38.ブタさん達の 大切なモノ
ブタさん達が、どうして 赤い実に手を出したのか。 彼らを救うには、どうすればいいのか。 主人公 カナトの頭は フル回転しています。
※誤字 修正しました。
「さて、と…… それじゃあ、アリスちゃん」
叶人を 守るようにして ブタさんの前に割り込んだ 兵士長は、にっこり笑顔を向けてきた。
「これから――― 俺に、何をしてほしい?」
さわやかに 人好きのする笑顔…… に見えるのは、表向きだけだろう。
こちらが要求したところで、彼自身の《考え》と合致しなければ、動かないような男だ。
当然、護衛の白ウサギとは違うことを ふまえた上での 《答え》が求められている。
「そうね……」
叶人は、ぐるりと 周囲を見渡した。
長男ブタに襲われていたニコルは、兵士長登場の どさくさに紛れて、いつの間にか 近くまで戻ってきている。
ただの、マントを着ただけの変態では なかったようだ。
無用と言っていた杖を利用して、巨大ナイフやフォークを なんとな~く かわしている――― 実は、意外にも 戦闘に慣れているのかもしれない。
「とりあえず…… 《武器》が邪魔、かな?」
本来なら、叶人のヴァイオリンで、相手の武器など 無効化する予定だった。
できないものは 仕方がないので、ここは 素直に お願いしてみるところだろう。
「――― 了解」
心なしか 弾んだ声で応じて、兵士長は ブタさんへと 剣を構え直した。
重そうな 幅広の大剣を 軽々と扱う様子は、さすが その土地一番の剣士……《エース》だといえる。
「ふむ、では 我も……」
突然、何をとち狂ったのか…… 賢者様が 兵士長の後に続いて前へ出ようとするので、叶人は 慌ててマントの裾を掴んで、引き止めた。
「止めるな、アリス。 ここは、奴の加勢を……」
「今は 兵士長に任せておけばいいの!」
まったく、うっかりと 目を離すと、何をしでかすか予測がつかない男である。
ぴらぴらマントが出ていっても、かえって邪魔になるだけだ。 …… というか、言いたくはないが、目障りだ。
「ニコルには…… こっち!」
ブタさん三人組は、とりあえず 兵士長に任せるとして…… その間に、やる事がある。
兵士長が 作ってくれた焚火には、未だ 炎が残っていた。
さすがに夕方ともなると、チロチロとした 小さなものでしかないが、これくらいあれば、まだ 使える。
「…… 燃やすのか?」
枝ごと切り落とした、大量の 《赤い実》。
人々を 狂わしてきた、原因のひとつ。
大元である 《木》をどうにかしない限り、根本的な解決には ならないだろう。
しかし――― 《視覚的な効果》なら、それだけでも充分果たせるはずだ。
「あぁ、てめぇ!」
「大事な 《食料》が!」
「僕たちのモノなのに!」
三人組が叫んだときには、すでに遅し。
ゴウゴウと音を立てて 炎に包まれていく、赤い実の 《末路》。
こんなものは、いらない――― そう ハッキリと示すことで、この場の《異様な風向き》を変えるつもりだった。
兵士長によって、武器が奪われて。
そのうえ、今まさに 食料が消え失せて。
視覚的に、心理的に、確実に 追い詰められた状態だろう。
――― 形勢、逆転だ。
先程までの 威勢はどこへやら、うってかわって、ブタさんたちは 静かに地面へと座り始めた。
「む…… 何をしている?」
「それは、《降参》したっていう意味でいいのかな~?」
ニコルと 兵士長の言葉に対して、返ってきたのは ひどく疲れた声だった。
「もう…… おしまいだ」
「もう…… どうでもいいさ」
「どうせ僕たちは、敗者のまま 死んでいくんだ」
赤い実が、無いのなら。
ナマの肉が、食べれないのなら。
これ以上 生きていたって、何の楽しみも無い。 価値も無い。
結局は、人生なんて こんなものなのだ。
強い者は 勝ち続け、弱い者は 生を諦めるしかない。
それが、世の理。 世界の ルール。
変えることのできない、不条理な モノ。
「本当に――― そうかしら?」
兵士長の 制止を振り切り、叶人は ブタさんたちの前に 同じように 地面に座り込んだ。
「ちょっと…… アリスちゃん!?」
本気で 話をしたいなら。
近付いて、目線を合わせて、周囲のことなど とりあえず忘れるくらい、相手に集中すること。
