせて俺の書いていく文字を見つめている。
すごく書きづらい。
まるで母に宛てた作文を書いていて、書いている最中それを横で母にガン見されている気分。
リーゼロッテはそんな風神の姿を見て、楽しそうに微笑んでいた。
本当にこの人風神を慕っているんだなー・・・それ以上に、どんな関係なんだろうか。
コンコン
外を警戒していた騎兵の一人が馬車の窓を叩いた。
「もうすぐ首都に到着します!」
すでに外は夜の闇の中だ。いつの間に時間が立ったのだろうか。
未知を目の前に時間を忘れていた。
外を見ると確かに建物とかが増えたように思う。
なんだろう・・・そんな中に、道の一定間隔においてある光る石がある。
流れる風景の中にある光る石を視線で追いかける俺を見てリーゼロッテは光る石について解説を始める。
「あれは夜光石ですね。首都にある大魔石からの魔力供給によって光りだす石です。
おもに夜光石は夜の光源として利用されているんですよ。ほら、この馬車の天井にもあるこれも夜光石ですよー。」
気づかなかった、たしかに天井には優しく緑色に光る石があった。
その光はなにか落ち着くものがある。綺麗だ。
修学旅行で行った沖縄で見たホタル石に近い見た目で、中には銀色の何かが光っている。まるで宝石のようである。
「それよりも、聖王様!見てください!もうすぐ首都ですよ!先に見えるあれが風の国の首都 エアロヒルですよ!!」
リーゼロッテが指差した先に目を向ける。
「うわー・・・すげー・・・なんだあれ・・・」
山肌に多数の建造物が建っている・・・。
その様子はまさに異世界という感じだった。
---首都エアロヒルは山肌を利用して作られた都市だ。
日本の棚田のように斜面を利用した複層構造の都市で
下から、外壁部、商業区、工業・研究区、住居区、学園街、公園、都市中枢という構造になっている。
街の頂上部にはものすごく高い塔がそびえ建っている。
その街の全貌は見事なものだった。
多分かなりの大都市なのだろう、ものすごくでかい。
「すっげー・・・まるで富士山の麓から頂上にかけて街を作ったような・・・」
すごいとしか言葉が出ない・・・。いや、いつの間にか口から漏れていた。
「この街は私の先祖初代風神様が”いつ何時襲われても守護しやすく、景観を損なわない美しい都市とする”というコンセプトを元に作られた都市でね。
3000m超ある山肌を削り、年々開発してきた街なんだ。山の裏には港があり、各層には客車が走り、巨大な都市なのに端から端までの移動は1時間もかからない。
この街は私の誇りであり、宝物だよ。」
風神は楽しげに説明した。確かに美しい街だ。
「---ん、あれはなんです??あの街を囲んでる塔??そしてその塔から出ている光は??」
街の外周を囲うかのように塔が列挙している。その塔からはおぼろげな光が隣の塔へ隣の塔へとつながっている。
「あれは魔法障壁。この首都防衛の要で、旧人類の言葉から要いて”イージス”とよんでいます。
大魔石からの魔力供給によってあの塔からは障壁が出ており、魔物を近づけず、ハリケーンなどの天災が起きても首都に被害が出ぬようになっています。あれは初代風神様が設計した魔法障壁発生装置をアレンジしたもので---」
・・・つまり城壁らしい。風神は話すのが好きなんだろうなー・・・
いや、たぶん湖の街に誇りを持っているのだろう。すごく楽しげに街を説明してくれる。
俺はその説明を書ける限りメモした。
・この街は初代風神が考えたコンセプトを元に代々計画的に増築・改良を加えた要塞都市
・斜面を利用した複層構造で、各層によって街の機能がわけられている。
・この広い街を移動するには”リフト”と”客車”を用いる。
(客車は俺のいた時代でいう電車のようなもの。リフトは馬車を上層に運ぶためのエスカレーターのようなものらしい)
・街の頂上部に建つ塔は、七星賢者風神隊の本部であり、都市機能(役所・裁判所など)が入っている。
・街は外周部を列挙する塔魔法障壁発生装置によって守られている。
・七星賢者連合国内でも一番の人口を誇り、魔法研究専門の層”工業・学園街”は他の国にはない強み
・街の郊外には、低所得者向けの層を建設中で、まだまだでかくなっている
