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夕焼けとは慈悲と狂気

作者: のばら

死ネタです。





いつも思っていたが、人というのは根拠もなく無意識のうちに日々は不変に続くと思い込んでいるような気がする。

交通事故が起きようと、例えばニュースで銀行強盗に巻き込まれた人が死亡したと報道されようと、その事を悲痛に思えど、どことなく自分の人生は何事もなく終わってしまうのだろうと思っていて、漠然と遠い世界の事のように感じるのだろうと思う。


『まさか自分が』


そんなことを無意識のうちに考えているのかもしれない。

私だってそうだった。ありえないなんてことはありえない。そう思っていたハズでも、自分でも気付かないような心の奥底では何事もない平坦な不変の人生を送るのだと確固たる考えがあったのかもしれない。


その日は、暑くもない、かと言って寒くもない、風が少し涼しく感じるような季節の、ある日、だった。休みで、インドアの私が久しぶりに遠出をした日だった。行く気さえ起これば、自転車で行く事の出来る映画館。映画を見終われば、少しだけ店を冷やかしに行って、帰宅しようと自転車に跨がった。


キチンと車道の左を通り、交通法違反なんてひとつもしなかった。田んぼの傍に通った車道。数分しかそこは通らないが、遠い地表に半分を埋めた太陽が、その周りの空も酷く綺麗で、いつもよりもゆっくりと進んだ。

空気が澄んだその日の夕焼けは、ひどく美しく、うっそりと目を細めた。思えばそれが悪かったんだろう。そして向こうも悪かった。そしてきっと、両方とも運が悪かったのだ。




私は猛スピードの車に跳ねられた。



気付いた時にはアスファルトの上。

田んぼの上に落ちなくて良かったと、場違いなことを考えた。ごぽり、血が喉をせり上がった。

ぷつりと神経が切れたかのように四肢は動かない。なにも感じない。聞こえない。黒に浸食されて行く目はただ、あの綺麗な夕焼けを写していた。ちりちりと、瞳が夕焼けの紅とも黄色ともつかない、いや、もしかしたら白かもしれない光に焼かれているような錯覚を覚えた。

私の体は夕焼けの紅と、自身の赤黒い液体に染まっているのだろう。きっと周りのアスファルトもそうだ。もうろうと、考えた。でも、ああ。きっと助からない。ただただビー玉のように私の瞳は夕焼けを写した。引き込まれるような、気がした。

あぁ、夕焼けが、わらった。


私がサイゴに見たのは、泣きたくなる程美しい、紅だった。




夕焼けよ、どうかその光で私の目を焼き尽くしておくれ。




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