――― それが、人と 人とが 《話す》という行為の、基本的な 《マナー》だと教わってきたから、叶人は 迷わず 行動に移した。
「何が…… 違うって言うんだよ」
睨むような表情の 長男ブタ。
「キレイ事を言ったって、騙されないからな」
憎むような視線の 二男ブタ。
「変えられないことは、どう頑張っても 変えられないんだから……」
うつむいて、前を向こうとしない 三男ブタ。
そんな三人組の 《視線》と《思い》をすべて受け止めて、《答え》を ぶつける前に。
あと もう一歩、足りない 《何か》を埋めるために、叶人は 静かに《質問》を始めた。
「初めから 不思議に思っていたのよね。 何で…… そういう武器を 選んだのかって」
「!」
「普通に、剣とか 斧とか 槍とか、武器らしい武器があるはずなのに、何で あなた達三人が、三人揃って ソレを選んだのか……」
答えは、きっと そこにある気がした。
「さっきも 動揺したわよね。 《大事なモノ》っていう言葉に、大きく反応した。 それって、つまりは、《そういうコト》なのよね?」
巨大化しているのは 謎だが、気が狂い始めた状態でも、無意識に手にとってしまうほど、身近で 大事にしていたはずのモノ。
ナイフ、フォーク、アイスピック。
三つの 指し示す答えとは……。
「あなた達――― 《料理人》なんじゃないかしら?」
「!」
…… 顔の表情から見て、今のはアタリだ。
叶人は、凪いだ海のように 静かな笑顔で、さらに ブタさん達に 詰め寄る。
「ねえ、私に 話してみない?」
どうして、赤い実に 手を出したのか。
出してしまうほどの 辛く悲しい 《理由》とは、いったい何なのか。
「話したところで、何の解決にも ならないかもしれない。 でも、もしかしたら 何か《できること》があるかもしれないわよ?」
何といっても、自分は 《アリス》なのだ。
この世界においての、重要な 役割。 様々なことが 免除される、特別な 《地位》。
三人だけでは 解決できなかったことも、新たな人が加われば 状況は 変わるかもしれない。
「何もできない、何も変わらないなんて…… そんなの、《全部の方法》を試してから言いなさいよ。 これは、アリスとしての 《強制》じゃないわ。 たとえ、あなた達に 協力できることがあったとしても、ドロップを要求したりはしないわよ。 だから、安心して」
―――― 安心して、信じてみない?
あとは もう、できるだけ 《目》で訴えてみた。
伝わるか どうかは、運次第といったところだろう。
「そんなこと…… 信じられるはず、ないだろう」
「ドロップを要求しないなんて…… そんなアリス、いるはずがない」
「僕たちを騙そうたって、そうはいかないからな」
もう だめだ、お終いだ、どうでもいい――― そう言っているわりには、ブタさん達の 思考は 《しっかり》としていた。
本当に 諦めてしまった者なら到底 言えないセリフを聞いて、叶人は 嬉しくなる。
望みは――― ある。
それならば、あとは もう少し 押してみるだけ。
「他のアリスのことなんて、私は 知らない。 ただ 私なら、どんなことだって 簡単に諦めることはしないわ。 決められたことでも、定められたことでも、自分が 気に入らなければ、どんなことにだって 盾突いてやる…… それが、私――― 九十九番目のアリスなの」
それが、どんなに 愚かな行為だとしても。
他でもない、自分に ウソをついて生きる方が、よっぽど苦しいと知っているから。
苦しいのは、嫌い。 辛いのも、もちろん 嫌だ。
だから、歯向かう。 納得のいかないことや、理不尽な 現実に対して。
成果は、上げられないとしても……。
「あなた達だって、そうでしょう? どんなにヤケになったって、結局は 《捨てられない》…… だから ナイフやフォークを捨てられなかった。 …… 違う?」
絶望して、諦めて、ただ 食べるだけの 《生き物》になり下がるなら、ナイフやフォークは いらないはずだ。
手放せない。
そんなに簡単に、捨てられない。
どんな状況になったとしても、《大切なモノ》だから。
「あなた達が、それ以上 赤い実に手を出さなかったのも、大切なモノを捨てられなかったから。 最後の最後の ギリギリのところで、踏みとどまっていたから」
一つたべれば、夢心地。
二つ食べれば、言葉を忘れ ――― 確か、兵士長の説明は こうだったはずだ。
