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九十九番目のアリス  作者: 水乃琥珀
49/75

46. 年上の 男アリス登場

 年上… だからといって、色男とは限りません(笑)


※誤字 修正しました

  ウソをつけるくせに、こういう時だけは 真実を言ってくる。

  真実を言った方が、相手にダメージを与えられると わかっているから、あえて そうする。


  計画的で、利口で、そして 卑怯だ。


「ウサギさんが許されるなら、俺のことも 許せるよね?」


  賢者ニコルとは 別の意味で、笑顔を崩さない。

  相手を傷付けて、でも それが真実ならば、責められることもない…… そして、自分の《存在》を、強烈に残してくる《厄介な男》。


「私を動揺させようとしても、ムダよ。 変人集団に囲まれていると、何が起きても、段々 驚かなくなってくるんだから」

「…… えー、そうかな? アリスちゃんて、けっこう意地っ張りだよね~」

「…… 蹴っ飛ばされたいのかしら?」

「可愛いって 言ってるだけなのに~」


  何事もなかったように、叶人は 城の廊下を ずんずんと歩いていた。

  白ウサギに 教えられた部屋は、あともう少し。

  揺さぶりをかけてくるような 《面倒な男》など、部屋の前で サヨナラしたい。


「あなた、モテモテのくせに いろいろ間違ってるわ。 ちゃんと 《好き》なら、意地悪しないで 《優しく》すべきよ」


  『好きな子には イジワルしたい』と、彼は以前 言っていたが。

  叶人からすれば、そんな歪んだ 《愛情表現》など、お断りだ。


  好きなら、笑顔でいてほしいと思う。

  幸せであってほしいと思う。


  泣いていたら、きっと抱きしめてあげたくなるのだろうし、涙を止めたいと 必死になるだろう。


  悲しいことに――― まともに 《恋愛》をしたことが無いから、想像の域を越えないのだが、自分なら、そういうふうに 《大事にしたい》と思うはずだ。


  傷付けて、喜びを見出すなんて…… そういうのが 《趣味》なら、そういう店に行けというのだ。


「…… アリスちゃん、実は 俺のこと好きなの?」

「はぁ!? 何で、今の会話の流れで、そういう 《解釈》になるわけ?」

「え、だって…… 俺に優しくされたいんでしょ? つまり、俺のことが それだけ好きだと……」

「――― 無いわ、絶対に、無いわ」


  この男は、始めから 苦手だった。

  厄介で、面倒くさくて。

  現在、その認識は 増すばかりである。


  《同族嫌悪》ともいえる。

  彼のことばかり 非難しているが、実は 自分によく似ているから、余計に 腹が立つのだ。


  知ろうとしなくても、自然に 理解できてしまう――― 《似た感覚の持ち主》とは、まさに このことだろう。

  違いがあるなら、《実行する》か《しない》かだけだ。

  兵士長は 実行し、叶人は しない。 ただ、それだけ。


「イジメて楽しみたいなら、他をあたってちょうだい。 面倒ごとは 大嫌いなの。 私は忙しいのよ。 これ以上、厄介なことを増やしたくはないわ」


  裁判が終わったので、この後は 女王主催の《舞踏会》が始まるのだろう。

  招待状を頂いたので、叶人も 皆と参加する予定だ。


  制作途中だった、シンデレラに 依頼した 《靴》も、帽子屋に依頼した 《新しい衣装》と 《舞踏会用のドレス》も、今日中には 仕上がると聞いた。

  繰り返すようだが、いろいろと 忙しい。


  この三日間、町で 必需品などを買いながら、情報収集をしつつ、アリスとして 《依頼》がないか 歩きまわっていたのだが―――。

  結果として、成果はゼロだった。


  ネバーランドを解放し、お茶会をクリアした 《九十九番》の噂は、確かに広まりつつある。

  けれど、それだけでは、足りない。

  住民たちに 頼られるようになるには、もっと 《経験》と《実績》が求められるらしい。


  世界に来て、わずか 十一日目という、まだまだ新米アリスでは、不安の方が大きいようだ。


  現在 五個に増えた ドロップだって、相手の 《好意》でもらったものでしかない。

  正式に依頼されて、達成して 得たモノなど、始めの一個――― インディアンの ヒックス少年の時だけだ。


  これでは、いけない。

  ゲームを終らせるためには、百八個のドロップが必要となる。

  依頼の 大きさには関係なく、とにかく 数がいるのだ。


  そんなことを 考えていると、数人が モメているような声が聞こえてきた。

  ふと 前方を注意して見ると、城の兵士数人と、誰かが 口論をしている。

「あれは…………」


  色合いだけで、すぐに 見当が付く。

  水色のワンピースに、白いエプロン。

  間違えなく、初期の アリス装備だ。


  しかも、けっこう背が高い…… 男だ。 年齢も、子供ではない。

「大人……?」


  今まで 叶人が出会ったアリスは、二人である。

  一人目は、突然 襲いかかってきた、金髪シュワちゃんこと――― 四十三番の バルド。

  二人目は、今では仲間となった、少年アリス――― 八十一番の 瑞樹。


「…… アリスって、なにげに 男が多いのかしら?」

