美しき思い出(?)
空が白い涙を流している、真冬の日のことだった。
「あ、あの…!」
「?」
「ぼく、となりに住んでるんだけど…えっと、同じ年ぐらい…かな?」
「…?」
「あ、えっと…な、何年生?」
「…四年」
「やっぱり、一緒だ。ぼくも四年…明日から学校、来る?」
「ん…」
「じゃあ、その…もしよかったら…一緒に学校、行こう?」
「…うん」
「やった―――あ、それじゃ、また明日!」
「ん…」
「おはよう!」
「…おはよ」
「……」
「……」
「…あ、あの…名前―――ぼくは、リョウ」
「アキラ…」
「よろしく、アキラ!」
「ん…」
「前の学校、どんなだった?」
「…普通」
「は、早く新しいトコに慣れるといいね」
「ん…」
「わからないコトがあったら、聞いてよ」
「ん…」
「ぼ、ぼく…アキラの助けになるから!」
「ん…」
「―――…」
「……」
「なんか、あんま喋んないよな。あの転校生」
「だな」
「おもしろくねー」
「でも、キレーだよな」
「ああ、ソレ。人形みてー」
「言えてる。触ったら、簡単に壊れそー」
「あれこそオンナだよなぁ」
「聞こえてるよ、男子!」
「オンナじゃなくて、悪かったね」
「こえー」
「もっとさ、かわいく…」
「今はオンナが強い時代だよ」
「男子は黙ってなさい。ねぇ、アッちゃん」
「………」
「え? 何?」
「何って…?」
「…………」
「えーっ!?」
「なんだ?」
「“アッちゃん”は何て言ったんだよ?」
「クスクス」
「なに笑ってんだよ」
「あはは、ひみつー」
「おい、女子!」
「あはは」
「クスクス」
「なんか…アキラ、人気者だったね」
「……」
「前もそうだった?」
「さぁ…」
「そう…」
「………」
「…女子たちと楽しそうだったね」
「…そう?」
「なに、話してたの?」
「…真実を」
「?」
「……」
「あー…思ったけど、アキラって男みたいな名前だね」
「…まぁ、ね」
「で、でも、似合ってるよ」
「…それは、そうでないと困るよ」
「?」
「女みたいってバカにされるのは、あまりいいものじゃないし…」
「ふーん?」
「…男なんだから」
「…………オトコ?」
「誤解してるようだけど、僕は男だよ」
「う……え?」
「……」
「で、でも…声、高いし…」
「…わざと高くしていたトコもあるけど、もともと高めなんだ」
「キレイ、だし…」
「…生まれつきだから」
「――――」
「…女、だと思ってた?」
「―――…ごめん」
「別に。いつものことだし…」
「本当に、ごめん…!」
「いいさ。面白かったし…」
「…何が?」
「リョウが」
「?」
「からかいがいがある感じ」
「から…!」
「クセになるかも。リョウで遊ぶの」
「な――!」
「はは」
「ア、アキラ!」
「…バーカ」
最初から、親友は親友だった。