それが正しいのなら、ブタさん達は おそらく、赤い実を 一つしか食べていないことになる。
三人 一緒だから、踏みとどまれたのか。
お腹が空いて、食べれば ラクだとわかっていても、それ以上進めなかった、最後の 《理性》。
「…… よく、がんばったわね」
叶人は、長男ブタの 頬に、そっと手を伸ばした。
大きく目を見開いて、こちらを凝視する瞳を 真正面から受け止めて、今度こそ。
「もう、自分達だけで 頑張らなくていいの。 周りを巻き込んで、助けてくれって、手を伸ばしたって いいのよ。 少なくとも、今なら ソレができるわ」
続いて、二男と視線を合わせた。
「どうせ ダメだと諦める前に、もう一度 賭けに出てみない? それでダメなら、今度こそ 本当に、諦めがつくでしょ?」
心の どこかで、《希望》を完全に捨てきれなかったから、今がある。
そして、今があるからこそ、こうして 自分たちは 出会うことができた。
「《偶然》だと思う? ――― 答えは、否よ。 私は 偶然なんて、世の中には ほとんど無いと思ってる。 偶然じゃないなら、じゃあ 何だって?」
一番 離れたところから、横目でうかがう 三男に向かって。
「――――― それはね、《必然》っていうのよ」
「!」
「!」
「!」
大丈夫。
変えられるのは、今しかない。
迷うくらいなら、飛び込んでみればいい。
一人じゃないから。 三人一緒だから。
苦しいのは、嫌い。 辛いのも 嫌だ。 だからこそ。
一歩ずつ、三男ブタが 叶人に近付いてきた。
兵士長は いつでも動けるように 剣の柄を握り直したが、当の本人 叶人は……。
三男に向かって、手を差し出した。
私を 信じるなら、この手をとって。
せっかく縁あって出会ったのだから、一緒に 考えましょう。
怖がらないで。
踏み出すのは、一歩でいい。
一歩 近付いてくれれば、ちゃんと その手を握り返すから。
「…………」
沈黙の中。
ふわりと、三男ブタは 叶人の手に 自らの手を重ねた。
「エル…… お前……」
「まさか……」
動揺する 長男 二男に向かって、エルと呼ばれた三男は、静かに、だが きっぱりとした口調で 答える。
「僕は、このアリスを信じるよ、兄さん」
そして、三男が 決意した数分後、ほどなくして 全員が 叶人の提案に乗ることとなる。
その様子を、巨大キノコの上に乗ったまま、イモムシだけが じっと見つめていた。
説明上手な 二男の話によると、大まかな 話は こうだった。
長男は 《料理人》、二男は 《菓子職人》、三男は 《バーテンダー》だったという。
田舎町に 一つのレストランを開き、昼から夜までは 長男次男が レストランを担当し、深夜になると 三男が交代してバーに変わる…… 日本でも 最近目にする営業形態だ。
家庭的な料理に、とろけるスイーツ、夜はお洒落なバー …… 田舎町では ちょっとした話題のお店に成長し、遠方からも お客さんが来るまでなっていた、矢先に。
嵐のように、その 《生き物》は 現れた。
突然 やってきて、店を壊し、そして 何事もなく去っていく。
恨まれた覚えなんて、一つもない。 心当たりも まったくない。
その後、この世界の 《案内人》が教えてくれたのは、驚愕の事実。
それは、自分たちが 《ブタ》だから――― ただ、それだけ。
ブタだから、《狩られる立場》にある。 だから、襲われた。 君たちには、罪はない…… と。
「そんな、理不尽なことって、あるか!?」
「ブタであるから 襲われるなんて……」
「僕たちだって、好きで ブタに生まれたわけじゃないのに!」
ブタさん達の主張は もっともだと思う。
その、迷惑極まりない 生き物というのは。
「もしかして…… オオカミ、とか?」
「何で、アンタが知ってるんだ?」
何でと聞かれても――― 三匹の子ブタといえば、当然 オオカミが出てくると考えるのは 普通だろう。そうはいっても、元の世界の 《童話》のことを話しても、ねじれた世界の住人には 理解しがたいだろうから、そこは 伏せておくが。
滅茶苦茶に 壊された店をたたんで、三人は 別の町に 新たな店を開いた。
そこでも 店は繁盛し、すっかり オオカミの存在を忘れていたが…… 忘れた頃に、ソレは来た。