  そういえば、赤ずきんと最初に会った時も、『女の子は久々~』のようなことを言っていた気がする。


「ん~、そう言われてみれば、そうかもね。 男女比でいえば、七対三 …… みたいな?」

「そんなに? …… っていうか、それだけ男が多いのに、まだ 誰もクリアできていないって、どういうことよ?」

「男ってのは、《誘惑》に弱いんだよ。 この世界には、ありとあらゆる誘惑が溢れているからね~」

「…… 男って、サイテー」


  冷たい視線を放り投げて、叶人は 足を進めた。

  どうせ、目当ての部屋に行くには、このまま 前進するしかない。


「こんにちは」

  とりあえず 男アリスがいるのだから、邪魔しても悪いだろうと思い、挨拶だけをして 横を通り過ぎる。

  特に 関わり合いたくもない時は、素通りするべし――― これは、経験から得た 《教訓》なのだ。

  ところが、自分の意志とは無関係に、世の中が動いていくのも、また事実であり……。


「お、お待ち下さい、アリス様!」

「我々のお願いを、どうか聞いて下さい!」

「!」


  背中に向かって そんな言葉をかけられたら、止まらないわけにはいかないだろう。

「兵士長とご一緒なので、九十九番目のアリス様だと お見受けします!」

「…… 何で 兵士長と一緒だと、そういう認識になるのよ……」

  何だか セットにされているみたいで、ものすごく 不本意だ。


「いや~ 嬉しいね、その言われ方」

「冗談じゃないわよ、こっちは。 …… それで、私に ご用なのかしら?」

  立派な 男アリスがいるのに? ――― という意味を込めて、兵士数人を振り返る。


「はい! 九十九番目のアリス様、どうか……」

「どうか、この 《七十九番目のアリス様》を、説得して下さい!」

「………………… はい?」


  頼まれた 《お願い》は、なんだか 妙な お願いだった。






「俺は、馬場ばば 幸志こうじ。 番号でいうと、七十九番だ! お前は?」


  適度に 日焼けした肌に、昔でいう 《スポーツ刈り》のような 短い髪、明るくて 人懐っこそうな笑顔。

  年齢は 二十代後半から 三十代前後。

  叶人と 同じ歳か、はたまた 少し 上のような印象だった。

  そして、《ザ・お人好し》の看板でも ぶら下げていそうな、なんとも 《イイ人そう》な雰囲気は、兵士長にとったら 《大嫌い》のど真ん中であろう…… と、真横を見てみると。


  …… 案の定、笑顔は笑顔でも、殺気が うっかり漏れてしまっている。


「…… 兵士長、殺気が流れ出てるわよ、しまって」

「あはは~ 生理的にイヤだと感じると、無意識に 出ちゃうよね、こういうのって」

「普通は 出ないから。 あ、ごめんなさい、この人 短気だから 気にしないでね?」

「?」


  黒いオーラの兵士長に気付き、兵士たちは すくみあがっているのに、目の前のアリス――― 馬場 幸志は、ちっとも 気にする様子はなかった。

  …… というより、気付いていないような気もする。


「私は 九十九番目のアリスで、芹沢 叶人よ。 …… それで、何をモメていたのかしら?」

「ああ、この花のことなんだが……」

「花?」


  兵士が後ろへ下がると、そこには 太い茎が一本、床に置かれていた。

「…… この花?」


  緑色で、若干 太すぎるような茎には、葉は 一枚も無い。

  ただ 先端に、ぷっくりと 膨らんだ、淡い緑色した 《蕾》があるだけで。

「花にしては、ずいぶんと 大きくない?」

  人間ひとりくらい、余裕で飲みこんでしまえるような、そんな 大きさだ。


「ちょっとコレ、人喰い花とか、そんな類いのものじゃないでしょうね?」

「それがさ、みんな そうだと思って、住人から 《依頼》されたんだ。 近くの空き地に コイツが現れたんで、《撤去》してほしいってさ。 撤去したはいいけど、どうやって 《処分》すればいいのか わからなくて、とりあえず 城に相談に来たってわけだ」

「なるほどね……」


  蕾が開いた時に、何が起こるか わからない。

  この世界というのは、とにかく 何が起きても 不思議ではないのだ。

  危険なモノならば、早々に 撤去する ――― という、住人と 馬場幸志の考えは 正しいのだろう。


「でも、綺麗な 花ね…… まだ咲いていないけど。 燃やすか なにか するんでしょうけど、勿体ない気もするわね」

「アリスちゃん…… 君ってば、また そういうことを言って~」

「そういえば、説得って どういうこと?」  

「そこなんですよ、アリス様!」


  兵士三人は、一斉に 叶人へと 詰め寄った。

「男アリス様は、この花を燃やそうとしたり、刃物で切ろうとしたり、いろいろ なさってくれたみたいです!」

「うん、それで?」

「何をやっても、この花は 《無事》だったらしいんです!」

「…… 何をしても、無事?」

「それで、あとは 《魔法》しかないと言って……」

「よりにもよって、我が 女王様に……」

「この花を燃やしてくれと、頼みたいからと……」

「ぼっ…… 僕らは、ただの 一介の兵士でしかありません!」

「そんな 僕らが、気軽に 女王様に お願いできるわけがないんです!」

「そんなことをして、もしも 女王様の ごきげんを損ねてしまったら……!」


  僕らは、まだ 死にたくありませぇぇぇん!!!


