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妖狐と風花の物語  作者: ほろ苦
25/26

サヨナラの口づけ

いよいよ終わりに近づいてきました・・・・・

いつもの大学からの帰り道、見慣れた風景に見慣れた笑顔

風花は英明を見るといつもドキドキして、こんなに人を好きになる事があるなんて思っていなかった


「英明さん!?」


驚き顔が赤くなった風花は携帯を持っていた手が震え出す

まさか、後ろにいるとは思わなかった…

英明は風花に近づき少し悲しい瞳をした


「俺が…妖怪だって黙っててごめん」


そんなこと…

英明が黙っていた事よりも風花は思い出してあげれない事が申し訳なかった


「ごめんは私だよ。思い出せなくてごめんなさい…」


風花の小さく震えた手を英明はそっと両手で包み込む

この手を離したくない

英明は無意識に手に力がこもる


「俺は風花が好きなんだ。多分これは人間でいう恋ってやつなんだと思う。風花を誰にも渡したくない」


いつもの優しい笑顔に熱い瞳で見つめる英明の告白に風花は嬉しくて心が締め付けられ、顔が熱くなり目には涙が溜る


「だけど、俺(妖怪)じゃ駄目なんだ。風花には幸せになって欲しい…」


悲しげに笑う英明に風花は涙を堪え黙ったまま、首を横にプルプルと振る

風花は英明じゃ駄目じゃない。今でも幸せだと言いたいが安易にそんな事を言ってもいいのか解らなかった

何か理由があって、こんな事になっている

それはきっと自分のせいなのだと感じていたからだ


「お願い…妖狐の姿を見せて」


風花は妖狐の姿を見たら思い出すかもと思い、英明に頼むと少し困った表情を浮かべ握っている風花の手を離し目を閉じる

すると、英明の身体は白い煙に包まれ、妖狐の姿に変わった

切れ長の黄色い瞳に少しボサボサ気味の茶色の長い髪からひょこんと出でいる狐耳、服装もまるで浴衣の様な和服をまとった妖狐が現れる

これが妖狐…

風花の中から消えた記憶の妖怪なのだと、マジマジと見る

ふっと笑う妖狐の笑顔に風花は胸がキュっと締め付けられた

英明さんの笑顔だ…

妖狐は風花の肩を優しく掴みそっと引き寄せ抱きしめる

妖狐の胸の温もりが風花を包み、風花は感情が溢れだしまた目に涙を浮かべ額を妖狐の胸に押し当てた


「ごめん…思い出せない…」


小さな震えた声でつぶやく風花の頭を妖狐は撫でる


「それでいいんだ…もういいんだよ」


妖狐は風花の頬に手を沿え、優しく顔を上げる

優しく悲しい瞳に吸い込まれ見つめ合う


「ありがとう…風花」


徐々に顔が近づき、風花の唇と妖狐の唇が重なった

風花はキスに驚き目を見開いて固まっていたが頭の中にココと遊んだ記憶がふいに浮かび上がる

これは…ココの記憶!?

すると今度はだんだんと妖狐の姿が薄くなり妖狐の唇の感触が消えていく

最後に見たのは薄ら笑顔の妖狐の顔…


ココが消えた?

風花は唖然として周り見回すが妖狐の姿がない

右手を口に当て真っ赤な顔をして、なんとか頭で考える


(もしかして、私、妖怪が見えなくなった?)


そう、風花の目の前に今にも泣きそうな顔をした妖狐が立ってた

妖狐は風花の様子を見てすぐに自分が見えなくなったのだとわかった

風花に認識されない存在となった事で風花に見られる事や触る事も出来なくなったのだ

それでも妖狐は風花を抱きしめ目を閉じて微笑んだ


『さよなら…』


妖狐は風花から離れ涙をポロと流し駆け出した



さわさわさわさわ


森の木々が初夏の風に吹かれ葉音を鳴らす

土と緑の臭いが妖狐を落ち着かせる

妖狐はいつもの祠に帰っていた

人間に変幻する事を繰り返し妖力の限界近くまで衰えて頭が痛く吐き気がして身体もだるい、もう体調は最悪で横になっていた

しかし、後悔はしていない

風花と過ごした日々を思い出し微笑みを浮かべる


人間になりたいな…


無理だとわかっていても、ふと思ってしまう

突然ぶわっと風が吹き込み禍々しい妖気が祠に溢れる

その妖気を感じた瞬間、妖狐は顔を曇らせ身体を起こす


「主様…」


祠の中央に白い髪をなびかせ紅い瞳で妖狐を見据える妖怪が立っていた

白く美しい主様はいつもは内に秘めている妖力を放ち、まるで自分の強さを主張しているようだ

ゆっくりと妖狐に近づき顔色の悪い妖狐の顎を持ち上げ目を細める


「妖力を無理して使い過ぎですよ。こんなに弱弱しくなって…」


「主様、俺は約束を守ります。だから、風花をそっとしておいて下さい。」


妖狐は主様の伴侶になる覚悟は出来ていた

これから長い年月この方の傍に使える事で風花の身を守れるのなら、それでもいいと思ったのだ

しかし、主様から意外な言葉が出てきた


「…こんなに弱弱しい妖力では私の伴侶は務まりませんよ」


「え?」


「早く元に戻りなさい…その時考えます」


主様は哀しく微笑み妖狐の額に手をかざす

暖かい光と熱が妖狐の身体を包み、妖狐は深い眠りについた


Kiss・・・・・しちゃった・・・・・

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