・街の正面は棚田のような複層構造都市。街のある山の裏手は海で、港がある。
・旧人類の作った遺跡が街の地下にある。
ざっとメモを見てもこんな巨大な立縦型都市は俺のいた時代にもない。
そんな街トリビアや歴史について聞いているうちに城門前にたどり着いた。
他にも、城門を潜ろうとしている商人らしきものの馬車や、大きな荷物を背負った人たちが城門の前で兵士となにか話している。
「ん、あれは城門検問さ。この世界には持ち込みや仕様を禁止されている薬品や植物、書物等がある。それらをあそこでチェックするのさ。他にも、商人の中では少なからず密輸に手を出すやからもいる。そういった者たちを摘発するのもあるがな。
更に、貿易割符、旅券を各都市の国交管理団体から発行してもらい、提示しなければここはくぐれない。そういった手続きに時間がかかるために城門は毎日混雑しているのだよ。
城門は北、東、西と3つあるから、誘導はしているのだが・・・何分ひとが多いのが問題だな。」
と風神が説明ているさなか、俺らを乗せた馬車は検問で足踏みしている大量の人たちを横目に顔パスで城門を抜ける。
・・・どうやら、VIPは対象外らしい。
城門w抜けると、商人区が広がっている。各都市からの貿易品が集められ売買されていて、土産屋、雑貨屋、よろず屋、飲食屋台などが列挙している。
主に国民はここで買い物するのだそうだ。正面北城門から街の中央を貫くメインストリートを馬車は駆けていく。
窓から見える光景は素晴らしい。
屋台では人が手のひらから炎を出し肉を焼いているし、馬車から荷降ろしをしているものは荷物を空中に浮かせている。
空中をふわふわと浮く人までいる。夜中なのに人々は元気で活気にあふれている。
「ほら見てください!もうすぐリフトですよ!」
リーゼロッテの指差す向こうにガラス張りの半円状の建造物が見えた。
その建造物は街の頂上部まで町を貫くように建っている。どうやら、この建物の中に”リフト”があるらしい。
リフトの門も城門のように顔パスで通過し、建物内の円形の台の上に馬車が乗った。
リフトは円状の地面がエスカレーターのように上に上がる仕組みのようだ。
風神が話してくれたが、この人や馬車をのせる円状の地面は下部と上部に1つずつあって、ケーブルでつながっている。それを引っ張り合うことで上下に移動するようだ。
リフトは2組あり、一つの円状の地面に馬車10台は搭載できる広さ。スケールがでかすぎる。
一つの層(区)に1~3駅があり、それらを経由して頂上部の本部まで行くらしい。
馬車でなければ客車を利用できたそうだが、護衛しきれないそうだ。
そりゃそうだ、こんだけ人のいる大都市で電車のような乗り物・・・。
おれは現代でその恐ろしさを知っている。
おしくらまんじゅうはゴメンだ。
馬車の窓から外を見る。ガラス張りの建造物なのもあって眺めがいい。
さっきいた商人区がどんどん小さくなっていく。上を見ると、白く空にも届きそうな建造物、風神隊本部がどんどん巨大に迫ってくるように見える。
「でけー・・・」
真っ白な塔だ。そうだな・・・スカイツリーと六本木ヒルズを足したような建物。
高さはそこまでではないけど、風神が言うには30階まであるそうだ。
3000mの山肌に30階建て・・・恐ろしい高さだ。
リフトは数回駅で停車し、ついに頂上部についた。
ルフトから降りて、そのまま馬車であの白い塔のたもとまで走る。
その立地のせいか後ろを見れば空しか見えない。
キキーッ!!
馬車が止まった。どうやらついたらしい。
「つきましたね。さぁ、聖王様!!長旅お疲れ様でした。そしてようこそ!ここが私達の所属する七星賢者隊風神隊本部です!!」
リーゼロッテが勢い良く馬車の扉を開けた。
夜光石:この世界の夜の光源。見た目は郷土品の蛍石のような見た目で、魔力を得ると緑色に光る。
エアロヒル:風の国の首都。諸国の中で最大の人口と魔法技術を誇る。
リフト:タテ型構造都市エアロヒルで大型の荷物や馬車を運搬するために使う巨大なエスカレーターのようなもの
客車:エアロヒル内を移動する際に人々がのる電車のようなもの
風神隊本部:3000m級の斜面にあるエアロヒルの頂上部にある風神隊の本部。白い建造物で30階建て。