  廊下に響き渡る、兵士の 泣き声に、だいたいの 事情は掴めてきた。

「…… それで、このアリスが 女王に会うことを諦めるようにうに、説得してほしいっていうのね?」

「はい、その通りでございます!」

「この花のことは、忘れてくれて構いません!」

「たとえ 人喰い花だとしても、開花したら 兵士全員で 解決致します!」

「…… 人喰い花よりも、女王様を 優先したのね、あなた達は……」


  どれだけ、恐ろしいというのだ、ハートの女王様は。

  そんな人に、顔を見せに来い ――― と、舞踏会へのお誘いが来るのだから、自分も けっこう危機的な状況なのかもしれない。


「この花のことを忘れろとは、俺の仕事を 途中で中断しろって、そういう事になるだろ? 俺は、依頼してくれた おばあさんのために、そんな 《いい加減》なことはできないって、さっきから モメてるんだよ」


  …… 確かに、両者の言い分には、それぞれ 《理由》があり、どちらも 《優先》してあげたいところだが。

  このままでは、話は いっこうに平行線を辿ったまま、終らないであろう。

「お願いします、九十九番目のアリス様!」

「願いを 叶えて下さったら、きちんと ドロップも差し上げます!」

「男アリス様を、どうか説得して下さい!」


  兵士の様子からすると、女王が恐ろしいのは本当だろうし、わかっていて 無駄死にはさせたくない。

「とりあえず…… 《こんなこと》くらいで、簡単に ドロップなんか もらえないわ」

「…… アリスちゃーん、また 何を言い出すのかな~?」

「解決の方法は、簡単よ。 だって、この花 もうすぐ 《蕾が開きそう》なのよ?」

「それが、どうした?」


  きょとんとして、こちらを見る 馬場 幸志 ――― 何も通じていないような表情に、脱力したくなる。

「だ・か・ら …… 蕾でいる状態が、ダメなんじゃないの? 開花したら、あっさり 倒せました~ なんて、よくある話じゃないの」

「え? そうか?」

「だって、人喰い花であっても、兵士さん全員で かかれば、倒せる自信があるのよね?」

「はい、それは もちろんです!」

「兵士長が 《ご不在》の今は、城を守っているのは 我々ですから!」

「花ごときには、やられません!」


  そんなに 勇ましいのに、女王様は 別格なのか…… 。

「だったら、あと少しの間、《皆で》 蕾が開くのを待って、開いたら 《協力して》 花を処分する ――― それで いいんじゃないの?」

  そうすれば、女王に頼まずとも、花は どうにかなるのではないだろうか。

  兵士は 死ななくていいし、馬場 幸志も 依頼を 《完遂》できる。


  両者の 望みの中間を取ると、まあ そのあたりが《妥当》だと思うのだが。

「それでは、ダメかしら?」

「そんなっ…… 素晴らしい案です、アリス様!」

「それなら、我々は 死ぬ確率が格段に下がります!」

「さすが、兵士長が お選びになったアリス様だ!」


  …… 褒めてくれるのは 嬉しいが、たいしたことは していない。

  しかも、兵士長と 混ぜて考えてるのは、やめてほしい。

「あなたは、どう?」

「んー …… そうか、そういう考えもあるのか。 よし、じゃあ そうしよう」


  全員が 納得してくれたようなので、今度こそ、叶人は その場を 立ち去ろうとしたのだが―――。



「…… 皆で、協力して解決する ――― そう提案したのは、お前だぞ、芹沢?」

「えっ…… だって、私は……」

「言いだしっぺは、率先して 事に当たるべし――― ってのが、馬場家の 《家訓》だ」

「知らないわよ、そんな 《家訓》なんて!」




  そう叫んだ 叶人の主張は、まったく 取り合われずに。

「どうせなんだから、お前も 付き合え」



  兵士長と ふたりセットで、何故だか 花の開花に付き合うことに、決定されていたのである。

 前回、中途半端なところで 話が終った感じがあったので、急いで 続きを書きました。


 新しく 登場した、年上らしき 男のアリス・馬場 幸志。

 彼も、立派な メンバーになる予定の男ですので、ぜひとも 覚えて頂きたい名前であります。


 そして、次回、さらに 新キャラ登場です。

 水乃としても かなり 《お気に入り》で、ニコル同様 ずっと出したかった 《かわいこちゃん》なので、次回を お楽しみに。

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