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九十九番目のアリス  作者: 水乃琥珀
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13.何のために

 主人公・カナトの性格が、よく表れている場面になっています。 …… 主人公なので、嫌わないであげて下さい。

  ドガァァァンと、海賊船から 大きな音が上がった。

  大砲を ぶっ放しやがったな、と思いきや…… 空気砲のようなので、叶人は ほっと胸をなで下ろしたのだが。

「戦争だぁぁぁぁ!」

  雄たけびとともに、船から 続々と海賊たちがやって来るのを見て、しまったと 思う。


「ノール!」

  自分を守ろうと、ピーターの前に 立ちはだかった背中に向かって、慌てて 声をかけた。

「海賊の船長と、話は できる?」


  陸に攻めてきた 海賊の対応は、インディアンたちが担当していた。

  ピーターの子分たちは、まだ 海へは到着していない。

  ざっと見たところ、海賊 百二十人超に対して、インディアンは せいぜい六十人。 人数は 半分だ。

  今のうちに、戦いを やめさせなければ…… 被害が 大きいのは、インディアン側である。

  海賊も インディアンも、どちらも 味方に引き入れたい 叶人は、まず先に、《船長の同意》が必要だと 考えていた。

「はい、カナト。 すぐに 連れていきますね」

  従順な ウサギさんは、振り返って にっこりと笑った。

  空気砲のおかげで、ピーターパンの 意識が、叶人たちから それている。

  その隙に 白ウサギは、叶人を拘束していた 縄を切り、お姫様抱っこして、その場から 大きく跳躍した。

  …… とても、人間業ではない。 動物でもない。

  この世界の ウサギ族の《足》には、《特製のバネ》でも 内臓されているのだろうか。

  空を飛ぶ ピーターも 普通ではないが――― 異常な 《跳躍力》を持つ ウサギも、それに匹敵するほど 普通ではない。

  まあ、そもそも サウギ男なんて、常識で考えては いけないのだろう。

  叶人は、深くは考えないことに 決めた。 考えている時間が 勿体ない。



  白ウサギに 抱っこされたまま、叶人は 海賊船の甲板に到着した。

  待っていたのは、ピーターに反抗する勢力のリーダー、《フック船長》で 間違えない。

「初めまして、船長さん」

  白ウサギの腕から 下ろしてもらった叶人は、注意深く…… けれど、精一杯 愛想よく、男に挨拶をした。

  子供の姿のままだから、かなり見上げる 姿勢になってしまう。 叶人と同時に カクテルを飲んだ 白ウサギは、とっくに 元の姿へと戻っているから、不公平だと思う。

  せめて、中身だけは 馬鹿にされないように、背筋をぴんと伸ばして 正面に立った。

「…… アンタが、九十九番目の アリスか?」

  対する 船長は、叶人のことを 上から下まで 眺めまわした。

  正直、初対面の男に こんなに ジロジロ見られるのは、不快である。

  文句を言う代わりに―――― 叶人は、自分も 船長のことを 凝視してやった。


  少し波打つ 黒い髪に、マリンブルーの瞳、男らしい 鼻筋と、魅力的な 唇。

  そこそこ高い 身長と、健康的に 日焼けした肌、引き締まった 筋肉。

  …… 顔にしても スタイルにしても、これは なかなかの《色男》ではないか。

  《美人》な 白ウサギとは タイプが異なるが、船長も 負けてはいなかった。 世の女性たちが キャーキャー言いそうな、色気も備えている。

  表現するならば、《ワイルド系》と いったところか。 着ているシャツの 前を開けて、肌をさらしている姿も サマになっている。 日本人と違って、嫌味が ない。

  気の毒なのは、左の手―――― 原作では有名な、《カギの手》になっていることだ。

  ピーターに 斬られた後、ペットの《時計ワニ》の エサにされたというから…… ピーターを恨んでいても、不思議ではない。 むしろ、恨んで当然だ。


  しかし、叶人は あえて、手のことは 無視した。

  船長の 堂々とした態度を見る限り、自分の《欠点》だと思ってはいないように、見える。

  逆に、こちらが 気を遣っては、彼の自尊心を 傷つける可能性も出てくる。 怒らせたら、元も子もない。

「私と 手を組んで、ピーターの《捕獲》を 手伝ってほしいの」

  船長の瞳を、真っ直ぐに見つめた。

  殺意が あろうと なかろうと、自分は《捕獲》を目指すのだ、と 示したかったのだ。


「白ウサギから、話は聞いたかもしれないけど…… 私は、インディアンも説得して、ピーターを《孤立》させるつもりよ」

「俺たちが 海賊だって、わかって言ってるのか、お嬢さん? 殺し合いはするが、捕獲なんて カワイイ真似、荒くれ者が やると思うのか?」

  ニヤニヤとした表情に、やはり 子供だと思って 馬鹿にされているな…… と、確信した。

  ―――― 上等じゃない。

  ギアチェンジした 叶人の表情が、一瞬にして 変わる。


「…… 最初から 本気なら、ここまで戦いが 長引いてはいないはずよ。 あなたは 心のどこかで、ピーターの命を奪うことを、ためらっていた…… 理由は、わからないけど。 ピーターの存在を消すことで、もしかしたら この地に 《何か悪いこと》が起きるとか…… そういう、《不安》があるんじゃない? だから、酋長シャディスだって、今まで 殺さなかった。 私は この地について 詳しくないけど、《殺す》ことだけが、民衆の《解放》にはならないでしょ? 戦力を削いで、捕獲して、領主の地位を 《返上》させることなら、やっても許されるんじゃないの?」