「一度や 二度じゃない。 店を壊され、近所からは 迷惑だからと追い出され、各地を転々としてきた。 場所を変えても 変えても、時間が経てば オオカミが来る。 やってきて、俺たちのモノを 壊していく」
理由など、ひとつしかない。 自分たちが ブタであり、相手が オオカミだから。
世界の意志が決めた、この世界の ルールだから。
どちらかが 死なない限り、覆されることのない、永遠の モノ。
「俺たちだって、泣き寝入りばかりしていたわけじゃない。 レストランが儲かって 金はあったから、オオカミを退治してくれるように、人を雇ったりもしたんだ。 それなのに……」
オオカミは、死ななかった。
すべては、世界の意志の、チカラのせい。
「自分たちが 死ぬか、世界が壊れない限り、ずっと ソレは変わらない。 そうわかってしまったら、何だか 虚しくて、悲しくて、だんだん どうでもよくなって……」
そんな時に、この森で。
イモムシと 出会った。
苦しいのは、世界のせいなんだ。
辛いのは、君たちだけではない。
みんな 一緒だよ。
「赤い実を食べれば、何かが 変わるって言われた。 少しでも変わるなら、試してみたいと思った。 それなのに…… 結局は、こうだった」
「それでも、あなた達は 踏みとどまっていた。 この先に進むことを。 それだけは、立派な 《事実》よ」
頑張っている人には、救いがあってほしい。
それくらいの ご褒美があっても いいと思う。
「オオカミを どうにかすれば、状況は 変わるのかしら?」
静観していた 兵士長に、叶人は 尋ねる。
「どうにかするって…… アリスちゃん、今の説明 ちゃんと聞いてた? どちらかが死なない限り、覆せないルールだって……」
「あら、でも ネバーランドだって、変わったのよ?」
「それは……」
迷惑領主と 極悪妖精の ゴールデンコンビも、多くの人の 《思い》には敵わなかったということだ。
どんなものにも、どこかしら 《抜け穴》がある。
良いものにも、悪いものにも。
「教えて、兵士長。 あなたは このハートの国の人なのよね?」
ハートの兵士長というくらいだから、元々は ハートの城勤めをしていたのだろう。
「まあ、ね。 それで、ハートの国の、何が知りたいの?」
さすが、兵士長。 話が早くて 助かる。
どちらかが 死ぬなんて。
そんな 選択肢は、自分には あり得ない。
「悪いことをした人は、必ず 殺されなきゃいけないの?」
「ん~ …… そうとも限らないな。 俺が見つけたなら すぐに殺しちゃうけど。 そうだね…… ハートの国なら―――」
「確か、《裁判》があったと思うが?」
横から、ニコルが割って入った。
会話の どこにでも、首を突っ込んでくる 御仁である。
「裁判て……」
「とっ捕まえた人を、有罪か 無罪か 話しあう、あの裁判だよ。 確かに、昔は けっこう頻繁に行われていたんだけどね」
「最近では すっかり無くなったと聞いていたが…… 理由があるのか?」
西の国出身で、いくら 世界を旅しているとはいえ、けっこう 情報通な賢者様だ。
「…… ウサギさんが、いなくなったから」
叶人は、一瞬 耳を疑った。
「…… は?」
「ウサギさんだよ、白ウサギ。 今は 君の護衛をしている、赤いジャケットの、あのウサギだよ」
そうは言われても、すぐには 思考がついていかなかった。
「ちょっと待って…… ノールが、いなくなったって……。 どういうこと? 白ウサギと 裁判に、何が関係してるの?」
言いながら、叶人は あることに気が付いた。
出会って、六日目。 その間、離れていた時間も あったりする。
そんな中、自分は 白ウサギの 《過去》について、実は ほとんど 知らないということだ。
兵士長は、そんな 叶人の表情から 正確に読み取って、新しい情報をくれる。
「白ウサギは、ハートの国では 《宰相》だったんだ。 ハートの《王様》は、部屋にこもって出てこない、《女王様》は退屈を紛らわす遊びで 忙しい。 国の政務すべてを ウサギさんは担っていたわけ」
「何よ、それ……。 じゃあ、何で アリスの護衛なんかになってるの? 今のお城は どうなってるの?」
あの 狂ったウサギに 政治が務まるのか…… どろどろに溶けた顔を見たあとでは、とても 想像がつかない。
