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神と俺の可能性~俺が未来で神になる経緯!~  作者: マロニエ
序章 拝啓、新世界
6/23

馬車に揺られて1

世界樹周辺に聖王を神とする聖王教徒が集まり始めた!

風神たちは一刻も早く首都に向けて出立するという。


俺はその道すがら期待に胸躍る話を聞いたんだ!

・・・目が腫れぼったい。

外で鳥がチュンチュン言ってやがる・・・。

これが俗にいう朝チュンか。


---そんなことはない。


日本にいた頃の建造物とは違う。

見慣れないいつもの二倍は高い天井の部屋。

「そうだよな。俺いま異世界に---いや、未来にいるんだよな。」


実感がわかない。

隕石によって人類史は滅び、その2000年後の世界に今自分はいる。

昨日聞いた話がフラッシュバックする。


コンコン

優しげにドアがノックされた。

「はい、どなたですか?」

「おはようございます。リーゼロッテです。失礼致します。」


リーゼロッテさんの登場だ。

昨日はあまり見ていなかったが、改めて見るとものすごく美人だ。

栗色のロングヘアを持ち、緑の瞳。

そして結構なわがままボディー・・・。

そして服装もよくよく見ると風神の従者なだけあって、なかなかこった刺繍の入った立派な服じゃないか。

「あのー、大丈夫ですか??」

「あっ、すみません。」

やばい、見とれてた。


「本日の予定ですが・・・今より約1時間半後にこちらの詰め所を出立します。聖王様にはそれまでに身支度を済ませてもらいます。」

「えっと、分かりました。でもそのまえに、シャワーってあります??」

昨日の酒席のあとそのままベットにダイブしたんだ。体が気持ち悪い。


「シャワー??えっと・・」

シャワーが何かわからないのか・・・

俺は体を洗うジェスチャーをしてみた。

「あっ!湯浴みですね!?かしこまりました。兵士用の浴室ならありますが・・・

そちらで良ければ・・・。」

「うん、それでいいよ。とりあえず体を洗いたいんだよ。」


◇    ◇    ◇


「ううっ・・・寒っ!」

案内された浴室は、タイル張りの一室で真ん中に井戸があり

水を汲み上げそれを浴びるという簡易的なものだった。

もちろんお湯なんぞ出ない!


「まさか、お湯でないとか・・・でもそんなものか。」

異世界なのだから、ウォーシュレット付きトイレ、温かいお湯の出る浴室、エアコン・・・文明の利器は期待するのはお門違いというものだろう。

トイレにもいってみたのだが、パピルス?みたいな葉っぱを重ねて押しつぶしたような紙だった。

まさかここで歴史の教科書の内容が役に立つとは思いもしない。


---ちょっとホームシックになりそうだ。


トボトボ廊下を歩いているとリーゼロッテが正面から走ってきた。

「聖王様!申し訳ありませんが予定を30分前倒して出発致します!私についてきてください!!」

「えっ??ちょっちょっと!」

強引に手を握り、引っ張られる。


「な、何かあったんですか?」

「はい!実は聖王様の登場がすでに大衆に広まっています。

現在、この世界樹周辺に聖王教徒の集団が集結し始めており、国境付近で混乱が起きているんです!!」

「聖王教徒??」

「聖王教徒とは600年前に魔王を滅した聖王を主神とした宗教・・・聖王教を信じる人達です。彼らは聖王登場を心待ちにしていたんです。

そんな中、世界樹に伝承通りに聖王が登場したんです。となれば・・・どうなるかはわかりますよね!!?」


おれは歩く聖地みたいなものになったらしい。

つまりは、聖王教徒からみれば俺は拝める対象で、そのためにここ世界樹に集結し始めている。

で、出立を急がないとそんな大衆の海をかき分けていかなきゃいけなくなる。

うわー、絶対嫌!


「聖王様が降臨された時、すでに世界樹の周りには多くの教徒がいました。ですがそれはほんの一部です。

国境警備隊から聖王教の神官率いる集団・・・約200名が通過したと連絡がありました。そして、予想ですが他の地域からも教徒は集まるはずです!!

