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2話 日常

 お兄ちゃん起きて、ごはんだよ、ブレイクふぁあすとだよ!それにいい天気だよ!」

本日は水曜日…つまり学校がある日だ。

晴れ渡った青空は登校と言う名の憂鬱を打ち消してくれる…訳では無いのだが、学生の本分は勉強なので基本休むわけにはいかない。和樹も言わずもがな、なのだが…和樹は昔から起きることに関しては全くダメダメなのだ。

なので、こうして毎日のように和樹の妹である櫻井琴音〈さくらいことね〉が和樹を起こしているのだ。

「…琴音ぇ~、俺は今世界の平和を脅かす化け物たちと戦っているんだ…だから…もう五分頼むよ、マイシスター…zZ」

「ちょっ、なに言ってるの!起きてよ~!お兄ちゃんのその五分は一時間以上なんだから」

これが櫻井家の朝の光景だったりする。


余りにも和樹が起きないので、とうとう和樹の布団を剥がしかかった琴音だが、どうやらその一手は悪手だったようだ…なぜなら健全な青少年の朝というのは色々とギンギンになってるわけで、和樹も例に漏れず自身の聖剣をエクスキャリバーしているのだった。

「っ!…お兄ちゃんの変態!!」

行ってしまった…

「お兄ちゃん泣きそうだよ…グスン」

というような一幕が有ったり無かったりで和樹はまた電車に揺られながら学校に向かった。


ー学校にてー

和樹がこの学校に転校してきてもう直ぐ一週間になる。そして、この学校での立場と習慣が確立してきた頃合いでもある。

その習慣の一つに隣の席の姫路明との朝の対話が含まれていた。

「おはよう姫路さん」

「うむ、櫻井殿もお元気そうで何よりだ!だが、相変わらず眠そうにしておるな。そんなことではいざ戦いになった場合どうするのだ?」

「いや、そもそも戦いなんてないだろ、毎回思うがそんな刀もっていったい何と戦うんだよ?」

「…鬼だと言ったら貴殿は信じるか?」

「悪いが信じるもなにも、俺はあんたの言ってることなんて一から十まで信じちゃいないよ」

と言うと姫路は少し残念そうな顔をしたが、またいつもの活気を取り戻した。

「…だがまぁ姫路さん、あんたが真剣なのは痛いほど分かった。でも俺以外の奴の前で鬼やら戦うやらは言わない方が良いぜ…っても、もう遅いよな…」

当たり前の事だが転校生の和樹よりクラスの奴らのほうがよっぽど姫路の事を知ってる筈だ。その証拠に彼女の周りには誰も寄っては来ない。ふざけて中二病をこじらせているならまだ救いがあるが、彼女の場合はガチなのだ。


姫路とあれこれ話していたら担任が来た。転校初日に誰かにハゲマッチョと呼ばれていた人物だ。和樹自身、余り関わりたくないタイプだ。

「うーし、出席確認するぞー!…ん?斎藤が居ないみたいだが」

ガラガラガラガラ

「セ~~~フ」

「アウトだ!バカたれ、斎藤お前、今回で何回目の遅刻だ?いい加減にしろよ、今すぐ校庭三周して来い!!」

先ほど教室のドアを勢い良く開け放った人物は斎藤佑真〈さいとうゆうま〉という人物で、クラス一の問題児だ。

彼は教室に入って来て早々に校庭に向かい、俺らの教室に手を振りながら走っている。変な奴だ。

だが、姫路と違い人気が有り、毎日が楽しそうだ。

(俺にもその元気を分けてほしいぐらいだ)

和樹はドラゴン○ールの主人公が元気玉を作る時の発言らしきことを心の中でつぶやきながら授業の準備をした。



昼休みになり、俺は斎藤グループと呼ばれる斎藤とその他数名と一緒に弁当を食べていた。

実のところ和樹は友達を作るのは苦手なのだが、それを察したのか斎藤達が気さくに話しかけてくれた。おかげでこうして誰かと一緒に弁当を食べる事ができている。

「それでさー転校生君、姫路のこと興味あるのか?」

弁当を食べていたら急に斎藤が俺に話をふっかけてきた。

「いい加減転校生君は止めてくれ!それに、別に興味なんてねーよ。」

「ホントかよ?その割に毎日話しかけてるじゃん、興味ないならそんなことしないだろ。今日だってそうだし…」

「お前今朝遅れてきたじゃんか、何で知ってんだよ?」

「ああ、それのことか。実は俺は誰よりも早く学校に来ていておまえ等に見つかりないように教室外に隠れてたんだよ。んで、チョイチョイ教室の中を見てたってワケ。」

「何の意味が有るのかが分からんが、お前の意味わかんなさは今に始まった事じゃ無いもんな…」

斎藤が言うには遅れてやって来ることでクラスメートの注意を引き、人気者の気分を味わいたいということらしい…それで校庭を走らされていてはせわがない。

「でも本当に姫路は止めておけ、ぱっと見キリッとしていて美人だがあいつはおかしいからな」

(いや、お前が言うなや)