「白ウサギは、淡々と政務をこなしていたよ。 あまりにも 淡々としすぎて、おもしろみがないって、世界の意志に 《罪人》に指定された。 それで、罰として過酷な 《アリスの護衛》に落とされた。 宰相をやっている時は、国で行われる 裁判まで、すべて 白ウサギが取り仕切っていたから、彼がいなくなった今は、裁判は開かれていないね。 お城は、女王様が一人で、玉座に ぽつんとすわってるよ」
にわかには 信じられない 事実発覚だ。
帰ったら、白ウサギの 首を絞めて、詳しいことを聞きださなければ。
「じゃあ…… その裁判が、もし 開かれることになったとしたら……」
「有罪か 無罪かは もちろんのこと、有罪なら それに適した 《罰》を決めるのが 裁判だから。 その結果、殺す以外の 《判決》も できるかもね」
「裁判は…… どうすれば 参加できるの?」
「城に申請すれば、基本的には 誰でも可能だよ。《弁護人》として、被告でも 被害者側でも、両方付くことができる」
この場合、被告は オオカミであり、被害者は ブタさん達だ。
「もし、裁判が開かれるとして、君が 被害者――― ブタ君達の 《弁護》に立候補するなら、俺が 手続きをしてあげてもいいけど」
「…… する! するわ、もちろん!」
そして、誰も 死ななくていい 判決を、勝ちとってみせる。
オオカミを 守るためではなく。
死ななくても、世界のルールは、変えていけるということを、示したいから。
「…… 了解。 後で 城に戻ったら、裁判を開くように 掛け合ってみる。 ブタ君たちも、それでいい?」
それで いいか…… というのは、さんざん 痛めつけられたのに、そんな 《生ヌルイ》結末でいいのか――― という確認だった。
やられた分の、倍返し…… それこそ、命をもって償ってもらうとか、ブタさん達には それが許されるはずだから。
けれど、長男ブタは、首を横に振った。
次男 三男も、同じ目をしている。
「俺たちは、料理人だ。 レストランが やっていければ、それ以上のことは 望まない」
「赤い実に手を出したけど、俺たちは ナマの肉だって、口にしちゃいないんだ」
「え…… だって、昨日は すっごく真っ赤に濡れて……」
明らかに、普通ではないモノを食べました――― そういう 出で立ちであったのに。
「違うよ、アリス。 あれは ポノボ…… 川魚だよ。 僕たちは 魚で食いつないできたんだ。 ただ、昨日、君と出会った時は 本当に空腹が 限界にきていて……」
それで、思わず、人に対して 手を出してしまうところだったという。
「私…… 危なかったのね」
被害者 第一号に、なるところだった。
「話は まとまったか?」
流れていきそうな 会話を戻したのは、ニコルだ。
「つまり、裁判を開く。 そこで、アリスちゃんは、ブタさん達の弁護として参加し…… オオカミさんを、《死》 以外の判決に持っていく。 ここまでは、全員 一致でいいね? そうなると、あとは 一番の問題の、肝心な オオカミの 《捕獲》を どうするかってことになるな。 そもそも、オオカミって、いつも どこからやって来るのか……」
兵士長が 話している最中に、叶人のワンピースを 引っ張る者がいた。
「…… え?」
驚いて、引っ張られた方向を見ると、犯人は 三男ブタだった。
「アリス…… 見て、あそこ……」
かすかに 震えながら、指差した先に視線を向けると……。
何かが、いる。
木々の陰に、のっそりと たたずむ、何かの シルエット。
もしかしなくても。 あれは―――。
「…… 兵士長!」
誰よりも先に、叶人は 叫んでいた。
「速攻で…… 《捕獲》よ!」
赤ずきんと 幼馴染のオオカミさん…… リーヤとは、まったくの 別人の。
もっと大きく、大人の 《オオカミ》が 姿を現したのだ。
お待たせしました、今回 けっこう書くのが手間取りました。
だいたいの 話の流れはできているのに、文章が全然思い浮かばない時があります。 いったん書き始めると 止まらないんですけどね。
ブタさん達の過去にプラスして、白ウサギの情報も入れておきました。
今後の展開に どこかで関係してくるので、覚えておいて頂けたらと思います。
さて、次回は。 オオカミさんが捕獲されて、ブタさん達の問題も 光が見えてきたところで、残っているのは イモムシさんだけですね。
課題クリアのための、最後の戦いを予定しております。…… お楽しみに。




