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3話 鬼

 午前11:00頃 (土曜日)

今、夜鳴町ではある事故が市民を恐怖に駆り立てていた。ある事故と言うのは夜鳴き町にある工場から極めて有毒なガスが漏れたということだ。その証拠につい先ほどから町の警報アラームとアナウンスが鳴り響いている。

和樹はその頃、自室に籠もって新作のエロゲをプレイしていたのだが、今は外のアナウンスを聞いている。

「どうやら町外れの工場が原因らしいな…、ここまでガスが来る事はないらしいが早めに非難するか」

和樹は全く危機感が無い口調で外に出る支度をした。

和樹の家族は?と言うと、朝から和樹を置いて隣町にショッピングに行ったらしい。


ちょうど支度を終えた和樹はいざ非難しようと部屋を出た瞬間、パリーンとガラスの割れるような音がした。いや、実際に自室の窓ガラスが割れていたのだ。

そして、直ぐに窓ガラスを割った物体に目が行った。次の瞬間、その物体からプシューと何かのガスが噴射された。

和樹がガスを認識した時には既に遅かった…気付いた時には和樹はそのガスを吸い込んでしまっていた「ッ!?」

言葉も出せない程テンパってしまった和樹だが、段々と動きが少なくなっていき、とうとう床に倒れ込んでしまった。

この時、和樹を襲っていたのは急激な眠気だ。つまり先ほどの物体は麻酔玉だった訳だ。

和樹はまどろむ視界の中で二つのガスマスクを付けた人影を見つめた。だが、強烈な眠気には勝てる訳もなく、和樹はそのまま深い眠りについた。




「オイ起きろ櫻井!」

…声が聞こえる。誰だ?

「いい加減目を覚ませ!」

その人物は和樹の頬を叩くと、もう一段階高い声のトーンで言った。

和樹はゆっくりと目を開けるとそこにはドアップで写る斎藤の顔があった。

「うわっ!」

「痛っ!」

俺は情けない声をあげて斎藤の顔に平手打ちを叩き込んだ。

「あ、わりぃ。おまえの顔が近くにあったから…」

「いっっ、お前失礼な奴だな~。俺みたいなイケメン顔が間近にあったらキスしたくなるだろ普通」

「お前、自分の顔を見たことないのかよ…」

ちなみに斎藤はイケメンではない。

「まぁ、冗談はこのぐらいにして…周りを見てみろよ。」

斎藤に促されるまま周りの様子をうかがった所、和樹の周囲には老若男女、いや、ほぼ若い人間ばかりが集められているようだ。

そこで和樹は気づく…

「そうだ!何でこんな所にいるのか分からんが、俺はさっきまで家にいたんだよ。そんで事故があったから非難しようとしたら、急に眠くなって…そんで最後にガスマスクをかぶった不審者が家に!」

「ちょっと、落ち着け櫻井!まあ、俺も…似たようなもんだ」


「あんたたちも、ガスマスクの男を見たの?」

横合いから急に話掛けられたのでそちらの方向に振り向いたら中学生位の女の子が立っていた。

目がクリクリしていてツインテールがよく似合う可愛い子だった。恐らく周囲にいる人々も自分と同じような手段で連れて来られたのだろうと和樹は思った。誰しも辺りを見渡して何でこんな所にいるんだ?って顔をしているからだ。

「ああ、不審者が入って来たと思ったんでな、近くにあったバッドで撃退していたら急に眠くなってここにいるって訳よ」

答えたのは斎藤だった。

(何でバッドが近くにあったかは深く言及しないでおこう…)

「それにお嬢ちゃん!年上にはあんたたちじゃなくて、お兄様方と呼びなさい」

「はあ?なに言ってんの?私はあんたらより年上よ!私は紺野ミク、あんたらと同じ高校の三年よ」

和樹は黙ってその会話を聞いていたが途中から「何失礼なこと言ってんだよ」と言うような視線を斎藤に向けていた。

「あんたのことは知ってるわよ、この前転校して来たばっかりだものね。ふーん、なかなかいい男じゃない。仲良くしましょ」

紺野は和樹にそう言って握手を求めてきた。

「なあ、櫻井よ~。このガキ生意気だと思わねーか?」

どうやら、斎藤は紺野が先輩だとは思っていないようだ。

「ちょ、私のことをガキ扱いするなんて生意気な後輩なのね!ボコボコにするわよ」

「上等だ!やってみろよ」

一触即発の状況だが端から見れば斎藤がいたいけな少女をいじめているだけにしか見えないので、和樹は一応喧嘩の仲裁に入った。

「おい、やめろよ二人とも!状況を考えろ。紺野さんも俺らより年上ならもっと穏やかにできませんか?」

「…チィ、命拾いしたわね。斎藤だっけか?今度私のことチビだのガキだの言ったら容赦しないんだから!」

「へっ、それはこっちのセリフだ。それにチビなんて言ってないからな!」

どうやら収まったみたいだ…


和樹は早速情報収集に入った。

「ところでここどこだ?」

「ん?ああ、多分夜鳴町の公民館だと思うぜ。俺はあんまし来たことないから多分だけどな」

「その通りよ。田舎の公民館のクセにやけに広くて…二階も確か有ったわね。」

斎藤が答え、紺野が補足説明してくれた。

「え?じゃあ俺ら普通に帰れるじゃんかよ!」

和樹が把握するにこの公民館にはかなりの人数が存在する。紺野が言っていた二階にも恐らく沢山人がいるだろう…だが、和樹が目覚めて十分以上経った今も誰もここから出て行こうとしない。