「ここだけのところ…あいつ、気にくない奴は得意の剣道でフルボッコにするらしいぜ。野球部の自称喧嘩士こと村山薫〈むらやまかおる〉っていうやつが三年にいるんだが、姫路はそいつと取り巻き二人を瞬殺したらしいぜ。

あいつはマジでやべぇからな、分かったか?」

聞いたところ姫路は只ならぬ力を持っていることが伺いしれるが…そもそも村山なる人物がそれほど強いとは思えない。何たって自称喧嘩士(笑)なんだからな。それに女の子に三対一で喧嘩を売るなんて恥ずかしくないのかよ。聞けば聞くほど村山の小者臭が漂ってくる。

「分かったか?って言われても、元々そんな気は無いからな!」

「分かった、分かった、そうムキになるなよ」

こうして斎藤達と下らない話をしていたら、直ぐに昼休みが終わってしまった。


放課後になり、和樹は目にも留まらないスピードで帰宅準備をしていた。まさに帰宅部の鏡である。


ー生徒会室にてー

夕日が差し込む生徒会室では現在、二人の人物が何かの話をしていた。

「会長、彼ー櫻井和樹について調べ終えました。」

「ご苦労様。相変わらず仕事が早いね、雛形さん」

「いえ、会長の命令ですので。それに今回は安藤さんにも手伝ってもらいましたのでいつもより負担が掛かりませんでしたわ。」

「そうですか…では、調査の結果を報告してください。」

「はい!結果を言いますと彼は白です。生まれも育ちも至って普通、強いて言えば彼は幼い頃から転校が多く、一定の場所に留まっていたことが無かった…と言う事ぐらいだそうです。 

そして、この一週間彼の行動と人との交友関係を見る限り特に怪しい動きは見られませんでした。なので、もはや彼を警戒する必要は無いと思います。」

「ふむ、そうか…聞く限り彼に何かの意図があって転校して来た訳では無さうだ。僕個人としては彼が姫路明と交友関係を結んでいた所は気になりましたが…これ以上、彼について議論する必要性は無さそうですね。また、彼の名が新しく名簿に刻まれたことは気になる所ですが、前例が有るという事なので気にしなくていいでしょう。」

「では彼も参加する事になるのでしょうか?」 

「人が多ければ多いほど僕の力は強まりますから、彼にとっては残念なことになるでしょうが…如何せん、名簿に名前が載ってしまった時点で、すでに彼の運命は決まってしまったと言ってもいいでしょう」

「分かりました。では、三日後までに手筈を整えて置きます。もうすでに夜鳴町に入る道は全て塞いで有りますので、大方の準備は整え終えてあります。後は来るべき時に備えてしっかり休養を取るだけです。」

雛形が話終えると池島は静かに目をつむる。

池島のこの仕草は独りになりたいと言う合図なのだ、長年付き添った雛形にとって彼の考えていることは手に取るように分かる。なので、雛形は静かに頭を下げて退室した。


独り残された池島は自身の座っている椅子から立ち上がり、室内に完備されている珈琲メーカーで珈琲を作った。池島はかなりの甘党なのか、その珈琲に

スティックシュガーを五本丸々入れた。


今、池島の両手には二つの物で締まっていた。右手に先ほどの珈琲、左手にタブレットの端末だ。

池島は端末をいじりながら難しい顔をしていた。

「…三日後に現れる鬼は三~四体…、犬と武者と座敷わらし、残りは不確定…。人型が二体いるのがせめてもの救いだな…。恐らくは武者と座敷わらしには知性がある…ならそれ程恐れる事もない。問題なのは犬の方だ…。恐らくは災害級の鬼だと思っていていいだろう。対するこちらの戦力は生徒会役員六人と姫路明とその他一般市民九十人。

武者と座敷わらしを先に倒してから犬を叩くのが適当だろう…。最悪市民全員を犠牲にしても僕は責任を持ってEXの覚醒者である生徒会役員を守らなくてはならない。

もしそんな事になったら彼に恨まれるだろうな…いや、僕は必ず成功する!そのために国中に十三人しかいないEX使いを総理から派遣してもらったんだ。だから大丈夫!僕の力と彼らの協力さえあれば倒せない敵は居ない。それが例え災害級の鬼でも…」

甘い珈琲を一気に飲み干した池島は固い決意のような独り言を言いながら、三日後に訪れる鬼との戦争への最後の作戦を練る事に神経を注いだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

前振りが長くなってしまいスミマセン(o_ _)o

次回からやっと殺し合いを始めます。 

ちなみにEXとはExceptionally talentedの略で異能と言う意味です。作者は只、異能と書くだけでは何か物足りなかったので、そうなりました。

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