  タイガーリリーと 話した時にも感じたが、この地の 人々は、一歩を踏み出す 《キッカケ》を待っているような気がしていたのだ。

「私は 部外者でしかないけど、さっきまで この戦いの 《人質》として捕まっていたんだから、少しくらい 口を出したっていいと思うのよね。 はたから見たら、《くだらない戦い》よ。 そんなもので 怪我を負ったりするの、バカばかしいと思わない? この際、いい機会だから、今日で お終いにしたら、どう?」

「…… この地の 解放、ねぇ。 そんな事をして、アンタに 何の徳があるっていうんだ?」


  船長は 意地の悪い 皮肉った表情をしたが、気にはならなかった。

  同じ立場なら、自分も真っ先に 《それ》を尋ねるだろうと思う。

  続きを話そうと 口を開きかけたところに、ピーターの 怒声が 割り込んできた。

「僕を バカにした アリスなんか…… 海賊と一緒に ワニの餌にしてやる!」

「そんなこと、させません!」

  いち早く 反応したのは、護衛である 白ウサギ。

  甲板 めがけて飛んできた ピーターに、短剣で 応じた。

  …… 時間が、ない。

  叶人は、一歩下がった船長の 前に立ち、さらに 一段階、ギアを上げた。


「何のためにと、聞いたわね? そんなの 決まってるわ」

  船の下、海岸で戦う すべての人にも聞こえるように、叶人は ありったけの大声で、叫ぶ。

  おそらく、この《ひと言》が―――― 運命の 別れ道。


「ピーターが、気に入らないからよ!」


「な…… 何だって?」

  意外な 理由に、さすがの船長も 口を あんぐりと開けた。

  確かに、ものすごく理不尽で、勝手な 言い分なのは 承知している。

  『素敵です、カナト……』と、うっとりしているのは 白ウサギだけだ。 ヤツの感覚は ずれているのだから、聞き流すしかない。


「そりゃあ、《まともな理由》なら、もっと他に いっぱいあるわ。 人々を苦しめている事とか、妖精ベルの 粉の問題だとか、子供たちが 戦いに身を投じている現状とか…… おかしな事ばかりで、理由なんか挙げたら、きりがないけど」

  自分の 心にある、根本的な、一番の 理由といえば。

「私は《正義の味方》じゃない。 お人好しでもないし、聖人君子のように 清らかな心の持ち主でもない」

  いくら、キレイな言葉を並べても、それは内側から にじみ出てしまうもの。 取り繕ったって、《本性》だけは、隠し通せない。

  ―――― だから、隠さなければ いいのだ。 最初から カッコつけないで、ありのままに 行動すればいい。

  目の前の誰かに 信じてほしければ、《ありのままの自分》を さらけ出すしか、方法はないのだ。

「…… 私は、ピーターパンが、気に入らないの。 だって、そうでしょう? 真剣に 遊んでま~す、なんて…… ふざけんじゃないわ。 領主だから、誰もが 従う? 何をしても 許される? 寝言は 寝てから言いなさいっての。 そうやって、自分勝手に《自由人デス》とか 気取っているヤツが、私は 大嫌いなの! 手っ取り早く言えば、単純に ムカついてんのよ!」

  さんざん 悪さをしておきながら、ゲラゲラと 笑って見ている連中なんて、人として 虫唾が走る。

  船長に、というよりも…… そばで 白ウサギ相手に戦っている、ピーター《本人》に向かって、言ったつもりだった。

  火を噴く勢いで まくしたてる叶人に、さすがの ピーターも、一瞬 たじろぐ。

「とっ捕まえて、縄で グルグル巻きにして、お尻 ペンペンしてやんなきゃ 気が済まないわ! 世の中 舐めきっている《クソガキ》どもに、それくらいやったって バチは当たらないでしょう?」