いまは聖王教にかまっている暇はありません!それこそ、聖王教の神官に捕まればどこへ連れて行かれるかわかったものではありませんからッ!」

この世界でも宗教と言うのは厄介なものなんだろう。そしてそれに俺自身が巻き込まれることになるとは思いもしなかった。


◇     ◇     ◇


そんなわけで俺はリーゼロッテに手を引かれ、そのまま馬車に突っ込まれた。

ってなわけで、今俺は馬車の中だ。周りを詰め所の前で見たユニコーンの騎兵10名ほどが取り囲み、護衛されている。

物々しい警戒態勢とはこれを言うのだろう。まるで来国したVIPの気分だ。


横をリーゼロッテさん、正面には風神が座ってる。

ゴトゴトと車輪の回る音をBGMに沈黙が続く。

二人は外を見ている。警戒しているのだろうか。

馬車は木の鬱蒼と茂る森を抜け、開けた場所に出た。それと同時に風神が口を開く。


「大変失礼しました。いま首都へ続く大きな街道に出ました。ここまでくれば取り囲まれる危険はないでしょう。」


整備された広い道だ。2車線道路くらいの幅はあるだろうか。

車輪の刻むBGMも不規則なものから、コトンコトンと規則正しい音に変わっていた。

窓から走っている道を見てみると、レンガが丁寧に敷き詰められ、他にも馬車が数台走っている。


「この街道を1日走れば首都につきます。それまでに聞きたいことがあれば答えましょう。」

「んじゃさ、聖王教ってそんなに厄介なのか?すごい慌ててたみたいだけど。」


風神は前かがみになり、俺をまっすぐ見て話す。

「そうですね・・・。我々の属する七星賢者連合は7つの国と1つの管理団体から構成されます。その連合の民の殆どが何かしらの神を信仰する宗教に属する教徒です。

聖王教はその中でも巨大で、教徒も多いのです。今下手に接触してしまうと、厄介なことになりかねないのが現状です。想像してみてください。2代目とはいえ崇拝していた主神である聖王が伝承通り降臨したのです。

ポピュラーな伝承なので、物見遊山の一般人も動くでしょう。もちろん、先程述べた聖王教徒も動きます。

そして、中でも一番厄介な聖王教徒の上部が国境を超えたのです。

聖王を象徴として恒久平和を唱える彼らですから・・・なんとしても聖王を抑えたいと考えるでしょう。ですから、いまここで聖王教の上部と接触してしまった場合、たぶんですが、聖王様は聖王教に捕まってそれっきりになるでしょう。

それではダメなのです。聖王様には一刻も早くこの世界の見識を持っていただき、力をつけ、その時に備えなければいけないのです。

そう、そういった聖王様を狙う輩から身を守るためにも・・・近いうちに来るであろう魔王と退治するためにもね・・・。」

「とりあえず、聖王教とは関わるのはやばいってことですね。俺も・・・いや、私もちょっとそういうのには関わりたくないです。」


現代でも宗教の問題はいろいろあった。

聖地奪還のためと繰り返される戦争にテロ。

俺の世界の神は傍観主義者でよほど人の血を見るのが好きな様子だった。

でも俺はそんなのみたくないし、関わりたくもない。

この世界にきて早々にそんな厄介そうな団体に巻き込まれたくはない。


はぁーっとため息を付き馬車の外を見る。俺を護衛している騎兵が周りを警戒している。

ん、この騎兵・・・耳の形が・・まさか・・・・。


「風神様、この世界には異人種が居るんですね?」

「仰るとおりです。異人種は確認されているだけでも4種います。

1つはエルフ族。魔法の扱いに長け、おもに地、水、風の三属性を好んで使う温和な種族です。

2つ目は、ドワーフ族。体躯は小柄ですがすさまじい力と大地への見識に優れた種族で、地と火の属性に長けています。

また、金属加工、採掘技術では右に出るものはいません。

3つ目は、エレメンタル。各属性の具現的存在です。魔力が意思を持ち精霊となった姿です。自由気ままな種族で魔力のあるところならばどこにでもいます。通常は透過しており目視はできませんが、精霊術師に使役されているものなどは見ることができます。時々自分の意志で現れるものもいるようです。

4つ目は魔族です。これはモンスターの一部が人間社会に溶け込んだ結果生まれた種族で、人間社会でともに暮らすモンスター全般を魔族と呼んでいます。見た目は様々で、人の容姿をしているものもいますね。

ちなみに先程から見ている騎兵はエルフ族ですね。」


なるほど、王道ファンタジー感でてきたな。

ケモミミっ子とかがいないのは残念だけど・・・いや、魔族に期待しよう!!


