プロローグ
プロローグ
ー小学校 2F 廊下ー
(嫌だ、嫌やだ、死にたくない!)
唐突にすまない、今俺はこれ以上に無いほど危険な状況下にある。なので手短に説明しよう。
…その前に
「ガァァァ!!」
(っぶね、死ぬかと思ってた)
俺は間一髪の所で奴…俗に言うケルベロスに全力で追われている。
……うん、何を言いたいかお兄さん分かってるつもりだけど、そこは、ほら…あれだ…プロローグだから許してね。
話を戻すが、マジで死にそう。
だってあいつマジだもん。次の瞬間、俺はつま先を何かにぶつけて顔面から躓いてしまった。
「グオォォォ!!」
「ヒィ、こっち来るな~~」
(あっ、もう無理…終わった…)
ガラガラガラガラガタガタガタドドドドドドガシャーン
凄い音が鳴って、奴は俺の前からいなくなっていた、いや違う、奴は凄い音と共にF1に落ちて行ったのだ。
「ハァ、ハァ、ハァ、た、助かったのか?」
この学校はかなり老朽化が進んでおり俺、桜井和樹<さくらいかずき>が今し方何かの木材に足を取られ大胆に転んでしまった衝撃で後から来たケルベロスは耐久力0パーセントの床を踏んでしまったと言うわけだ。だが、そもそも奴の巨大でこの廊下を渡ろうとしたのが間違いだろう。
とにかくこれで、状況説明が出来そうだ。
まず、なんであんな化け物に追われているのか?
答えは簡単!今はある儀式の真っ最中で奴を含めた化け物(神の使徒なんだそうだ)をすべてブチ殺さなくてはならないんだと…ふざけんな!
そして、今俺が居るのは夜鳴町<よなきまち>って言う狂った町だ。俺は最初から変なん所だと思っていたんだよ。住民も何だか暗いしさ…親の転勤って言う事情がなければ、絶対に来ないね。
最後に、俺の事だな…改めて自己紹介する、桜井和樹って言います。カズちゃんって呼んでね。
高校二年の17歳、顔は上の中(自称)、帰宅部、ちょっこしオタク、今は訳あって化け物とバトルロワイヤルをしているている…笑い事では無いのだ。
ー小学校 体育館ー
そしてさらに笑い事ではない事態に遭遇している
ついさっき襲われたので学校から既に避難しておいた。今は校舎と別れて建てられている体育館に来ている。
奇跡的にケルベロスは撒くことが出来た。そのせいで、かなりの体力を使ってしまったのだが…今、目の前には立派な鎧を着込んだ身長190センチは有ろうかという大男がじっと俺を睨んでいるのだ。
直感でわかる…
「お前も…化け物なのか…?」
その答えは、大男の持つ刃こぼれの無い立派な太刀が俺に向かって振り落とされた事により確実のものとなった。
無論、奴の太刀を受ければ死を免れないだろう。そう思わせるほどに奴の太刀は禍々しいオーラを放っているのだ。
だが、俺は無傷だった。それもそのはず、俺と奴の間は距離が十分に離れているので、奴の太刀は虚しく空を切るだけだった。
にもかかわらず、奴は首を傾げて「何で切れていないんだ?」っていうような態度で己の太刀を凝視している。
(今だ、逃げるぞ)
俺は回れ右をして一目散に体育館をぬけて、とりあえず町の公民館を目指した。
「何なんだよ、さっきから俺を見ては真っ先に殺そうとしやがって!俺が何をしたって言うんだよ、クソッ」
ー住宅街付近ー
道すがら、無残にも食い散らかされた女の子の死体があった。逃げていたのでよく確認出来なかったが右腕と左足が根元から無くなっていた。
「は、ハハハ、なにこれ?夢をみてるみたいだ」
俺はどうかなってしまったみたいだ。
余りにもグロテスクな物を見てしまったので和樹の足は自然と止まっていた。
「う゛、ゲホ」
そして吐いた。
無理もない、和樹は一般人で特別強い精神力を持ってる訳ではないのだ。
そこに追い討ちをかけるようにぬっと木の影から小柄な人影が出てきた。
和樹がそれに気づいたのはその人影が5メートル程近づいた時だった。
「ッ!?」
言葉が出なかった…その人影は小学生位のパッと見、可愛い女の子だった。だが和樹が見ているのは少女の容姿ではなく少女が今、美味しそうに食べている人間の足だ。
バリボリバリボリと、骨ごと食べている。
和樹は戦慄した。
その子をよく見てみると、とてつもなく鋭い歯がずらっと並んでいるのだ。それはジョーズのような歯で、とても人間のそれとは似ても似つかぬものだった。
つまり、化け物だ。(エンカウント率高すぎだろ!)
「…もう、やだ…」
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思い返せば、全てこの町に来たことがきっかけだった。こんなことになるなら自分だけ元の町で暮らしていれば良かったんだ。だが、今更なにを言っても遅いのだ…