表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

僕の中の神父が死ぬ事について

作者: 大内

青白い月の光が暗い部屋の中に入り込んできた。その時になって僕の中の神父がおぞましい鈍器ようなモノで誰かに撲殺されているのに気がついた。

それは神父と言えるようなものでも無いほどに暴力的にそして確実に殺されていた。

まるで神父がそこに生きていた事実を頭から否定するかのように…

確かに神父は僕の中で生きていた。

昨日もウィスキーを飲みながら1人娘の話を(僕はその話いったい何度聞いただろうか)楽しそうに話していた。

僕は神父をそれまでにも何度も殺されいる。(あるいはそれは僕が殺してきたのかも知れない)しかし彼はもう誰にも殺される事はないだろうと思っていた。

僕もそのために最善の注意を払ってきたつもりだった。

しかし神父はまたしても理不尽にそして完膚無きまでに殺された。

そこには再生の余地はない。

それは僕にもわかる。

少し前まで神父の形をとっていたその肉の塊を見ていると僕は酷く悲しくなってきた。

誰だって神父を殺されたくなんかないのだ。


空になっていたウィスキーのグラスに少しずつ孤独と不安と恐怖が満たされていく。

それらは月の光に照らされて綺麗な光沢を放っていた。

暗い部屋の中で彼らは奇妙に混じり合い不気味な虹を作った。

それを見ているとなんだか悲しみが癒されいくような気がした。

不気味な虹は僕の周りを執拗に取り巻いて最後には僕を完全に支配した。それからは僕の中に神父が住むことはなくなってしまった。

彼らが住んでいた教会さえ僕の中にはもうないのだ。

悲しみが損なわれる事が何より悲しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