「それの事なんだが…俺らも一度は外に出てみたんだが…住民が一人も見当たらないし、何よりそこら中から獣の鳴き声とか聞こえるから奇妙でよ~」

「事故で皆非難してるんじゃないのか?」

「そのことはもうとっくに解決したらしいわよ。警戒注意警報も鳴ってないしね」

そう言われて和樹は外に耳を傾けるが確かにうるさいぐらい鳴っていた警報は聞こえない。それに凄く静かなので帰って奇妙に感じた。

「でもこのままって訳にもいかねえしな、そろそろ出るか」

その瞬間公民館のドアが開いた音がした。

そちらに視線を向けると、見覚えのある人物が立っていた。

「あいつ、池島じゃないか?あいつも連れて来られたのか?」

「皆さん!聞いていただきたい。皆さんは今何故こんな所にいるのか気になっておられるでしょう。何故、夜鳴町には我々以外いないのか。今から全てお話します。」

池島はなにを言い出すかと思ったら、この状況を知っていると言い放ったのだ。

そして中に入って来た、後ろの六人の人影を引き連れて…



「まずは自己紹介をします。僕の名前は池島勇人。高校生ですが、国の頂上現象特殊対策局の局長です。そして、現時刻をもって君たちの上司となる。即ち、全ての決定権は僕に委ねられる事になる。異論は許さない!全員生きて帰りたくば僕に従え!そして、僕の盾となれ!」

池島は館内に入って早々にぶちかましてくれやがった。

(国の局長だと?んなアホな)と誰もが思ったが、池島は自身のブレザーの内ポケットから公務員のバッチを取り出した事で無理やり肯定させられた。

だがそれより…

「はぁ、おめぇ何言ってんだ?俺らの上司だと?何の権限があってそんな事言ってんだ!俺は暇じゃねんだ!」

この発言の人物は皆の心の声を代弁してくれたと言っても過言ではない。

そこで斎藤は気づく、

「あれ?あいつ山村じゃねえか」

「山村?ああ!喧嘩士(笑)のやつか」

どうやら山村も集められていたようだ。そして、チンピラは偉ぶっている奴には反感を抱く性格にあるのかどうか分からないが、池島に突っかかっていた

「さっきも言いましたが、あなた方に拒否権は有りません」

「んだと、こら!」

村山の反発は池島にさらっと受け流される。そのたびに段々と激昂していく村山。

そして、とうとう痺れを切らした村山は池島に掴みかかろうとした所で悲劇が起きた。


村山の首が丸々無くなっていた…

その時、誰もが理解に追い付いていなかった。

そして、五秒後やっとその光景を現実の物と理解した誰かが悲鳴をあげる。

「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

その叫びを皮切りに誰もが目を覆い隠し、悲鳴を上げ始めた。

和樹は特に悲鳴をあげることはしなかったが、それはあまりの事態に脳の処理が間に合わず、茫然としているからだった。

和樹も斎藤も紺野も村山の首から大量に噴き出る血で衣服を汚した。

皆、村山の死亡に意識を奪われて村山の首がどこにも見当たらない事に気づかない。

「皆さん!お静かにしていただきたい。彼は自分と相手の力量を推し量れなかった為に死んだのです。どうか皆さんには彼のように軽率な判断を下さないようにしていただきたい。」

池島は先程の光景などまるで無かったかのように再び喋り出した。


それ以降、誰も池島に突っかかったりする事は無かったが、心に傷を負った人は少なくはないだろう…


斎藤が説明したのは次のようなことだ…

①夜鳴町からほかの町へ行く全ての道の封鎖

②夜鳴町に現れる鬼と呼ばれる異形の者達の話

③自分たちが集められているのは自分たちが異形の者たちと渡り合える最初で最後の砦だと言う話

④斎藤達ー生徒会には独自に鬼と渡り合える力が有る事

⑤鬼たちを葬る重要性とそのための策が有る事


和樹はあまり真面目に聞いてはいなかった、どこかでコレは夢なんだという気持ちが有るからだ。

斎藤は何故か興味津々といった風に聴き入っていたが…


和樹が理解する限り、池島が言っていることはこうらしい…

遥か昔から色んな所で鬼は出現していたらしい。それがある時は童話になったり、親の言い付けを守らない子供に鬼が出るぞと言うような戒めの曲が作られていた事は極一部の人間しか知らない。

鬼達に対抗する事が出来た人間は昔から限られていたそうだ。もし、それ以外の人間が鬼を倒しても瞬く間に回復してしまうそうだ…

江戸時代中期に予言視の異能を持った人間が予め鬼に対抗する事の出来る人間を自身の能力により調べて、名前を記録していたらしい。

これにより当時は鬼による被害を最小限にとどめておけたらしい。

ここからがミソなんだが、実はその記録書には現在の記録も有るのだそうだ。

その記録書は現在夜鳴町の夜鳴山のお寺に大事に保管されていることは余談だ。

そして、当に今日!人類の運命が掛かっている…記録書によると今回、初めて人類が鬼に負けると有るからだ…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

今回少し長くなりました。

相変わらず説明ばかりですが、今後の展開と繋がる上で重要な事なので、すみませんが許して下さい。

あと、村山君はネタキャラです…ごめんなさい全国の村山さん<(_ _)>

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