「―――― 縄で グルグル巻き…… カナトは、そういうのが 好きなんですか?」

  何を 想像したのだ、白ウサギ。 《緊縛》趣味は、私には無い。

  いいから、目の前のピーターに 集中してくれ…… 話が ややこしくなるから。


  白ウサギを睨んだ 叶人。

  無言になった 船長。

  他の海賊と インディアンは、叶人の発言に 驚いて、海岸で 固まっていた。

  おそらく、船長の 次の《ひとこと》を、待っているのだろう。

  イエスか、ノーか。 答えによって、それぞれの 進路が決まる。


  何十分も、待たされたような気がしたが、実際は ほんの数秒 経っただけなのだろう。

「ぶぶっ……………… あははははははは!」  

  厳しい顔は、どこへやら――― 船長は突然、腹をかかえて、豪快に笑いだした。

  真剣に 答えたつもりだが、やはり 通用しなかったと いうことか…… 交渉の失敗を悟り、唇を 噛みしめたが。

  船長は、先程までとは違う 《晴れやかな笑顔》を、こちらに向けてきたではないか。

「悪い悪い…… まさか、そうくるとは。 予想外の《攻撃》だったぜ、アリス」

  値踏みするような 意地の悪い顔も、どこかに消えていた。

  ―――― これは…… もしかして。

  期待に、今度こそ 胸がドキドキしていた。

「あの 白ウサギが、絶賛するわけだ。 アンタの―――― 飾らない、バカ正直なところが 気に入ったぜ。 ピーター相手に、ただ 気に入らないだけ、とか…… お尻 ペンペンとか…… アンタ、すげぇな。 もっと理屈っぽくて、《キレイごと》ばっかり言いやがったら、海に捨ててやろうかと 思ってたんだがな」

  ―――― 危なかったぁぁぁ…… 危機一髪、だったようだ。

  正直に 打ち明けていなければ、今頃 海の藻屑とは。


  船長は、腰に納めていた 湾曲した剣を引き抜いて、青い空に 高々とつきあげた。

「海賊の船長、フックが 宣言する! これより、《九十九番目のアリス》は、俺たちの《家族》になった! いいか、お前たち! 我らが 家族の一員…… この 《小さなアリス》ために、一肌 脱ごうじゃねぇか!」


「うぉぉぉぉぉぉ!」

「了解しましたぁぁぁ!」

「てめぇら、アリス様を お助けするぞぉぉぉ!」

「お頭の 指示に従えぇぇぇ!」

「男を 見せろぉぉぉぉ!」

  百二十人超の 海賊たちが、船長の宣言を受けて 一斉に叫び出す。

  海岸沿いは、男たちの 雄たけびで 溢れかえっていた。

  ―――― 暑苦しいな………… とは、間違っても口に出してはいけない。



  呆けている 場合ではなかった。

  さあ、次は タイガーリリーの番。

「くそ…… 何だっていうんだ。 僕が…… 僕が 何をしたって言うんだよ!」

  ピーターは、ますます怒りまくって、短剣を 振り回していた。

「…… 《支援》と…… 《防御》……」

  瞬時に 武器を召喚し、白ウサギに有利な、加速と 防御の音を 送る。

  タリッタタラ トュルラリララ ティラルルラリラ~  

  ヴァイオリンは 大人用の大きさのままだったが…… 何とか、弾けた。 きっと、もうすぐ大人に 戻れるはずなのだ。 我慢して 乗り切るしかない。

「ああ…… カナト、僕のために、こんな素晴らしい チカラを……」

「いいから、目の前に 集中しなさい」

  デレデレに 顔を崩しそうだったので、即座に 釘をさしておく。 まったく、違う意味で、油断も隙もない。


「船長! 協力してくれるのは 嬉しいけど、ピーターのことは…………」

「―――― わかってる、《生け捕り》にしたいんだろ? まかせときな!」

  一発で 話が通じたことに、感動した。 白ウサギが 相手だと、こうはいかない。

「よかった…… じゃあ、あとは―――― インディアンの 攻略ね」

  案の定、カギの手には 触れなかった。 触れてはいけない 話題なのかもしれない。


  ピーターと ティンカーベルに、《妨害》としての 曲を弾きながら、再び 大声で叫ぶ。

「タイガーリリー、次は あなたが決断する番よ!」

  いくら しっかりしているとはいえ、十五歳の少女。 おさげ髪の インディアン娘は、武器を持ったまま、動けないでいた。

  だから、叶人は 攻め立てる――― 彼女の、心の《ど真ん中》を狙って。

「酋長代理だとか、民のため…… だとか、そんな事は 一切忘れなさい! あなた自身、本当は どうしたいの?」

  役目とか 責任とか、《大事なこと》に捕らわれ過ぎて、身動きできないでいる、幼いリーダー。


「何度も 考えたんでしょ? でも、できなかった。 みんなが 大切だから。 …… でもね、今 事態は 動いてる。 この地は 変わろうとしている。 あなたの《言葉》を―――― 本当は、皆 ずっと待っているのよ!」



  ―――― お願いだから、勇気を 出して。

  叶人は ヴァイオリンを弾きながら、祈る様な 気持ちで、少女の 返答を待った。

 カナトの性格には、賛否両論 あるかと思いますが。

 もちろん、私は 大好きです。 好きだから、話を続けられる。


 できれば 嫌わないで欲しいな~ …… と、祈るばかりです。

 次回、ピーターの捕獲まで、いけるといいな。

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