「そうだ、話は変わるんですけど・・・具体的に私ってこの先どうなるの?」

「はい、このまま首都につきましたらまず検査を受けてもらいます。魔法適正といって、どれくらい魔法を使う素養があるかを調べる検査です。

そのあとにアーティファクトの儀を受けてもらいます。」

「アーティファクト??それはいったい・・・」

「アーティファクトとは魔術武装の一つです。通常七星賢者隊に属するものしか持つことを許されない固有武装で、その人の個性、魔力等によって形や能力がことなる魔術武装です。」


きたきたきた!俺だけの能力!!アーティファクトッ!!!!

そういうのが欲しかったんだよ!!その人だけの魔術武装!?すげーロマン感じるぜ!!


「そのアーティファクトっていうのは、どういうものなんです?」

聞かざるをえない!


「はい、初代七星賢者と初代聖王様が作られたシステムで、各首都にある大魔石と契約してもらい、そこから魔力供給権とアーティファクト行使権を得てもらい、その後は修練次第でいつでも出せるようになります。

大魔石というのは・・・いや、まずは魔石について話しましょう。通常魔力をもつ石を魔石といいます。魔力を取り出して使えますが、使い切るとただの石ころになります。

しかし、大魔石は魔力の生産機能を持った貴重な魔石で、魔石のように魔力を使っても石ころにはならない魔石のことです。使用量と供給量の均衡が崩れなければ永久機関となることから主に、国のエネルギー供給、隊員の使用する魔力の補助、魔力供給以外にも様々なデータを保存するデータバンクとして利用しています。」


ロマン!大魔石なんて素敵な響きなんだ。

ようやく俺の眠れる力が火を噴く時がやってきた!!

これはワクワクしてしまうぞ!!


「風神様とリーゼロッテさんはどんなアーティファクトを持っているのですよね!!?」


すこし、この質問をした際に空気が凍った気がした。

短い沈黙の後に風神は言う。

「申し訳ありません。私のアーティファクトについて申し上げるわけにはいきません。

国主たる私の能力は露呈すると様々なところに影響が出てしまう。・・・少し特殊で影響力の強い能力なんです。

他国の賢者にはオープンに使うものもいますが、私は・・・立場上申し上げるわけにはいきません。」


深々と風神に頭を下げられた。

リーゼロッテがそれを見てアワアワしている。どうやらこの話題はタブーのようだ。

空気を変えるためにリーゼロッテが口を開いた。

「えっとですね、私の能力であれば教えますよ!私は魔糸ましを出すことができます。この糸は、こめた魔力によって性質が変わり、ものを切り裂くことも、鉄のように固くすることもできます。

ですが、聖王様・・・アーティファクトは通常、隊員の切り札的なもので、常時武器として使う人は別として、自分の能力を隠す人も多いのが現状なんです。他の人に聞くのもですけど、私の能力についても他言無用でおねがいしますね!」


どうやらアーティファクトは軽々しく口外するような話ではないらしい。戦いにおいて自分の能力がバレるのは避けたいのは当然だろう。

そんな話をしながらも馬車は刻々と風の国の首都エアロヒルに向けて進んでいく。


聖王教:信仰するものが多い最大宗教。主神は初代聖王。総本山は光の国にある。

七星賢者連合国:7つの国と1つの管理団体から構成される連盟。

アーティファクト:通常七星賢者隊に所属するものだけが得ることのできる能力・魔術武装

         使用者の個性や魔力を元に作られ、使用者によって異なる力を持つ

魔石:魔力を蓄えた石。魔力を失うと石ころに戻る。

大魔石:通常の魔石のように魔力を蓄える。しかし使いきりではなく、魔力を生産する力も持つ。

    主に首都に1つずつあり、国のエネルギー源等になる。

風神のアーティファクト:タブー。諸外国などに影響力がある程のものらしい。

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